第2話⑤「対決・炎の魔人」

「さて。君は私に何の用があったのか訊こう。もっとも、訊いたところで答えぬ内容もあるがね」

「では訊くが、お前もキリング・パーティーの参加者なのか?」


 単刀直入に、ハジメはまず知りたいことを訊ねた。相手が自分の標的か否かを、念のため確認する。


「あぁ、そうだ。その口ぶりだと、君も参加者のようだね」

「そうらしい。お前は、キリング・パーティーについてどこまで知っている?」


 目を細めながら、ハジメは問う。それに対してクローズは相変わらず微笑んだままだ。ただ、その目は全く笑っておらず、向こうもハジメの反応を見落とさぬように目を細めていた。


「どこまで、か。それに対して明確に答えることは難しいな。私とて、キリング・パーティーの全容を知っているわけではない」

「ならば問う。キリング・パーティーの本選へ進むために必要な殺害人数や、遭遇者の人数について、お前は知っているか?」

「あぁ、知っている。進行役の話では、殺害に必要な人数は五人以上、遭遇に必要な人数は十人以上らしいな」


 思いのほかあっさりと、クローズはハジメの問いに具体的に答える。その言葉を聞き、ハジメは目を瞬かせる。


「それは、本当か?」

「あぁ。嘘をついても何の得もあるまい。さらに言えば、参加者の多くは魔術師であり、裏世界に名を馳せた者が多数参加されているそうだ」


 魔術杖を手の中でくるりと回し、クローズは情報を漏らした。

 その話を、ハジメは考えを巡らす。進行役から聞いた、という話からするに、クローズもおそらくあの男性・呂馬という人物と接触しているのだろう。彼は自分とは別の角度から彼に質問し、そのような情報を得ているようだ。


 ハジメが目を伏せてやや考えていると、今度はクローズから声が飛ぶ。


「では私からも聞こう。君も、キリング・パーティーの参加者なのだな?」

「そうだ。お前の話が事実ならば、俺はあと一人殺害すれば、本選出場の第一条件を満たすことになる」

「ほう。つまり既に四人もの参加者を倒しているのか」


 やや感心するような相手の言葉に、ハジメは誇ることなく頷いた。


「もっとも、本選に出場するか否かは決めていないが。本選出場の条件をすべて満たせば、この戦いから棄権することも可能になるだろうしな」

「……そうか。君は、キリング・パーティーにそれほど熱心に参加しているわけではないのだな」


 ハジメの態度に、クローズが目を細める。その言葉に、ハジメは怪訝な印象を覚えつつ、言葉に応じる。


「そうだな。報酬とやらにも興味はないからな。世界の観測者が何なのかよく分からないが、さほど魅力があるようには感じていない」

「その点は、私とは逆だな。私は、あの報酬に実に興味を抱いている」


 相手の回答に対して、クローズはシニカルな笑いを浮かべて言う。聞いてもいないが、話したいことなのか彼は自分から語りだす。

「世界の観測者、そして個人のあらゆる願いを一つだけ叶えるという魔法具――どちらも魅力的なものだ」

「報酬目当てに、お前は参加していると?」


 問うと、それに対してクローズは顎を引く。


「あぁ。世界の観測者については多少聞いたことがあってね。実に魅力的な賞品だ。その話が事実ならば、それになった者はこの世界で最も万能な力を得ることになる。思うがままに、世界を動かすことも可能になるからな」


 そこにどれだけの思い入れがあるのか、クローズはやや熱を帯びた口調で言った。

 世界の観測者――それが具体的にどんなものかをハジメは知らない。しかしクローズの語る所から推測するに、それはこの世界における神に最も近い所業を為せる人間のことのようだ。

