第3話②「秘めし力」
暗い意識のまどろみから、瞼を持ち上げる。
意識を取り戻したハジメの目に真っ先に飛び込んで来たのは、コンクリートの天井であった。装飾もなにもない、質素な灰色の壁を見て、ハジメは数秒間沈黙し、考える。自分が直前まで何をしていたかを思い出すには、それだけの時間を要した。やがて、自分が意識を失う前と今とでいる場所が違うことに気づくと、彼は疑念を覚える。自分はどうしてここにいるのか、もっともな疑問だ。
次に彼が気づいたのは全身から走る痛みであった。クローズとの戦いの記憶を思い出させる全身からの痛苦に、彼は苦痛の呻きを噛み殺す。未だひりひりとする痛みは、これまでよく眠っていられたと思う程に激しいものであった。
激痛に苛まれる中、彼は身を起そうとする。状況を整理するためだ。ハジメは奥歯を食いしばり痛みをこらえながら、辺りの景色を目視するために上体を挙げようとした。
「あ、こら! まだ動いちゃ駄目よ!」
声が横から響いたのはその時だ。
その声に内心ぎょっとしつつ、彼はそれをおくびにも出さずに振り向く。
彼の視界に、やがてこちらへ歩み寄ってくる少女の姿を捉えた。その姿を見て、ハジメは疑問を深める。見覚えのあるその少女だったが、どうしてここにいるのか分からなかったためだ。
「まだ治療をし終えたばっかりなんだから、無闇に動いちゃ駄目。ほら、しばらく横になってなさいって」
「……どうしてお前がここにいる?」
無理やりに自分を寝かせようとする少女・利理に、ハジメは疑問を漏らしながら辺りを見る。しばらくして彼は気がつく。ここは見覚えのまったくない場所ではない。ここは、この街に滞在中にハジメが隠れ家として使用している廃屋の中であった。
場所の疑問が解ける中で、ハジメには二つの疑問が浮かぶ。一つは意識を失ったはずの自分がどうやってここに辿りつけたか。もう一つは、何故ここに利理がいるのかだ。
そんな二つの疑問を思い浮かべるハジメに対し、利理はその問いに対して目を瞬かせる。不思議そうではなく、納得した様子だった。
「あ、やっぱり意識はなかったんだ。じゃあ覚えてなくても仕方がないか」
「何の話だ?」
「貴方、倒れた後に私がどこへ連れ込めばいいか分からなかったから、どうすればいいって聞いたのよ。そしたら貴方、やつれた声で私をここまで案内したのよ」
その言葉に、ハジメは眉根を寄せる。
「俺が?」
「えぇ。その様子だと、全く覚えていないようね」
「……身に覚えがまるでない」
利理に言われた内容に、ハジメは記憶を探る。だが、一向にして利理が言うような記憶は思い出されない。一瞬、彼女が自分に嘘をついているのではと疑うが、そんなことをして彼女になんの得があるとも思えない。事実なのだろう。
おそらくは、ハジメの本能が自分自身を助けようと働いたのだろう。朦朧と意識を失う中で、この場までハジメは彼女を案内したのだ。
そこまで悟ったところで、ハジメは舌を打つ。味方でもない人間を隠れ家まで案内したあさましい自分の本能に軽く苛つきながら、その行動を内心叱責する。それは彼にとっては失態と言ってもよく、普段では決して見せてはいけない隙であった。
そんな自責の念にかられる中で、ふと彼は、自分の腕に包帯が巻かれている事に気がついた。よく見ると腕だけではない。包帯は全身に巻かれ、整然と火傷の傷を覆っていた。
その事に不審を覚えたハジメは、しかしすぐにそれが誰の手によるものか、どういう意図によるものか気がついて顔を上げる。
「これは、お前がやってくれたのか?」
「えぇそうよ。とはいえ、すでに肌の表面の傷はほとんど治したけどね。あとは治した、肌の裏側に残る軽い損傷が引けば完治といったところかしら」
