第3話 世界の中心で愛を叫ぶ黒人

「ひ、人、いっぱいだね……」

 今日は四月ちゃんを映画プリキュアオールスターズに連れて行く約束をしていて、駅前の映画館を目指していた。彼女は人の多さに面食らっているようだった。

 駅前の募金スポットでは、常軌を逸した眼をしている厚切りジェイソンを名乗る黒人(明らかに偽者であるが……)が叫んでいた。

「Why Japanese people!? 幼女レイプしたらエイズ治るのに何故法で禁じる!? Why!?」

 僕はその叫びを聞いて、これが世界の中心で愛を叫ぶということかと感動していたが、「でも僕童貞だしエイズがどうとか言われてもな……」と考えたら感動の熱も冷めてしまった。

 そのうち警察(国家暴力! 悪い奴らだ!)がやってきて即御用となった。

 ニヤニヤとそちらの方を見ていると、警官と目が合い、警官は何故かこちらに近づいてきた。何故か、というか理由は明らかで、ボサボサの髪の毛に無精ヒゲを生やす怪しいおっさんが少女と手をつないで歩いていたからだった。しかも俺は四月ちゃんと手を繋いでいたせいで、少し遠くから見てもわかるくらいにハチャメチャに勃起していた。これはヤバいっすわ。

 僕は咄嗟に、捕まった黒人を指差して叫んだ。

「そうです! おまわりさん! そいつです! 幼な子を強姦するなどと反社会的発言をするペド野郎は射殺しちまえばいいんですよ! へっへ! 日本国万歳!」

 自分の趣味嗜好(ロリコン)を全力で棚上げし国家権力に媚びへつらうと同時に僕は四月ちゃんを抱えてダッシュした。

「えっ、えっ」

 驚く四月ちゃん。

「待て!」

 怒鳴る警官。

 グララアガア! グララアガア! 股間のゾウさん大暴れ! 

「あそこが苦しいです、サンタマリア!」

 そう叫んで僕は警察からのランナウェイをキメるのであった……

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