26

「ディアル様が手をつけてはいけない闇の組織に手を出したのはつい最近のことなのです」


馬車の中で一緒についてきた兵が、表情を変えずに、淡々と事情を話し始めたのはついさっきからだった。


「正義感の強いディアル様のことですから、長年王家は決してあのような者たちと関わらないようにしていたのですが、先頭に立って撲滅すると宣言してからは、命を狙われるようになって、そうしてあなたの仕事に結びついたということなのですよ」


「闇の組織…」


「黒い鷹と呼ばれています、何が鷹でしょうか、弱いものをいたぶり、快楽に身をおぼれさせ、やつらは悪魔に魂をうったようなもの。」


「決して開けてはならないパンドラの箱を開けたのは迂闊だったのです」


フードの男は囁くようにそう言って、馬車の外を眺めていた。


馬車が人気のないところに止まり、3人がアジトの近くへ寄ろうとしたところであった。

鈍器のようなもので3人は突然殴られ、アジトの奥へと監禁されたのはまもなくであった。先客はディアル様!と叫び、フードの男に近寄った。


「あ、あんたがディアル!?」


「森の中に木を隠すのは先人の知恵といいます、あなたの側にいるのが一番安全だと確信してこのようにあなたの身近にいました、私は隠居し、滅多に人前に姿を現すことはありません。さらった連中はわたしの顔を知らないのです」


そう囁くように言って男はフードを取って見せた。

ディアルの姿は、夢にでてきた父親そっくりであった。

「とうちゃん」

思わずアンドレアはそう叫びだしそうになった。

あのパレードのときにソフィアに目を奪われていなければ、もっと早く正体に気がついたに違いない。グレイプニルが会ったことがあると、言ったのもそのせいだったのだ。


「ディアル様、申し訳ありません」

さらわれた身代わりは、ディアルとは後姿が少し似ているだけの男であった。

「私のためにお前を危険な目にあわせてしまった、本当にすまないことをした、しかし来てすぐに3人とも捕まってしまうなんて困ったことになってしまった」


鈍器で殴られた後頭部がまだ痛む。アンドレアは血のでた頭を汗だと思ってうっかり手をのぞいて自分から血がでていることを知った。


「あまり時間はありません」


ディアルはそういって、同じように血の出た頭をさすった。

暗い部屋には4人しかいない。しばらくしてアジトの一味がやってきた。


「これで人質が4人もできた、さてディアルはどうでるかな」


高らかに笑い男は舐めるように4にんの哀れな姿を見つめた。

ガンっと鉄格子を蹴り、男は去っていった。


「私の顔も知らないのですよ彼らは」

「ディアル様オレに考えがあります、奴らの下っ端はオレのもと仲間です」


アンドレアは食事を運びにきた少年に話しかけた。


「ニードル、ニードルじゃないか、オレのことを覚えていないか?」

「ん?どうしてオレの名前を?ああ!アンドレア!アンドレアじゃないか!

オレのことを覚えていたんだな」


「懐かしいな、本当に懐かしい」


少年は食事を置いて、昔話を始めた。


「アンドレアが落とし穴にはまったときは、本当に笑ったよな」

「で、なんでお前たちはやつらにとっ捕まって言いなりになってるんだ」

「想像どおりさ、俺たちは薬漬けにされて、言いなりになるしかなくなってしまったんだ、本当はもうこんなことは止めてしまいたい」

「オレだったらお前を助けてやれる!」

「アンドレア、そういってくれるのは嬉しいけど」

「一緒に助かろう!」

「アンドレア……」

少年はすっかり打ち解け、様々な情報をアンドレアたちに流してくれた。

「オレは鍵を持たされていないんだ、時々来る看守から奪うしかない」

「見張りの時間は?」

「昼の一時と夜中だ」

「夜中を狙う!」


アンドレアは夜がくるのを4人でひたすら待った。

「成功するでしょうか」

ディアルは不安げにアンドレアの顔を見つめた。

「大丈夫です、きっとオレがなんとかします」


アンドレアは湿っぽいその牢屋から看守に叫び続けた。

「腹が痛い!腹が痛い!」

「うるさい!腹痛くらい根性でなんとかしろ!」

看守が牢屋に近づき背中を向けるのをを見計らって、ニードルが鈍器のようなもので看守を殴りつけた。

「やったぜ」

ニードルは鍵を奪い、アンドレアたちの閉じ込められていた牢屋をその鍵でこじ開けた、

「とりあえず武器はとりかえしてきた」

4人分のナイフをニードルは渡した。

「約束だよなアンドレア、オレを助けてくれるって」

「もちろん!」

「オレの名前をお前が覚えていてくれただけでも嬉しいんだ」

ニードルの目は未来を見据えて輝かしさに溢れていた。

4人を引き連れ、ニードルは地下から地上への出口を教えてくれた。

そこに元仲間だった連中がまたそうではない連中がたむろしていた。

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