出会い・続

「あー・・・ったく、なんでオンナがここにいんだよ・・・」


苛立たしげに頭を掻く男性に、悠は驚きを隠せない。


「ど、d「どうしたの!?って、篠崎!部屋にいたのか!!」


声に驚いて駆けつけてきてくれたであろう管理人っぽい彼が、悠の声を遮った。


「おい金本かなもと!なんで俺の部屋にオンナ《コイツ》がいるんだよ!?」


苛立ちをぶつけられた彼、もとい金本 晃哉こうやは少し驚き、事情を説明した。


***


「と、言うわけで・・・蘭さんとルームシェアしてくれ!」


手を合わせ、お願いする姿をよそに、悠は心の中で頭を抱えていた。


(さっきのは一体何・・・?ネコがヒトになった・・・!?そんなことってあるの!?)


混乱する紅一点に、実に爽やかでいい笑みを浮かべた晃哉はこう言った。


「よかったね!篠崎がいいって!!」


「えっ?」


あれこれと決着のつかない自問自答を繰り返していた彼女は、突然の言葉に意識を向けた。


「しかたねぇからお前と合室してやるって言ったんだ」


睨むようなジト目をしながら腕を組んでいるルームメイトは、とてもこれから仲良くしていこうという気がさらさらないのだと誰にでもわかるオーラを放ちながら、それでも彼の領域への侵入者を認めるのだった。




***




 それじゃ、と言って晃哉が去ると、悠は右腕を引かれて篠崎の(これからは2人の)部屋へと入らされ、使われていないほうのベッドへと放られた。


「きゃっ!?」


なにするの、と顔を向けた瞬間に近くにあった顔に驚く。


「いいか、お前が見たアレは他言無用だ。それに、俺のことに一切の口を出すな。それができないようなら、お前の命は無いものと思え」


睨みつけたままの双眸そうぼうは怒りのみを映し、その迫力に悠は頷くしかできない。


「わ、わかった・・・」


「ならいい。あと、俺の猫姿を見ても触ろうとするな。触られるのが一番嫌いだ」


それだけ言うと、体を離して机に向かう篠崎。


こうして、ちょっとおかしなルームシェアが始まったのだった・・・。

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