腰に手を当てながら、利理は自慢げに言う。その言葉を信じるならば、ハジメの傷は痛みこそまだ残っているが、外面上はほとんど治っているということになる。そのことに、ハジメは目を瞬かせる。
「まさかお前、治療魔術を使えるのか?」
「うん、まぁね。ちょっとした家庭の事情で、傷を治したり治させたりするのは昔から得意なの」
「意外だな。がさつそうだから、こういう繊細な魔術は苦手だと思っていた」
「……ぶっ飛ばすわよ?」
さりげない本音に、素早く利理は反応して目くじらを立てる。怪我人相手に本気ではないだろうが、目だけはマジだった。
治癒魔術というのは、文字通り傷や怪我を治したりする魔術であるが、扱いに難しい細やかな魔術として知られている。万能なわけではないが大抵の傷なら治してしまうそれは、戦場や病院などで重宝される半面、使い手が少ないことなどでも有名なのである。
ハジメ自身、そのような使い手に会うのは初めての経験であった。包帯の隙間から、傷が治っているのも確認した彼は、あまり表情には出さないが感心すると同時に、不意に目を細めて彼女を見上げる。
「一つ訊く。何故俺を助けた?」
「何故って……そりゃあ目の前で死にかけている人間を見て放っておけるわけないじゃない」
ハジメからの疑念に、利理は不思議そうな顔をして答える。その言葉にハジメが更に目を細めると、利理は肩を竦めた。
「まぁ、なんとなく貴方が言いたいことは想像つくけどね。俺を助けて何の得があるとか、どんな下心があってのものだとか――気になるのはそんなところでしょう? 言っておくけど、別に深い理由なんてないから」
「………………」
「そんな、信じられないっていうような目で見ないでよ。本当に理由はないわよ。ただそうね、一つだけ無理やり理由づけるなら、私、目の前で傷ついて死んでいく人を見るのが嫌いなの」
そう言うと、彼女は目を伏せる。口元にはつい先ほどまで微笑が浮かんでいたのだが、そこに翳りが生じる。明るいとはいえない、率直にいえば暗い表情だ。
「そうやって、死んでいってしまった人を何人も知っているから。助ける術を持っていながら、それを行使しないで死なせてしまうと悔いが残るから。どう。これで納得?」
「……分からないな。その感覚は」
利理の語る言葉に、ハジメは素直な感想を述べる。平坦な声で、そこには感情が乗っていない。
「それに、俺はお前の敵かもしれないんだぞ? 同じあの、デスゲームに参加させられている身だ。見捨てたとしても誰も咎めたりしないだろ」
「咎めるわよ。私自身が、ね」
腰に当てていた腕を汲み、利理は答える。その言葉にハジメが眉根を寄せる中で、彼女は猶も言った。
「さっきも言ったけど、助けられる人間を助けないっていうのが嫌なの。それに、うん、なんというかね……」
そう言うと、少し目を逸らして迷うように言葉を探る。やがて、ハジメが視線を送っていると、それに耐えかねたように、意を決して口を開く。
「貴方とは、少し話がしてみたいと思ってね。いろいろ訊きたいことがあるから」
そう言うと、彼女はハジメから完全に視線を逸らす。そして、斜め後ろの方へと目をやった。その視線の行く先に、ハジメは疑問を覚えてそちらを見る。そこにあったのは、ハジメがこの街に来る際にいろいろと詰め込んで来たトラベルケースだ。
よく見ると開けられているそれを不審に思いながら、ハジメが利理を見上げ直すと、彼女はそれを差しながら言う。
「ところで、ここにある非常食、食べていい? 私、朝から何も食べてなくて……」
「……別に構わない。好きなのを食え」
彼女の申し出に、やや呆れながら答えると、それを聞いて利理は「やった!」とこぼしてそれに歩み寄る。そして中のものを取り出す。中から出てきたのは、カップ麺だ。
「貴方も何か食べる? 元々貴方のものだし、これくらいなら私でも調理できそうだけど」
