1-5 金と魔法と一夜のロ~マンス

 日中はあんなことがあったが、夜は大番頭ケルニムと会う約束がある。

 そのため、宿で夕食いただいた後、着替える。

 真っ黒なローブでは、悪目立ちしそうなので、追加で冒険者らしい旅装と、シアの意見により、ヒダのついたスカートを買い足し、金の余裕はなくなった。


『着替える前に井戸水で身体拭きましょ。頭も洗いたいし』

『そうだな』

 ちなみに風呂はない。贅沢品だそうだ。


 宿で頼めば、手桶に入った湯をくれるらしいが、まだ水でもなんとかなるだろう。大陸のこの辺りは四季があり、今は春とのこと。

 庭の井戸近くに戸板があり、そこで身体を拭う。

 頭も洗うが、洗剤の石鹸もない。

 あることにはあるらしい。早いうち入手したい。


 洗い場には他の宿泊客もいないので、ゆっくりできる。

『交代ね』

『裏にいても汚れるのか?』

『いんや。核と魔力の塊に還元されるみたいだから、汚れはなくなるし、傷も時間で回復するみたい。生命量と魔力は共有だから関係ないけど』

『じゃ必要ないのでは……』

『さっぱりしたいじゃない』

 まぁ気持ちはわかる。

 道中は、交代して清潔を保てるけど、定期的に洗いたい。


 交代すると、女性が自分の身体を洗う感触がまざまざとわかる。

 なんだろう。不思議体験。

『私も同じような気分よ。シンが今感じるいやらしさはなかったけど』

『そう堂々とされると、そんな気分も飛んで楽だな』

『しょうがないじゃない。恥じらうだけ不毛よ』

 確かにそうだ。いくらでもこういうことはある。


  ●


「ご無事でしたか」

 ケルニムに会うと開口一番にそう言われた。


 俺たちが首を傾げると、慌てたように説明する。

「失礼。先日よりシンシア殿が何者かに見張られているとの話を聞きまして、それをお伝えしようとした矢先に、ベーレン少佐に連れて行かれたとの情報が入ったのです」

 妙に訳知りだな。


「ベーレン少佐は有名人なのですね」

「ええ。伯爵でありながら、前線指揮を好み、私兵に近い特殊工作部隊もいるとの噂。オードラント侯爵の虎の子ですし、民衆に気安いので人気もあります」

 そこで一言区切り、少し声を潜めた。

「しかし、反乱分子や潜在的犯罪者には容赦がなく、手段を選びません。それゆえに愛国者として敬われる部分ありますが」

「なるほど。そうだったんですか」

「シンシア殿は、若いとしても、未所属だった身。彼らが他国潜入工作である可能性を疑うのは、確かにありえました。失念していたことは申し訳ありません」

「謝る必要はございません。こうして生きていることですし。ですが、近いうち街を出ることになってしまいました」

「ああ、そうなのですか。私どもにしてみれば、アルマーの命の恩人です。もっとお力になれればよかったのですが」

 切々とお悔やみ申し上げるケルニム。

 しかし、その冴えた目は別の何かを示しているように感じてならない。


 あくまでも憶測だが、彼も俺の正体を疑っていたのではないかと思う。

 彼が何かをした訳ではないが、必要とあれば、商売という名の交渉の材料にしただろう。

「誠に申し訳ありません。代わりにもなりませんが、旅の路銀にしていただければと思い、こちらをご用意いたしました。どうぞお受け取りください」


 袋の中身はオルドアの金銭ではなかった。

『トラシントのお金ね』

 俺は狐につままれたような気分になった。

 なぜトラシント貨幣が必要になるのか知っている。


 素知らぬ態度でケルニムが続ける。

「トラシントの銀貨30枚ですが、オルドア貨幣に替えることもできます。きっとお役に立つでしょう」