 そのような簡単な推測を立てるハジメに、クローズは回していた魔法杖をピタリと止め、ハジメに定める。


「さて。長話もここまでにしよう。このまま君と雑談するのも悪くはないが、そろそろ私もこの気の昂ぶりを抑えたいのでね」

「……俺は、別にお前と争う気はないがな」


 そう言うと、ハジメは下げていた手を横に構える。そしてその手に長剣、自らの得物である紅のエグゼキューショナーズ・ソードを召喚させる。


「お前が情報だけ教えてくれて、争う気がないと言うなら見逃してやってもいいのだが。そちらがやる気である以上、俺も剣を抜かなければならない」

「ほほう。随分と平和主義なのだな」

「そんなんじゃない。ただ俺は、そういう風に組織に命令されて動いているだけだ」


 淡々とした口調で、ハジメは言葉を返す。そこには言葉通り、無駄な私情は籠っていない。


「そして、相手が戦いを挑んでくるようなら倒せとも言われている。お前が争う気なら、それに応じるまでだ」

「ふふん。随分と言い訳臭い理由だな」


 ハジメの口上を聞き、クローズは嗤う。彼は手に持つ魔法杖の先端に炎を灯すと、それを掲げながら目を細める。


「そうは言っておきながら、お前も他人と殺し合うことに快楽を覚えている人種であろう?」

「……違う。そんなことはない。ただ、標的となった相手を生きて逃がす気がないだけだ」


 相手の言葉をやんわりと否定しつつ、ハジメは長剣を構える。


「お前の話ではないが、このまま雑談しても対して意味はなさそうだ。語り合うなら、互いにこれで語り合おう」

「ははっ。そうだな。その方が我ららしい――では、行くぞ」


 戦いの開始は、ゆるりとした会話の中で唐突だった。


 クローズは魔法杖の周りに次々と拳ほどの小さな炎を宿すと、合計で五つ、否六つになったその火の玉を始めに向かって射出する。轟ッと音を鳴らしたそれは、野球の剛速球、テニスのサーブ並みのスピードでひた走り、ハジメに襲い掛かった。直線で向かってくる火の玉を、ハジメは横に飛んで回避、避けた勢いそのまま疾走に入る。床を蹴った彼は一旦クローズから遠ざかりかけ、火の玉が空を切って背後の空間に消えた瞬間と同時に一気にクローズへひた走った。長剣を後ろに引きながら、ハジメはクローズの間合いへと踏み入る。


 そのまま長剣を切り上げようとして、しかしハジメは直前でその動きを止めて後退。直後、クローズのインバネスコートが横手に広がり炎上した。鳥の翼のように広がった紅蓮の炎は、そこから火の粉と共に銃弾のような縦細の炎の欠片を射出させる。銃弾、あるいはミサイルのように発射されたそれは、一手が一直線にハジメへと、もう一手が上空へと迸った。


 真正面から迫った炎の弾幕に、ハジメは後方に着地するとその場に留まり剣を振るう。前方から押し寄せる弾幕を神速の剣捌きで打ち払うと、上空に飛行して行った炎の欠片を一瞥、そして床を蹴る。直後、宙へ飛んでいた炎の欠片たちは九十度方向を転換、クローズへ駆け寄るハジメめがけて降下を開始した。ハジメがそれに気づいた時はもう遅い。炎の欠片たちは隕石の流星群の如くクローズへ詰めようとするハジメに怒涛となって降り注ぐ。空からの爆撃は辺りに風を撒き散らし、ハジメの身体を飲み込んだ。炎の猛威は彼を丸呑みして蹂躙し、そして空を切り裂いた。


 爆風が髪を靡かせる中、クローズはその爆心地に目をやり細める。

 そこから、直後黒い稲妻が飛び出した。

 炎の中から突出したハジメは、黒い煙を引きながらもクローズへ肉迫する。炎の爆撃を掻い潜った彼に、クローズは慌てることなくインバネスコートを広げ、その翼をハジメに叩きつける。左右から迫った炎の両翼に、ハジメはクローズの懐一歩手前で足を止め、旋回。回転と同時に薙ぎ払われた斬撃が、炎の翼を両断した。