「……傷が痛くて物を食う状態じゃない」
「あらそう。じゃあ、私だけ頂くわ。悪いわね」
そう言うと、彼女は明るく言って洗面台へと向かう。そして、何の疑問も持たず彼女は水道の蛇口を開き、何の疑問も持たずコンロの火をつけてお湯を沸かし始める。
つい最近まで別の人間が使っていたためガスも水も通ったままであるというのが答えなのだが、彼女は何故それらが通っているのかを疑問に思う様子はなく、そそくさと調理を開始した。余程腹が減っていると見える。
「~♪」
機嫌が好さそうに鼻歌さえ歌い出す彼女に、ハジメは最初無視を決め込んだが、一分ほどしてから耐えられず、疑問を呈す。
「……何でそんなに楽しそうなんだ?」
「ん? こういうこと、慣れているから」
本人は独白のつもりだったのだが、その声に答えが返ってきた。その言葉に、ハジメは疑問に目を細めつつ振り向いた。
「慣れている?」
「えぇ。私ね、今はお兄さんが一人いてね。でも、お兄さんはちょっとした事情で寝たきりでね。時々その介護をしているの。それがいつも楽しくって」
「何故、楽しいんだ?」
「だって、家族だから。お兄さん、優しいし私が世話するといつも喜んでくれるの。だから、私も嬉しくって、つい世話を焼いてしまうのよー」
間延びするようにこたえながら、彼女ははにかむように笑う。言葉に裏がないのか、そう語る彼女は本当に楽しそうだ
「貴方はどうなの? 家族はいる?」
「……父がいる。義理だがな」
ぶっきらぼうにではないがどこか憮然とした様子にも見える声で、ハジメは答える。そして答えてから彼は疑問に思う。何故自分は素直に答えているのだろうか、と。別に嘘をついてやりすごせばいいのに、何故か真面目に答えている。それはどうしてなのか、彼はしばらく考えを巡らした。
(義理、か。あまり踏み込んだことは聞いちゃいけなさそうね……)
ハジメが思考する一方、利理はその言葉から考える。考えていないようで、彼女も彼女なりに考えを巡らせていた。
そもそも、暗殺組織に籍を置いている時点で、何か特殊な家庭環境でもあったのだろうとは容易に想像がつく。それが凄惨なものか悲惨な物かは分からないが、それについて深く聞くのは失礼だろう。
だが、そのそもそもが彼女は気にかかった。
「ねぇ。どうして、暗殺組織なんてところにいるの?」
気になって、本来は自重すべきところではあったが声に出して訊ねる。まともな返答が返ってくる事はあまり期待していない。現に、それに対する反応はしばらく沈黙だった。
「小さい頃から、そういう環境で育ったからだ」
そう返事が返ってきた事はやや驚きだった。利理が目を丸めるのと、お湯が湧いたのはほぼ同時で、彼女はコンロの火を切りながら、彼に対して疑問の舌鋒を向ける。
「育ったって、暗殺組織に育てられたの?」
「そうだ。すべて答えるのは拒むが、生きる術と戦い方の術は、少なくとも組織で鍛えられた」
「霊具召喚術も?」
「あぁ。あれは、裏の世界で生きていくには必要な魔術だからな」
頷き、ハジメは自分の手首に目を落とす。そこには、彼の武器である長剣を納めた数珠が巻かれていた。
霊具召喚術は、数珠やロザリオなどといった小道具に自身の得物を内包させておき、いざとなったらそこから武器を召喚するという変換魔術だ。数珠などはいわば武器を入れる容れ物のようなものであって、自分の意思、霊気や魔力と呼ばれる精神エネルギーを注入することによって自分の想像する最適な武器を取り出す事が出来る。なお、取りだすそれは実物の場合もあるが、多くは使用者の魔力によって具現化されたもの、魔力の結晶で精製されたあることが多い。コピーものといえばいいのか、実際の鉄金属とはまた違うということだ。