「ありがとうございます」

「アルマーを助けていただいたのは事実です。その点を感謝しているのは疑いのないことです」


 ゼム・シル商会はともかく、ケルニムはベーレン少佐と関係があることは確かだ。

 そしてそれがどのように作用したのか測り難い。

『でも、そうならベーレンさんは商会を通じて報酬金の前払いをしたんでしょ。いいことじゃない。ほらほら銀貨30枚よ。ちょっとした贅沢ができそう』

『それ以前の行動が筒抜けだったのも、彼らが関係している可能性だってある。そもそも目をつけられた理由にすらなり得る』

『かもしれないね。相手の掌で踊らされているのは気分が良くないけど、結果は許容範囲じゃない?』

『うーん。まぁそう思うことにしよう』

 実際、殺される寸前の存在にしては好待遇だ。


 この世界の人間はなかなかどうして手強い。

 誠実一辺倒では、食い殺されるのは、前と変わらない。



「やあシンシア君。良い天気だねぇ」

「おはようございます。ベーレン少佐」

 どんな経緯だとしても、すでに契約関係にある。

 礼儀とは大切なものである。


 昨日の喫茶店で、紅茶を飲んでいると、黒を基調とした軍服ではなく貴族然とした装飾の服装で現れた。さすがは爵位持ちだ。

「朝食をいただく時間はあるかね?」

「ええ。構いませんよ」

 どうぞと手を向けると、対面に座り、サンドウィッチとコーヒーらしき豆茶を頼んだ。


「予定について話そう」

 彼は約束を違う人間ではないらしい。

 それは信用の重要性を理解するからこそだろう。


「まず、これから公爵館の書室を案内する。緊張することはない。勝手に入って勝手に漁るだけだよ」

 悪戯好きの子供のような言い草だ。

「大丈夫なのですか?」

「私も一応貴族の一人で、あの館に住まわせてもらっているからな。しかも、今はオードラント候は候都に腰を据えている。つまりは私の家だ」

侯爵に聞かせたら大変なことになりそうな言い方だな。


「閉架書庫には魔法書もある。私の名で司書に持ってきてもらうといい」

「助かります」

「あまり手間がかからず、私としても助かっている。それに懐も厚くなったようだしね。ん?」

まるで冗談かのように、ケルニムとの関係性を明かしている。

楽しんでいるのだろうか。

「その点についても、助かっております」

「何のことだね?私は何も知らないよ。とにかく私は案外君を楽しみにしているのだ。投機だと思ってくれて構わない。ただ、時には権利者として何かを要求するだけだ」



 ベーレン少佐は門番に軽く挨拶をすると、書室に案内した。

「お早いですね」

 椅子に腰を掛け本を読んでいたふくよかな女性が顔を上げた。

「ああ、昨日話した件だ。シンシア三等冒険者だ。若くとも優秀な御仁だよ」

「シンシア君、彼女が司書長のルイナだ。若い君には刺激が強いだろうが、手を出すのは危険だ。館ごと丸焼きにされてしまう」

「ベーレン伯爵。冗談はおやめください」

「尻を触った男爵を殺しかけたのはいつだったかな?」

「違います。不貞の輩に説教をしただけです。家に小火が出たのは事故です」

「さもありなん。怖いぞ、怒らすと」

 彼女は火術に長けているらしい。

 いいのか、本を扱うのがそんな人で。


「ルイナ。頼んだよ」

「はい。ベーレン伯爵」

「帰る際は彼女に案内してもらってくれ」

 ベーレン少佐は早々に退去する。


「彼が言ったことは気にしないでくださいね」

 優しく笑みを向けるルイナさん。

 色白で、薄い茶の髪が緩やかに並みを描いて、豊満な胸に乗っている。