 翼が切り裂かれるとクローズはそれに対し瞠目、直後ハジメはクローズの懐へ一足飛びで侵入した。そして、咄嗟に後退するクローズへ肩から突っ込む。


 一閃。


 斜めに振り払われた斬撃を、クローズは紙一重の距離で躱す。丸まった切っ先がスーツを掠める中、クローズは奥歯を食いしばりつつ魔法杖を振るう。直後、その気道上に炎の鞭が薙がれ、ハジメに襲いかかる。

 それをハジメが下に掻い潜ると、クローズは魔法杖を宙高くへ持ち上げる。そして杖の先端から火の玉を招来させると、それをハジメに向けて射出する。勢いよく飛来していく弾丸に、ハジメはその場から円弧を描くように横へ駆ける。炎の弾丸は次々と彼を追うが、それはすべて空を切って突き進み、その背後で爆発して四散していった。


 爆撃を掻い潜ってクローズの横へと回り込んだハジメは、そこから再びクローズへ肉迫。疾風となって突き進んだ彼に、クローズは再びインバネスコートを炎上させ、そこから伸びた炎の翼でハジメを迎撃する。振り返りざま叩きつけられる炎の片翼に、ハジメはそれを斜めに裂断、斬り落とす。翼が斬って落とされたクローズは、ハジメから遠ざかるように後ろへ跳ぼうとするが、それをハジメは逃さない。彼は一気に加速してクローズへ密着すると、横向きの斬撃でクローズの喉元を薙ぎ払った。

 斬撃は、クローズの喉を切り裂き、半ばまでを両断する。断頭一歩手前の傷を負わされ、クローズは刮目、ハジメは会心の手ごたえを覚えた。


 が、直後クローズはニヤリと笑い、口を大きく広げる。そして直後、その口腔から炎を放射した。怪獣映画の怪獣の光線のように吐き出される炎に、致命傷を負わせたと確信していたハジメの反応は遅れる。彼は咄嗟に両腕をクロスして顔面をガードしつつ、炎にその腕を炙られながら後退する。炎はハジメの両腕を炎上させ、コートごしに彼の腕を焦がす。


「――チッ!」


 熱と火を帯びた両腕を、ハジメは後退しながら床に押し付けて鎮火を図る。勢いよく旋回して腕を押し付けたことにより、炎は一瞬で消失した。だが、その際に炎と腕が直接密着し、彼の腕には大きな火傷が生じる。その激痛にハジメは顔を歪め、苦悶しそうになるのを押し殺して立ち上がる。


 一方で、炎を発射したクローズは両腕で頭を挟み支えながら佇んでいた。彼はハジメと目が合うと、火の粉が零れる口をニヤリと笑みに変える。そして同時に、ハジメに斬りつけられた首の切り口を、炎を纏いながら塞いでみせた。致命傷であったはずのそれは、まるで受けたのが幻想であったのかの如く元通りになっていく。


 驚愕のその現象に、ハジメは苦痛を隠して目を細める。真顔でその傷口の再生を見た彼に、クローズは嗤う。


「なかなかのスピードだ。鎌瀬が敗れたのも納得がいく」


 ハジメの戦いぶりにそのような感想を漏らしつつ、クローズは傷口を完全に治癒させる。

 急所を斬ったはずなのに倒れない相手に、ハジメは最初不審の目であったが、その現象を見てすぐに納得の表情を浮かべた。


 クローズは咎人だ。咎人である以上、彼は何らかの魔術の法を破っていることが想定され、その理由が今のような現象を生じさせたと考えたのである。ハジメはすぐに頭を回転させ、その現象の正体を推察した。


「……なるほど。炎使いの魔術師が、自らの身体も炎と同化させているわけか」


 クローズのしているのは、魔術師が自分の肉体を魔術と一体化させているということだ。彼の場合、その身体は既に肉体ではなく、彼の魔術である炎で構成されているということである。