この魔術は、現代社会に魔術師が溶け込む上で必須になった魔術であり、武器を持ち歩きやすいという利便性から多くの魔術師が使いこなしている魔術でもある。
それを、ハジメの場合は暗殺組織から学んだのだという。
「そう。でも、魔術界ではそれの使用を許されているのは【魔法学団】の許可を得た組織だけなのよ。それを使うのは違反のはず、その所ちゃんと分かっている?」
「そんなことを言い出したら、うちの組織は存在自体が違反だ。いちいちそんなことを気にしていては商売が出来なくなる。そう言われて、はい分かりましたという暗殺組織がどこにいる?」
利理の注意に対し、ハジメは真っ向からそう言い返す。正論とでも言うべきか、ハジメの意見の論理に、利理は押し黙る。確かに、暗殺組織自体が存在として違反に等しいものであるのに、その魔術の使用だけ認めないというのもおかしな話だ。
少しの間利理は黙りこみ、それから利理は、話を変えるように訊ねる。
「暗殺組織の一員ってことは、貴方も、その、これまで何人も殺してきたの?」
「あぁ。何十人も殺してきた」
即座に、ハジメは首肯する。威嚇しているわけではない。それを誇っているわけでもなく、また省みていることもない。ただただ、それを肯定する意識だけがそこには籠っていた。
「そう……。じゃあ、貴方は立派な犯罪者なんだ……」
「そうなるな。そうじゃない、と反論したところで、どんな名目を掲げたところで、やっているのは『殺し』だ。それ自体をごまかす気はない」
自分が行なっている悪行を、ハジメはあっさりと認める。だがそこには罪悪感を覚えている様子もなかった。その様子から、利理は勝手ながら、何か理由があるのではないかと勘繰った。
探るために、訊ねる。
「人殺しが好き、なの?」
「いいや。俺らの場合、やれと言われたからやっているだけだ。人殺しに快楽を求めている様ないかれた奴はいない。むしろ、そういう奴を斬って生計を立てている」
「……え? どういうこと?」
ハジメの言い方が引っ掛かり、利理は詳しく訊ねる。
その疑問に、ハジメは淀むことなく答えた。
「俺のいる組織は、基本一般人は狙わない。襲うのは大抵同じ穴の狢、犯罪者か裏世界の人物だけだ。そういう奴に限って、依頼を受けて殺している。一緒にされると腹が立つだろうが、やっているのはお前ら咎人狩りと大して変わらない」
ハジメがそう言うと、少しの間利理は固まった。はっきり言って、想像していたのと全く違う。暗殺組織と聞いて、もっと不穏で極悪そうな物を勝手にイメージしていたが、やっていることはなるほど、確かに咎人狩りと大して変わらない。違いがあるとすれば、それが公的であるか民間であるか程度のものかもしれなかった。
しかし、ハジメ本人はそう言って開き直るようなことはしない。彼自身、自分たちの行為が外道だと自覚しているゆえだろう。
「だからといって、正当化するつもりはないが。暗殺は所詮暗殺であって、そこに正義はない」
「その行為が、もしも誰かに賞賛されるようなものだったとしても?」
興味本位で、利理はハジメに訊ねる。何か、その行為には利理も属する咎人狩りと通じる者がある様な気がした。
ハジメは頷く。
「当然だ。人殺しを正義と勘違いするような阿呆どもと一緒にするな」
「……それは暗に、私たち咎人狩りに言っている?」
嫌みではないが、利理は訊ねる。
魔術師の中には、咎人狩りを正義の所業だと信じている者も少なくない。法を犯した魔術師を魔術師が殺すのは正義の行ないだと、本気で盲信している魔術師たちだ。
そんな彼らを批判された気がして、利理は訊いていた。
それに対しては、ハジメは首を振る。
「そんな気はない。あてはまる部分もあるかもしれないが、お前たちを名指ししているつもりは一切ない」
「そう……。でも胆に銘じておくね」
