school〜彼らの戦場〜

@324

第1話

黒髪の少年が、ボッーと一人屋上で昼食の菓子パンを食べていた。

彼の名は、嵩宮透。長花高校二年だ。顔は、そこそこ。成績は、上の下。

どこにでもいそうな彼が、何故一人寂しく屋上で昼食を食べているのか?

それは、友達がいないからだ。

透は、ふと空を見た。

そして、考えるのだ。

何故、人間はこんなに醜いのかを。

透は、小学校の頃に転校してきた。

転校生というのは、いつの時代も大変なものである。

透もそのうちの一人だ。

転校早々に透は、席が隣になったある女の子と仲良くなった。

それが、そもそも間違いだった。

その子の名前は、香織ちゃんと言った。

間違いなくクラスの半分は惚れていたモテ女だ。

彼女は、積極的に透に話しをしてきた。

しかし、それは周りを差し置いて仲良くしていると誤解される行為であるため透は、彼女を拒んだ。

そんなある日、彼女が一緒に帰ろうと誘ってきた。

しかし、面倒事が嫌で断った。

すると、香織ちゃんは泣きじゃくった。

それを止めにきたクラスのリーダーを

ボコボコにしてやった。

これで、透はクラスの敵となった。

それから、イジメが始まった。

ノートへの落書きから靴隠しまで。

しかし、透は屈しなかった。

どんなことをされようとも、けっして学校を休む事は無かった。

そのまま、中学へ進学したがイジメは留まるところを知らなかった。

最早、誰にも止められない状態まで行ってしまった。

しかし、透はけっして学校を休む事はなかった。

勉強も必死になって取り組んだ。

奴らと同じ高校には行きたくないと。

そして、この長花高校へと進学したのだった。



キーンコーンカーンコーン

予鈴が鳴った。

透は、ゆっくり立ち上がると教室へと向かった。

そして、教室という名前をした戦場へと足を向けた。

誰もが、兵士の戦場へと。

戦場きょうしつでは、身分階級スクールカーストが存在する。

まず、王様と女王。

次に、その周りに蔓延る貴族。

その下の平民。

平民にすら蔑まれる奴隷パシリ

そして、全てにおいて最下層に位置するボッチ。

この序列は、殆ど変わる事はない。

まあ、上から転げ落ちてくる場合は、よくあるが、下から這い上がった前例は、無い。

それが、この馬鹿みたいな戦場のルールだ。

阿呆らしい、透は常々思っていた。

別に負け惜しみを言いたいわけじゃない。

透に友達がいないのは、作らないからだ。作れないからじゃない。

まあ、これが負け惜しみに聞こえるのだが。

透は、しかし気に入らないと思っていた。

この戦場を壊す機会を狙っていた。

そんなある日、戦場に破壊者が登場した。

転校生という名の破壊者が。

「転校生を紹介する、入ってこい。」

「はい、海崎花梨です。よろしくね!」


先生の合図で入ってきたのは最悪な破壊者だった。いや、意味を変えれば最高かな。

ちょっと長めの茶髪に着崩した制服。

必要がないほど短いスカート。

可愛らしい顔立ちをした女の子だった。世間の常識に照らせば美少女だ。

美少女転校生となればアニメやラノベでは見惚れたり一目惚れするのかセオリーだが生憎ラノベの主人公では無い

透にとってその生物は、嫌悪の塊でしか無かった。

生理的に無理だった。

きっと、あれは男子受けする声、表情、仕草全てを研究している、俗に言うぶりっ子または、ビッチだ。

そういう女の子は、あまり好きではない。あまりではなく全くだが。

「じゃあ、海崎は……嵩宮の隣な。

それじゃ、授業の準備しろ。」

げっ、最悪……いや最高だな。

ニヤッと透の口元が緩んだのは誰一人気づかなかった。

「よろしくねっ。嵩……本くん?」

「嵩宮です。よろしく」

出来れば関わりたくないが、こいつは使える。世界が変わる。戦場が変化する。

「これから、仲良くしよう」

「えっ……う、うん。よろしく」

そう、今仲良くしておけば後で利用し放題だからな。

もう一度透は、口元を緩めた。

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