「ねこ」と「うさぎ」とトライアングル
そんな出会いから数日、いつも通りの学校生活を過ごし、寮に帰ろうとした悠の前にある校門付近では、なぜか人だかかりが出来ていた。
人だかりの大半が女性で、かわいーだの弟にしたーい、だのと言った声が聞こえてざわざわしていた。
特に関係ないと思い、通り過ぎようとした悠を止める声が聞こえるまでは、実際にそうだったとも言える。
「あっ、悠さーん!待ってたよー!って、ちょっとごめんなさい、お姉さんたち道を開けてぇ」
つい最近聞いたばかりの声に立ち止まり、きょろきょろと周囲を見渡す姿に近づこうと必死に声を出すそれは、明らかに周りの女性より身長が足りないためか一向に姿を現すことができない。
「うー、待ってよ悠さーん、というか助けてぇー」
手を出してここだよとアピールするが、まだまだ幾重にもなったその自然発生のトラブルは抜け出せそうにない。
再び歩き出そうとした悠に、待ったをかけるどころか、男としては少し恥ずかしいことに救助を求めるしかなかったのだ。
そこでやっとその中心、原因となった人物が声の主、るりであると気づいた悠は慌てて駆け寄って手を差し出した。
やっとのことで抜け出せた少年は、ほっと一息。
「ありがとう悠さん、僕お話したいことがあって来たのにいつの間にかお姉さんたちに囲まれちゃってて・・・」
お礼を言いながらはにかむその様子は、やはりかわいかった。
「ごめんねお姉さんたち、じゃあねー!」
囲っていた人たちにもちゃんと別れを告げちゃっかり腕を組もうとするが、手をつなぐだけに止められてしまったのに不満そうな顔をしたるりを引き連れ、空き地スペースにベンチを置きました候な公園と呼べない公園に行く。
そこへ腰掛け、『話したい事』を聞いてみることにした悠。
「それで、なんで私を待ってたの?」
「あ、そうそう、この間の話、僕本気だからね?悠さん、僕の彼女になっ・・・」
真剣な表情で悠の目を見つめながらそう言いかけて、驚く。
「げっ、なんで
即座に膨れっ面になるるりに、篠崎は言い放つ。
「こいつは俺のだ。俺の
そう言いつつぐいっと悠を引き寄せるその姿は、知らない人が見たら恋愛漫画にありそうな一場面だと思うだろう。
それが全くないのがこの篠崎という男である。
「なんだよー、だからって僕たちの邪魔をする必要はないでしょう?お前の所有物じゃないんだよ悠さんは!」
「いや、所有物だ。異議は認めない」
「所有物でもないし、ましてやそこに悠さんの自由はないの?!ねぇ悠さん、僕にしなよ!僕ならこんな奴よりも大事に大事にするよ!一番にあなたを考えて行動できるよ!」
「いや、お前は俺のものだ。そいつの甘言に耳を貸す必要はない」
男2人に取り合いされているのに、とてもうれしくないと思う悠は、それに対して反応できなかった。
「「悠(さん)」」
呼ばれても、心ここにあらずな姿を見て、2人はまた言い争いを始めるのだった。
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