 確かに、手を出したくなる気持ちはわかる。

『別にいいけど、焼かれないでよ』

『何もしないとも』


 軽く経緯をぼかしながら自己紹介をして、空間魔法の書をお願いする。

「ちょっと待っててね」

 扉の奥に行く彼女。

 身体のラインが丸分かりな司書服を眺めながら、心で頷く。

『手は出さないけど、目で犯すってね』

『すいませんでした……』

 欲求不満なのかなぁ、俺。


「はいどうぞ。魔法書の使い方はわかる?」

 手渡された魔法書の掲示情報には空間魔法書第一編とある。

 見た目は俺の知る本と同じだ。

「読むのではないのですか?」

「普通の本とは違うの。魔法書のページに魔力注いで、その軌跡をなぞって覚えていくのだけれど。説明するよりは、実際にやってもらう方がいいかも」

「わかりました。やってみます」


『シアは魔法書読んだことあるのか?』

 ふと疑問に思った。魔力がある癖に、全く魔法は使っていなかった。

『理屈はわかるんだけどねぇ。私がやると、魔力がどーんと出て、魔法書読めなくなってるのよね』

 宝の持ち腐れとなっていたんだな。


 閲覧台に本を置き、開くと何も文字が書いていない。

「人によるけど、あるはずの文字をなぞるように、手を置いて魔力を流しますね。高度なものになると、掌で面ごと長さないと発現できないけど」


 ルイナさんが横で眺めている。

 教えてくれるのは嬉しいけど、微妙に落ち着かない。

『ほら、集中なさい』

『あいよ』


 一息入れて、ページに指を置く。

 そっと魔力を注ぐと、ページの凹凸に流れていくのがわかる。


 なるほど。魔法書は知識が書いてあるのでなく、ノウハウ本に近い。

 このガイドラインに従って、魔法を発動するのか。


 数ページに渡り、魔力を流すと空間が開いたのがわかった。

 手持ちの肩掛け鞄から、朝に購入した魔法薬の小瓶を一つ放り込むと空間の先に消えた。

 ページに従い、閉じるように実行させると、空間が消えていく。

 再度、ページに流し込むと、空間から小瓶が回収できた。


 目をつむって何度も繰り返す。魔力の経路を覚えていく。

 そこまで複雑ではない。

 漢字を書くよりも単純で、それを魔力でできるかという問題だ。


 ページから手を離し、魔力で空中に描く。

 空間にポケットが現れる。


『シアもできそうか?』

『大丈夫そう。今の私なら』


「すごいですね。もののすぐに覚えられてしまいました。ベーレン伯爵が懇意にするだけはあるのですね」

 ルイナさんが手放しで褒める。

「ありがとうございます。他も試してみます」


 魔法書に書いてあるのは空間保存法と簡易空間転移法、空間認識術の三つだ。

 どれもルイナさんの好意で、試させてもらった。


 簡易空間転移法は自分や、触れている物や生物を自分の視界内で、移動させることができる。


 空間認識術は一定範囲の構造を理解できる魔法で、物があるか、物の硬度の差異、動く物があるかなどがわかる。

 使用すると、ルイナさんが動くのと、呼吸とともに柔らかい胸が上下するのがわかった。変態か。


 試してみると、空間魔法特有の式があり、実行していることもわかった。

 慣れてくればアレンジも可能かもしれない。


「ここまで来ると天才の域ね。シンシア君、一緒に魔導研究でもしませんか?」

 驚くというよりも陶酔したように、褒めるルイナさん。

 いつのまにか頬が上気して、妙に色っぽい。

「本当にすごいわ。こんなに若いのに。まだ可愛いらしくて……」

 うっとりした声色で、頬を撫でてくるルイナさん。

 ちょっと近くないですか?

「黒い髪。利発そうなお顔。そして何より成長途中のあどけない身体。とても魅力的ですよ」

 そっと肩に手を回し、豊満な身体が押しつけられる。

 この人、ショタ好きなのか。

「いけませんルイナさん。おふざけはおやめください」

 我慢できなくなってしまう。

「いいじゃないですか。君も私のこと見ていたでしょう。魔法でも。魔力波動でわかっちゃうんですよ」

 確かに。それは確かに見てましたとも。

「色々と教えてあげますよ。魔法もね」

 それはとても嬉しいけど。けど……

『魔法も教えてくれるんだし、しっぽりしちゃいなさい』

 シアに見られながらというのが、難点なんだが、ゴーサインがでてしまった。

 なら、致し方ない。そうだとも。


「しょうがないですね。ルイナさん」

「シンシア君っ! ……あっ」

 手を合わせながら、うなじを撫で、唇を奪う。優しく、大胆に。

 20代だった頃を思い出しながら、彼女の身体を堪能する。


 ………………

『精液って魔力値高いんだな』

『そういう理由で、商売する男娼もいるみたいよ』

 そうなのか。


 書室の隣のルイナさんの居室。

 俺は裸でベッドにいる。

 隣には彼女が寝ていて、シーツに浮かぶ身体の形がまだ冷めない劣情を刺激する。


 薄っすらと目を開けたルイナさんは俺を認めると、にこやかに俺を抱き締める。

 ああ、いけない。よくないぞ。


『あと一回くらいしたら、魔法も教えてもらってね。私は寝るから、その時起こして』

 最初から寝てて欲しかった。

 まだ夜は長い。


  ●


「昨日はお楽しみでしたね。いやいや、かの司書長の寵愛を受けるとはね。男冥利に尽きると言ったところか」


 一夜が過ぎ、その次の日の夜。

 彼女の熱烈な見送りのもと、夜の帳が降りた公園で、涼んでいると、ベーレン少佐が、話しかけてきた。


「何を言っているんでしょうか。私は夜を徹して、本を飛んでいただけですよ」

 しらばっくれるつもりだが、実際には宿にも帰らず、読書と魔法のお勉強と夜のお勉強で、次の日の夜になってしまった。

 夜のお勉強だけで終わらなかったことを褒めてほしいが、シアは呆れるばかりだ。

「ルイナは時間には厳しいはずだよ。気に入った人物でなければ定時で追い返す。それに、偶然なことに彼女の居室の真下が私の部屋なんだ。なかなか夜も得意なようだ。その年で見上げたものだよ」

バレバレなようだ。


「さて、君には責任ができた。司書長に取り入り、内部情報を収集した。如何に優秀とはいえ情報暴露したルイナの首を跳ねられるかもしれない」

 それは真っ赤な嘘。でも、ありえるかもしれない想像。


「君は同衾した女性を見殺しにはできなさそうだからね。いや、これは褒め言葉だよ。シンシア三等冒険者」

 楽しんでいるようにしか見えない爽やかなベーレン少佐。


「もちろん、君にも得たものがあるだろう。快楽の他に。ならば良いではないか。では、二日後、朝に従者を紹介する。そのまま旅に出てもらうぞ。それ以上滞在されては、夜が煩くて敵わん」

