「ねこ」の狙いはこれだった。
バタバタとまではいかないけれど、かなり大慌てで校舎を出る悠。
目的地はあの朋奈のいる研究所だ。
(どうしよう、学校でネコになっちゃった!!)
一見すると猫の前足の付け根を持って走る姿はほのぼのして見えるが、顔がそうじゃないのを物語っている。
通行人は首をかしげて、またそれぞれの歩みを進めるのだった。
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「と、朋奈さん!!」
息を切らし、前に会ったときのように悠然と診察用の椅子に座る女性にネコを見せる。
「あら悠さん、どうしたの?」
「し、篠崎くんが・・・!学校で、ネ、ネコに・・・!!!」
「ゆみちー、悠さんからかっちゃだめでしょ?戻りなさい」
朋奈が優しく鼻の頭をつつくと、へいへい、と返事をするように一鳴きする。
そしてネコは煙とともに人間に戻ったのだった。
「・・・ったく、なんつーかっこで走ってんだよ」
戻ったときの第一声はそれだった。
確かに、改めて見ると悠は乱れた髪、ベージュ地にインクブルーという青でチェックを施されたブレザーはよれ、学年を示す青いリボンも左にずれ(学年は1年が青、2年は黄色、3年が赤となっている)ていたりと、慌てぶりを言わずとも察せる様相となっていた。
逆に、篠崎はきちんとしていて、ブレザーと同じ色の上下に身を包み、黄色のネクタイを締めている。
見た目だけならイケメンと呼ばれる類ではないかと悠は思っていた。
悠がその場で身なりを整えていると、朋奈は笑みを浮かべて言う。
「でもよかったわ、今日は検査の日なの。丁度いいからこのまま検査しちゃうわね?」
あ、はい。と返事をすると、篠崎を連れてどこかへ行こうとする。
「お前も来るんだよ、義務あるからな」
ちょいちょい、と右手のひとさし指でこっちへ来いと促す篠崎のマイペースぶりは、やっぱりネコそのものだと感じるのだった。
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