ハジメの意見に、利理は乾いた笑みを浮かべて言う。ハジメからすれば何気ない言葉であったかもしれないが、重い言葉の連続であったように利理は受け取る。
そんな彼女に、ハジメは顔を向ける。
「……俺からも一つ訊ねていいか?」
「なに?」
「お前、何か特殊な体質なのか? 身体を巡る霊気の流れが、普通の人間や魔術師とは違うように視えているのだが……」
珍しく淀みながら尋ねてきたハジメに、利理は驚きから目を見開いていた。正直、彼女はぞっとする。
「どうしてそんなことが分かるの?」
「……俺の眼は特殊でな。そういったものが視えるんだ。で、どうなんだ?」
そう曖昧に言葉を濁すと、ハジメは利理に説明を求める。
眼が特殊……そう言って自分は答えを誤魔化しておいて訊くのは少し卑怯な気もするが、しかしハジメは利理に答えを要求した。
利理は、少しの間答えを渋った。が、それもすぐに笑みによって掻き消される。
「そうね……別にばれてもそう困るものじゃないけど……私、一言でいえば不死身なの」
「不死身?」
「うん。決して死なないわけじゃないんだけど、要するにすごく、傷の治りが早いんだ」
そう言って、彼女は淡く笑った。何故だか、そこには軽い自嘲が混じっている。あまり好ましくないことでもあるかのように、自慢したりはしない。
「大抵の傷や損傷なら、すぐに元通りになる特殊体質でね。理由は分からないけど、生まれた時からそうなの。生まれた一族では、時々見られる特殊な現象なんだって」
「……昨日会った時に、傷がすぐに回復していたのもだからか」
今更ながら、昨晩の利理の怪我の異常な回復の速さにハジメは納得した。昨日や今日、敵から受けた傷がすぐに回復したのも、ホテルのベランダから飛び降りておいてすぐに折れた骨が治ったのも、そういうことだったのである。
「うん。で、この体質は、霊力を介して他人にも影響を及ぼせてね。私が治癒魔術得意なのにも、一役買っているんだ」
「……俺が受けた傷の治りが早いっていうのも、その力のおかげというわけか」
普通であれば、ハジメが受けていた火傷の傷も、数日間生死を彷徨っていたとしてもおかしくない類のものだ。それが数時間で意識を取り戻せたのも、彼女が持つ治癒能力のおかげ、その魔力の恩恵ということらしかった。
「そう。でも貴方、驚かないのね。皆最初は不審がったり気味悪がったりするんだけどね」
「そうだな。俺もこの眼で最初は不気味がられることが多いから。人の事を言えない身だからな」
自分の目を掌で覆いながら、ハジメは言う。その言葉に、利理は首を傾げた。
「普通の眼に見えるけど、違うんだ。何か、魔眼の一種?」
「……詳しくは言えない。語ることは、組織から禁じられている」
「そう。ならいいわ」
少し躊躇ってからハジメが告白すると、利理はそれ以上深く追及しなかった。それが彼を慮ったゆえか、問いただしても答えが返って来ないと諦めたかどうかは不明だ。
ただそういう中で、彼女は手元に置いていたカップ麺の蓋を開いた。そして、その顔に喜色を浮かべる。
「出来た。じゃあ、食べさせてもらうね」
「あぁ」
ハジメが頷くと、彼女はハジメの斜め前まで移動して、そこの壁に背を預ける。そして、トラベルケースから取り出したと思われる割り箸を割って、中身を食べ始めた。
しばらくおいしそうに麺を啜っていた利理であるが、ふと彼女はハジメの視線に気づいて顔を向ける。
そして、コクンと首を傾げた。
「もしかして、食べたい?」
「さっきも言ったが、傷が痛くて食欲なんて出てこない」
「そうだったね」
返答を聞いて、利理は再び美味しそうに麺を食べ始める。
その笑顔が妙に印象的で、ハジメはその笑みを、横目でじっと凝視していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます