深緑の中に佇む自然を統べる女神アリス。
ここはエリスシオン島。
ドラン連山の
霧の
丸々と太ったお腹で玉衣のボタンが今にも弾ち 切れそうなエリスシオンの王サーラミスと
親衛隊、隊長の銀弓少女アルテミウスそし て数名の兵士たちが王に従っていた。
サーラミス王が霧に
『余の愛しき霧の森の妖精リョース.アルヴァ ーよ~!』
『その美しき姿を見せよ~♪』
『余はエリスシオンの王なるぞ~』
『余の
『宝物は思いのままぞ~~~♪』
右に左に前に後ろにと歩き回るサーラミス王の服に野イバラのトゲが刺さり彼はその場に 、もんどりうって倒れた。
アタタタタァ……))
慌ててサーラミス王の近くに駆け寄る親衛隊長、銀弓少女アルテミウス。
『王様!、お怪我は……?』
アルテミウスが差し伸べた手を払いのけ立ち上がったサーラミス王。
『大丈夫じゃ……アタタタタァ)))』
『霧の妖精アルヴァーが現れぬのも余が、こ のような痛い目にあうのも!!』
『悪いのは、すべて、この野イバラのせいじゃーーー!! 』
『アルテミウスよ、野イバラをすべて、刈り 取れ!!』
銀弓女子アルテミウスが首を
『もうーー!!、王様ぁ、野イバラには何の罪もあり ません!』
『綺麗なお花に八つ当たりするのは、お止めくださーーーい!!』
憤慨して言葉を続けるサーラミス王。
『えーい!』
『何をしておる!、切れといったら切れーー! !』
兵士たちは渋々、の命令に従い、ぼやきながらも剣を抜き野イバラ の茎に刃を当てた。
『お待ちくださいーーー!!』
その時どこから現れたのかサーラミス王の背後に水汲み用の手桶を持った農家の娘が
サーラミス王は兵士たちに剣を収め後ろへ下がるよう命じた。
その後、振り返り声の主である娘の顔をのぞき込 んだ。
質素で慎ましい装いで身を包んだ田舎娘の姿がサーラミス王の視界に飛び込んで来た。
しかし彼女の全身は輝きを帯びていて何とも神々しい 。
長い
その額は白雪のようで、つぶらな瞳は夜明けの澄んだ青空のようであった。
サーラミス王は、お目当ての霧の森の妖精リョ ース.アルヴァーに会えたことに小踊りして喜んだ 。
『そなたが噂の霧の森の妖精美女、リョース.アルヴァーで あろう!!』
『余の妃となるがよい、望みは思いのままぞ~♪ 』
神々しさを全身から放つ霧の森の乙女はサーラミス王にしばらくの沈黙の後、静かに答えた。
『わたしの名はヴォルサティアと申します………… 』
銀弓女子アルテミウスが人指し指を一本 立てて自分の右のこめかみ辺りに当答えた。
『ん…………ヴォルサティア、どこかで聞い たような気がするわ?』
サーラミス王はヴォルサティアを気に入ったら しく頻りに彼女に言い寄っていた。
銀弓女子アルテミウスが怪訝そうに咳払いをひとつした。
『ゴホン!』
『王様ーーー!、霧の森の妖精リョースアルヴァーを探しに参ったのでは?』
『はぁ……王様の耳はロバの耳……まるで聞こえてないし。』
その時けたたましい数頭の馬の
サーラミス王は咄嗟に銀弓少女アルテミ ウスの後ろに恐れおののきあ隠れた。
『アア、、アル.テミウス…………』
『また敵の騎士が余の命を狙って迫ってお る。』
肥え太った体を小刻みに震えさせるサーラミス王。
アルテミウスは銀弓に矢をつがえ構えたが直ぐに矢先を降ろした。
『王様、あの旗はエリス.シオンの伝令兵士のものでございます。』
到着した伝令兵士たちは馬から降り兜を脱いで慌てた様子でサーラミス王の前に身を投げ出すようにしてかしすいた。
サーラミス王は、その様子にただならぬ気配を感じ取った。
『何があったのじゃ……そのように慌てておるとは?』
伝令兵士は弾んだ息を鎮めてから答えた。
『王様に申し上げます。』
『オズマン帝国連合軍が大挙して我が国に迫っておるとのことでございます!!』
『ヴァルキシオン宰相より火急の報せを王様に届けよとの命を受け馳せ参じました!!』
『ア、アルテミウスよ、し、し、城にもどるぞ……』
足を震わせながら馬車に転がり込み頭を抱えるサーラミス王。
親衛隊長、銀弓少女アルテミウスが一行に帰城の号令を下した。
『シオン城へ、帰りまぁーす!!』
その様子を深緑の木立の間から見守る乙女の姿は次第に美しい深緑のマントと
クワィエットスタ ーリングを思わせる
馬車を走らせる親衛隊長
銀弓少女アルテミウスが、振り向き様にその姿に眼を 止め呟いた。
『あれは………………自然を統べる女神、アリス様…………』
『我らをこの災難より御守りくださいますように。』
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