第6話 ジュニアアイドルの動画を食い入るように見て辛口コメントをつける話
ロリコン、それは孤独な幾万の星々である。
ロリコンは日本において
そして今日も孤独に、インターネットでジュニアアイドルの動画を食い入るように見つめる男がいた。僕である。
「確かに編集は今までで最高。しかし、ジュニアアイドルビデオとは視聴者に動画の編集テクニックを見せるものだったでしょうか? 見慣れたポーズ、見慣れたコスチューム。まとまってはいても緊張感に欠ける、自己模倣の凡作ですね……」
動画を食い入るように見た後、動画のコメント欄に辛口評価を書き込んだ。
「ん~、すこし休憩するか」
下劣なロリコン文化の中にいると自分は社会から淘汰されるべき最悪の人種であるという劣等感が強くなるので、ジュニアアイドルの動画に辛口コメントをつけることによって何か高尚な存在になったかのような錯覚に浸り、何とか精神の均衡を維持し発狂を食い止めていた。……いや、ジュニアアイドルの動画に辛口コメントをつけている時点で僕は既に発狂しているのかもしれない。
「このメスガキで500回は抜いた」だとか「もう処女じゃないんだろうな、さっさとAVに出演してほしいぜ」などという蛮族的コメントをつける輩もいる。以前僕は顔をしかめて「そういうひどいことを言うのはやめないか」とそれらのコメントに返信したものの、「お前だってこの子たちで抜きまくっているんだろ、自分だけは他の汚い連中と違って綺麗ですってなツラしてんじゃねーよ」と正論で返され論破された経験を持つので、今はそうしたコメントはスルーすることにしている。
「さて……」
動画漁りを再開した。
ジュニアアイドルのみゆちゃんが脱いだ衣装を畳むシーンを見て、「お洋服きちんと畳んでて偉いねみゆちゃん!」と絶叫しながら射精した。みゆちゃんは脱いだ服を脱ぎ散らかしたりしない、良い子なのだ。そんな良い子が、大人の食いものになっている。なんて悲しいことなんだ。
先ほどスタッフがチラッと映った時、スタッフの顔にモザイクがかかった。スタッフの顔にモザイクがかかるなんて、まるで犯罪者でも映してしまったかのようだ。いや、間違っていない。彼らは奴隷商人という犯罪者なのだ。ロリコンたちに少女のあられもない姿を供給する奴隷商人。恐ろしい。
彼らの凶行を止め、ジュニアアイドルを健全な生き方へと戻したい。しかし僕には彼らを止められるような権力が無い。そうだ、何かの特殊能力があればいい。ジュニアアイドルでシコるとそのジュニアアイドルにテレパシーを送ることができる能力を得て「こんな仕事、もう辞めなさい!」って説教するなどできればいい。辞めさせるためには一旦相手でシコらなければならないという矛盾を抱えたヒーロー、それが僕……かっこいい……
ぴちょん、と水道の蛇口から一滴の水が垂れた音がした。クシャっ、とコンビニのビニール袋が音を立てる。すると心の中の孤独がどんどんと増殖し、息が苦しくなった。
ロリコンは犯罪者予備軍。社会の爪弾き者。ひどいことを考えている人間なのだ。
不死・再生能力と最強の怪力を手に入れてジュニアアイドルの引退会見に乱入して、警備員の制止を振り切りながらジュニアアイドルを四つん這いにさせてガッツンガッツン突き上げてバッコンバッコンレイプしたい。報道陣にめっちゃパシャパシャ写真撮られててアイドルはめっちゃ泣いてるけど、僕が強すぎて誰も止めることができないっていう。
僕はそんなことを考えている潜在的犯罪者なのだ。ロリコンは仲間を探すことなどできない。他の誰かに自分がロリコンであることを知らせれば、何もかもが終わってしまう可能性があるからだ。安易に自分がロリコンであることを公開できないため、仲間を見つけられない。この宇宙でたった一人、誰とも共有のできない不道徳を抱えている……
ん? 巡回しているジュニアアイドルブログのサイトが重くなってきた……? アクセスしづらいぞ。これは……そうか!
ロリコンたちがこのサイトに集まってきている! 直接目には見えないけど仲間たちが集ってきて「大丈夫、君は一人じゃない」「俺たちがいるぜ」って励ましてくれているかのようだ。
そこに人間がいる。それだけで、僕の心は希望で満ちた。希望とは、人間そのものだったのだ。決して交わらない道の上をロリコンひとりひとりが歩いている、百億光年の孤独。だけど、ひとりひとりがキラキラ、キラキラと輝いて、他人の心に希望を与える。暗闇が茫漠と広がる宇宙に僕たちは一人、だけど星々は輝いて仲間に居場所を伝えるんだね。
「くぅっ……! みんな……!」
暖かさが胸にじんわりと広がって、涙が出てきた。止まらない……ついでに股間から出る白い涙も止まらない……!
夜更け過ぎの、心温まる物語であった……
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