 言うだけ言って、帰っていった。


  ●


 もともと性交というのはスポーツのような側面もあるが、こっちの世界ではさらに激しい。

 お互いの魔力の奪い合いである。

 奪うときも、奪われるときも、昇るような快楽が生まれ、二人の魔力が常に交わっていく。シアと混ざる魔力とは違う。


 ルイナさんとの行為は甘美に尽きた。

 お互いが、心地よい魔力を与え合い、相互に昇る感覚は今までにないものだった。

 魔法に長ける人物というのは、それだけで魅力となることを理解した。


『そんなことはいいから、覚えた魔法のおさらいをしましょ』

 未だ冷めやらぬ何かに冷水を浴びせるシア。助かります。


 まず空間保存法。

 空間の大きさは、構造中に容積と数を指定する式があり、デフォルトでは最大1立方メートルの空間が10個だった。

 ポケットは増やすことができ、容積の拡張も可能なようだ。

 増やし過ぎると安定性を欠き、ポケットがまるごと消える場合もある。

 結局はデフォルト値が無難ということになる。

 背嚢も含めて、背嚢にあるものを入れていく。

 非常食の干し肉や水を汲み直した水筒、ランプに野宿用のシェラフのようなもの。焚き火に使う魔法実行書に、数枚の布。

 方位魔石といった、方角特定装置や狼煙に使う煙玉各色などなど。

 それに加えて、買ったものを入れていく。

 それにトラシント銀貨30枚、オルドア銅貨52枚を仕舞う。


 これでほぼ両手も空くし、荷物もない。

 肩掛け鞄も閉まってしまったが、楽に越したことはない。


 次に簡易空間転移法。

 自分の視野といっても、見通せる環境でも20メートルが限界。

 が、千里眼を併用した場合、適用されるらしく、半径1.5セグまで移動もしくは物を送ることが可能だ。

 なお、距離により魔力が変わるようだ。


 空間認識術は視野とは関係なく発動するため、千里眼の応用はない。

 閉所や暗所で役に立つだろう。千里眼では屋内は見通せないし、夜は明かりが無ければ見えない。


 ちなみに魔法の名称末尾に術とか法とかの違いがあるが、あまり意味はないらしい。

 一応、応用や発展系がある魔法が法で、それらがないものが術として分けることになっていたとのこと。ルイナさんが教えてくれた。


 他に各科目の便利そうな魔法を教えてもらった。


 水魔法の水精錬法。

 要は綺麗な水を作れる。

 単純なようで、水不足という旅における障害を解決できるため、非常に嬉しい魔法だ。

 薬を精製する際にも媒体になる。


 地魔法に隆起法。

 壁をつくれるので、安全確保に使えるだろう。


 風魔法の風流法。

 涼風から暴風まで調節可能で、色々役に立つと思われる。

 夏場とか。


 重要なことに、魔法を使う際には魔力の波動が出るらしい。

 魔力感知という能力があり、技能に比例して、魔力波を感じることができるという。

 また、魔力感知技術という名称で、アンテナのように魔力の針を立てたり、糸のように張り巡らすとわかるようで、その波動ごとに特徴があり、個人の特定や連絡手段にも利用されるようだ。

 つまりはより便利かつ個人に依存する電波みたいだ。


 他には薬剤調合についても、教わった。

 材料さえあれば、簡単な回復薬は作成できるだろう。


 魔力そのものの具現化と精錬については、魔力操作に該当し、通常、魔法を実行する経路ではなく、魔力そのものの密度や硬度、その他を強化する操作とのことだが、それについての魔法書がないらしい。


 ちなみに、ルイナさんが得意な火魔法は教えてくれなかった。

 耳元で、小さく告げたのは、

「必要なら私を呼んでくださいな」

 という殺し文句だった。


 ……さて、掲示内容にも変化がある。



氏名:シンシア

種族:人類

所属:オルドア王国

位階:三等冒険者


生命量:1600

魔力:101500


固有特性:共同体 聖杯 魔力具現化

特性:千里眼 身体強化

基本技能:生存技能210

     生活技能9

     学術技能38

     魔術技能10

     戦闘技能8

突出技術:魔力貯蓄

     魔力操作

     算術



 日々が命懸けだからなのか、多くの技能が上昇している。

 微々たるものだが、それを繰り返すのが大事だろう。

 度々野営も行ったし、生活能力も増えている。

 基準がわからないため、他の人の掲示で技能を確認したいところだ。


 そういえば、各国の首都には、技能黒石盤というのがあり、認知されている技術を一覧で見ることができ、人々はそれを見て、将来を決めていくそうだ。

 一度は見ておきたい。


『さて、明日はのんびりできそうね』

『人と会いっぱなしだったからな。一応ゆっくりした後に世話になった人に挨拶をしておこう』

『そしてまたルイナさんのところに』

『あわよくば、とか考えていないからな。本当だからな』

『わざとバレるように否定してるでしょ。――まあねぇ、同じ身体にいるだけに、気持ちいいってのはわかるんだけど。ほどほどにね』

 器の大きいシアに感謝しなければならないな。

 まぁ、一つの身体の相棒だ。

 俺だって、わがままばかり言ってられないし、シアのわがままも聞くべきだ。

 なぁ、そういうことだろう、シア。

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