龍討伐聖騎士(ドラゴンスレィヤー)ジーク、勇躍の時。

全土を凌駕りょうがする強大な軍事力を誇る超大国。



その名は………………オズマン帝国。



ここは、その国土の中枢を成す帝都イーストサラリア。


帝都の中央には小高い丘がありネオミネルヴァの王城が聳えている。



帝王の座………………



無造作に投げ出された宝玉が散りばめられた王冠。


それを見つめる中年男女の姿。


帝王ジークの弟、ヒヒイロ侯爵 と、ザライヤ王后である。


二人は窓から射し込む夕日を浴びて、その影が大理石の床に長く伸びている。



ヒヒイロ侯爵が帝王の座にある冠を拾いおもむろに呟いた。



『兄上は病弱なワシにまつりごとを任せて、また鹿狩りへ出掛けたようじゃなぁ……』



ザライヤ王后がヒヒイロ侯爵の手 を取りなまめかしい声で話し掛けた。


『あの人はまっりごとにまったく関心のない無頓着むとんちゃくな 方です。』


『いっそヒヒイロ侯爵様が、帝国の舵取りを なさいませ。』



ヒヒイロ侯爵はザライヤ王妃の目立ってきた大きな、お腹をさすって答え た。



『もしや……ワシと、そなたの蜜月の仲を兄上は気付いておられるのではないかのう…………』



ザライヤ王后がヒヒイロ侯爵の顔 を両手で包み呟く。


『ご心配には及びませぬ…………あの 人は狩りに出ると1年は戻りませぬゆえ。』



『先王より受け継いだ聖杯が妙なティルナローグの民とか言う歌劇団に奪われてからというもの


兄上は、すっかり人が変わって しまわれた……』



大きく溜め息を付き帝王の間に隣接した広いベラン ダへ出るヒヒイロ侯爵。



その後ろに寄り添うようにザライヤ王妃が近付き腕に手を回した。



遠くの霧に霞む山々の狭間は、今のヒヒイロ侯爵の思いを見事に映し出してい た。



………………………………………………☆




その山の狭間をティルナローグの民を名乗る歌劇団を追い白馬を走らせる銀箔の鎧で装った騎士の姿があった。



龍討伐騎士、ドラゴンスレイヤー、オズマン帝王ジークの勇姿である。



聖杯が入った袋を握りしめる歌劇団の女頭領が歩みを止めてジークの前に立ち塞 がった。


『愚かな!!』


『一人で何ができる!!』



彼女は、聖杯が入った袋を背負って歌劇団の中へと紛れ込んだ。


辺りは霧に包まれていたが、やがて徐々に霞は晴れて行く。


すると女頭領が居た辺りに、大きな影が現れ出てきた。



漆黒の大魔龍サラマンドラゴンの顕現である。



グオオォォォオオオ》》》》》》



宝剣を片手に白馬ペガサスミリオンに拍車を掛けるジーク。



『いざ!!、参るーーー!!』



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