 そのハジメの推理に、クローズは笑みを深める。


「御明察。確かに私は、炎と同化する魔術の使い手だ。この身は人体を解脱し、魔術の炎と化している。ただの剣や銃では、私を倒すことは出来ない」


 ハジメの推測は正解だったようで、クローズはそれを肯定して誇ってみせた。

 つまりは、彼の身体は炎の流体と化していることで、あらゆる物理攻撃を無効化できるということである。剣や銃弾などではその身を裂いたり穿ったりすることは出来ても、明確なダメージを与えることは不可能ということだ。


 本来、魔術師とはいえこのように人間の身体を捨てて自らがその身を魔術とすることは禁忌とされ禁止されている。人間がその身を人間から別の存在へ転じさせるのは人道に反す、という考えからで、人間の領分を越えてその存在を人外に堕ちることは、昔から魔術界でも外道とされているからだ。


 クローズが咎人であるのも、その法を破ったゆえだろう。彼が咎人たる由縁はそこにあり、彼はその強力な肉体を得る反面、人間としての尊厳を捨てた化け物であった。

 そのことをハジメが悟る中で、クローズは嗤う。


「君は見たところ、その剣を使う剣士のようだ。そんな剣戟では私を倒すことは不可能だ」


 勝ち誇るように、クローズは言う。確かに彼の言う通り、ただの剣士ではクローズを倒すことは不可能であるといっても過言ではない。

 だが、


「俺が、何も知らないと思っている様だな」


 ハジメは、相手の無敵な肉体を誇示されたところでも怯むことなく、剣を構え直した。


「そういう魔術との同化は、一見物理攻撃に無敵にみえるが、ただ一点弱点がある。肉体を魔術と同化した場合、その魔術源に核というものを体内に埋め込む必要がある。魔術を発動し続けるためのエンジンのようなものが」


 淡々と語るハジメに、クローズは笑みを消して目を細める。そんな相手の視線を受けながら、ハジメは続ける。


「その核に対しては、物理攻撃は有効――というよりも天敵だ。一度核を攻撃され破壊されれば、魔術の源は消失し、そのまま肉体の消滅にも直結する。お前の身体の中にも、その核という物が存在している。違わないだろう?」

「ほう……よく知っているな。確かに、核を攻撃されれば私もひとたまりもない」


 クローズは、ハジメが自分の犯した禁忌の魔法について知識を持っているのを知ると、隠すことなく肯定する。


「だが、果たして私の核がどこにあるか分かるのかな? 同化魔術の仕組みを理解したところで、攻撃を当てられなければ意味が――」

「お前の場合、核は心臓の部分にあるようだな」


 さらりとハジメが言うと、それを聞いて、クローズは目を見開く。それは、何故その事を知っているのかという、暗に肯定を示す反応であった。

 その反応に対し、ハジメは自分の目を指して言う。


「俺には、魔術の流れを読むことが出来る眼があってな。少し意識を集中させれば、お前の魔力の根源を見抜くことぐらい造作もない」

「なるほど……。その眼力で、私の急所を見抜いたと」


 ハジメの種明かしに、クローズは肩を揺らす。彼は納得したように嗤い、だがその目は一切嗤うことなくハジメを睨みつけていた。

 そこには殺意が包含されており、鬼気が籠っている。


「どうやら、貴様は生かしておけぬ人間のようだ。私の核の位置を見抜いてしまう以上な」

「……どちらにせよ、俺を殺すつもりの癖によく言う」


 クローズの言い分に、ハジメは鼻を鳴らす。剣を構えている彼に、クローズは獰猛な笑みを浮かべる。


「そうだな。何であれ、貴様は殺す必要がある。私の秘密を見抜いてしまったからには。では、ここからは本気で行くとしよう」


 そう言うと、クローズは裂けたインバネスコートから再び翼を広げる。

 そしてそこから、再び二手に炎の欠片を放射した。


 一直線に向かってくる炎の銃弾に対し、宙へ舞い上がる弾道の炎――その総数は、先の倍、否三倍はある。言葉通り本気を出してきた相手に、ハジメはその炎を受ける・避けるといった愚は犯さずに、正面から叩き伏せにかかった。一見無謀に見えるが、前進することこそが、この猛烈な弾幕を避けるにはベストであるからだ。


