第三十三話 一年委員長と初めての(恥辱に満ちた)朝礼台
一年委員長と初めての(恥辱に満ちた)朝礼台-1
「安佐手君、もっと僕に体重かけていいから」
「ご、ごめん、白馬」
まさか、久々のバス通学で酔うとは思わなかった。
白馬が偶然同じバスに乗っていてくれたのは幸運以外の何者でもなかった。
「休んでも良かったのに。自治会室で一旦休もうよ」
「いや……いい」
一度座りたいのは山々だったが、中に居るかも知れない人物に会いたくなかった。
まぁ、教室に行けば顔を合わせることになるんだが。
携帯の通知に『向井 桐花』と表示される度に、なぜか泣きたいような叫びたいような気分になってしまった。
本人を見たら、どんな気分になってしまうか分からない。
なのに、どうして俺は休まなかったんだ。
「治らなかったら保健室行きなよ?」
「うぅ……うん、ありがとう」
白馬は俺を教室へと送り届けると、自分の教室へ行ってしまった。
「安佐手だ!」
「うぇ?」
なんだ、急に。
あまり話したことのない女子にまで呼び捨てされるとは。
ちょっと嬉しいな。うへへ。
「うちも米粉欲しいんだけど!」
米粉?
ああ、農協が余りまくってる米粉の積極活用を要請してきたんだっけ。
ダンス部はそのサンプルを使って試作をしていたんだよな。
女子からは酷評されていたけれど。
「お、おはよう……何に使うの?」
「おはよ! パンにきまってるっしょ!」
元気に挨拶ありがとう。
でも、あなた何部なの?
「だってうちクラムチャウダーっしょ? パン付けたいんだけど予算足らなくてさ! 米粉だったら貰えるんでしょ?」
へぇ、元気なら食べてみたいと思うけど、今は食べ物の話をしたくないな。
で、あなたは何部か教えてくれないかしら?
そもそもどうやって大量にパンを焼くつもりなのかしら?
「席つけぇ! お前らの生殺与奪を握っている神様こと先生のご光臨だぞテメーら! ん? つっきーテメェ学校来たのかよ。また倒れる前にある程度やることやったら帰れ! 日直!」
倒れた時は迷惑かけたもんなぁ。
まだ陽太郎も嗣乃も、お隣さんすらいないんだが。
「連絡事項! 今日はこれから授業無しで準備! 中央校舎は授業あるから静かにやれ! 一年生の出し物クソ遅れてるから部活と委員会よりこっち手伝え! うちのクラスの安佐手以外の自治会はもらえる廃材確保しに行ってるからな! 材料足りないなら急いで言え! 明日は三、四時間目の授業を一、二時間目にやる以降は準備! 以上!」
相変わらず伝達の仕方が雑だ。
陽太郎達はわざと俺に黙っていたな。
「へいつっきー!」
「は、はい?」
わざわざ俺の席までやってきた依子先生は、ずいぶん疲れた顔をしていた。
「一時間半くらいかしたら小会議室来い。教室は出るな。呼ばれたらすぐ来い! 終わったら帰れ」
「は……はい?」
「いいから来い。理由は後だ」
嘘だろ。
一時間半もここで何をしていたら良いんだか。
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