中学三年生編

第二十七霊 ひとりごと

 ついに、ついに。僕は中学三年生になった。目指す進路もだいたい決まってる。そこについての悩みはない。ただ僕には特殊な悩みがある。幽霊を名乗らない幽霊と思わしき人・優希玲子。彼女と一緒にいられるタイムリミットがもう、だいぶ迫ってきてるかもしれないということだ。


 しかし、焦っても仕方ない。

 それに、もうはっきり言ってしまうが、僕にできることは何もないだろうっ。ああ、ついに、ついに。言ってしまった。でも開き直りも大事だよね。


 ただ、可能性はまだ残されている。

 それは、この先まだ何が起こるかあまりよくわかっていないということだ。


 僕はこの先、あくまで無事にいければこの中学を卒業できるだろう。それはいい。


 問題は理科部の廃部とそれに伴う第一理科室の扱い。そして優希玲子自体。これまでと環境が変わってしまうことで、いったいどんな変化が起きるのか。それがわからない。


 仮に今後、第一理科室が物置部屋や、他の部活動の部室になったとしよう。


 それでも優希玲子が変わらずあの場所にいられるならまだいいかもしれない。


 しかしその場合、違う問題が発生する。僕が卒業後、優希玲子に会いに行きにくくなる。いくら理解者の先生もいるとはいえ、元理科部がたとえば囲碁部の部室に現れることとなったり、物置部屋に現れたりするのはおかしいだろう。それに先生がいつまでこの学校に勤務するかもわからない。


 だからといって、理科部や第一理科室の存続を訴えるのは難しい。これは青春映画ではない。


「ここには僕と一緒にいた幽霊がいます!」なんて大勢の前で吠えてみろ。


 卒業もできなくなるかもしれない。優希玲子を信じてくれる先生や父は、ふつうに考えたらおかしいんだ。


 じゃあ僕には何もできないとしても、一番最悪なのは、ただ優希玲子が消えてしまうこと。いや、幽霊なんだから消えることって本来悪いことじゃないのかもしれないけど。


 単純に僕が嫌だ。僕が一緒に過ごした優希玲子は、生前の人物とは関係あるようで関係ない。今の優希玲子と過ごした。彼女にとって、何が幸せなのかとかはわからないけど、より良い結末があったらいいと思う。でも、何か寂しくなるのは嫌だな。


 本当に優希玲子自身が何か知っていてくれたらいいんだが。過去のことは覚えてないし、そのくせたまに気持ちのいい持論を展開したりするし。本当、そういうところが良い。そういうところが良いよ。だからまた会いに行く。三年生になっても、変わらず優希玲子に会いに行く。

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