 ハジメは焼き爛れた腕を酷使し、迫りくる弾丸を剣で打ち落とす。とはいえすべての火の粉を撃墜することは不可能で、その一部は彼の身体を掠めて爆発、僅かながらハジメにダメージを与えていく。一直線に向かってきた弾丸をすべてやり過ごすと、続いてハジメは天井を見上げる。そこからは、宙へ上がっていた火の塊が方向を変え、流星となってハジメめがけて降り注いできた。それに対してハジメは前進、炎の落下予測位置よりもわずかに先、クローズの眼前めがけて駆ける。全速力で疾走するハジメを阻むように、炎の隕石は次々と地面に突き刺さった。それらを受けることなく駆け抜けて躱したハジメは、一気にクローズの目の前まで躍り出る。


 果敢にも攻めかかってきたハジメに、クローズは感嘆の色を浮かべつつも、再び炎の翼を広げてそれを叩きつけて来た。ひた走る翼にハジメは身を旋回、回転斬りでその翼を斬り飛ばす。打ち払った翼が火の粉を飛び散らせる中で、ハジメはクローズと視線を交錯させ、一気に相手の間合いへと踏み込んだ。


 そして振り下ろされる斬撃――銀の軌跡は素早くクローズの左肩から心臓めがけ、両断せんと走らされる。それに対し、クローズは回避ではなく受けに回った。彼は魔法杖を掲げ、その斬撃の軌跡を遮りにかかる。結果、ハジメの斬撃は魔法杖に阻まれて火花を散らし、そのまま鍔迫り合いとなって拮抗した。


 上から押さえつけるハジメの剣に対し、それを下から阻む魔法杖。

 その均衡は数秒続いたが、すぐにそれは破られる。

 突然、クローズの魔法杖は全体が火を宿し、杖を包んで炎の剣を象ったのだ。炎上した杖、もとい火の剣は、ハジメの持つエグゼキューショナーズ・ソードも巻き込んで燃え上がる。それを見て、ハジメは後ろに引くが、伝播した炎は一人でに剣の刃と柄を渡り、そしてハジメの身体を包み込んだ。

 当然それは、優しく彼を包むのではない。業火として、身体を突き刺す猛毒であった。

 全身に着火されたハジメは、その炎を消すべく後退しながら地面を横転、否、転がるというよりのた打ち回る。苦痛の声は漏らさないが、全身を炎が突き刺し、火傷させようと猛威を揮う。人体は、その五割が火傷すれば立派な焼死体と成り果てる。それを知ってか知らずか、ハジメは懸命に、文字通り命懸けで炎を鎮火した。


 やがて、炎は完全に収まる。

 だが、炎を沈め終えた後のハジメの姿は凄惨なものとなっていた。レザーコートや上着やジーンズなどは、その大半が焼き爛れて炭化し、黒く染まっている。また燃え落ちた服の穴からは火傷した肌があちこち窺がわれ、痛々しい暗色となって爛れていた。見るからに重傷、危険な状態だ。

 実際、ハジメは全身から突き刺さる激痛に意識が撹乱され、なんとか卒倒しないように意思を食い止めている状況であった。常人であれば、すでにその激痛から発狂し、意識を閉ざしていたところであろう。片膝立ちになりながら、彼は必死に自我を保つ。


 そんな彼へ、クローズは歩み寄ってくる。

 彼は炎の剣を掲げると、その炎を伸ばして剣のリーチを広げ、ハジメを圏外から圏内に捉えた。


「終わりだ」


 そう言うや、クローズは斬撃を振るう。炎の剣は無情に、激痛を堪えることで精一杯のハジメの脳天めがけて振り落とされる。

 爆発音が響く。

 炎の剣はハジメの姿を飲み込むと、その床ごと爆砕し、辺りに爆風を撒き散らすのだった。

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