第2話 生命線
僕はこの急に目の前に現れた荒野を目の前にしてただただ唖然としていた。なんだこれは、超常現象?いや、世界が終わる?……なんにせよ、「玄関開けたらサ○ウのご飯」ならぬ「玄関開けたら広がる荒野」だな。取り敢えず焦っていても仕方ないので僕は玄関から出て外を確認してみることにした。
「…おかしいぞ。僕はアパートに住んでいたはずなんだ…。それがどうしてこんなことに…」
僕の目に飛び込んできたのは見慣れたアパートではなく、銀色に輝く一つの小屋であった。
少し状況を整理しよう。朝起きると周りが荒野で、アパートが小屋になっていて、でも小屋の中は変わらない1LDKだ。一体いつからだろう…。まぁ、起きてしまったことは仕方ない、会社に今日は休むと伝えておくか…。すぐにスマホを手に取り、親友である仲村に連絡をする。連絡をしてから五分と立ないうちに返信が来た。
《リョーカイ!!そーいや、そっちの方地震あったんだって?大丈夫か?アパートが倒壊してんじゃないのか?ボロかったしナ~(笑)》
…ボロいは余計だ。(まぁ本当のことなのだが)しかし、倒壊ならまだ気持ちの整理はついているだろう。でもこの変わり様はさすがに整理が出来ない。僕は落ち着くためにタバコを吸うことにした。部屋の窓を開け、外を見るようにしてタバコを吸うのが僕のスタイルだ。いつもなら気持ちのいい青空と灰色のアスファルトが見えるのだが、残念ながら今日は気持ちのいい青空と茶色い土のセットである。…いやまぁ、これはこれで…いいな。
そんなこんなで少し落ち着いてきた僕はとあることに気がついた。
「そー言えば、ライフラインは大丈夫なのか…!?」
ライフライン。人間が生きていく上でもっとも必要なものである。水、電気、ガス、情報設備…果たしてこの荒野で無事なのだろうか。
まずは水だ。僕は洗面台を覗き込むようにして勢いよく蛇口を捻った。水は期待通り勢いよく出てくれた。しかし僕は覗き込んでいたため、ずぶ濡れになってしまった。…ま、水はオッケーだな。よし、次はガスだ。僕の家はIHではなく、ガスのものなので、ガスは結構重要なのである。これがなければ一貫の終わりである。よし、無事なのを期待して…点火!!念じるようにしていた目を開けてみるとそこにはしっかりと火がついていた。
「よかったぁ…。」
安堵で胸を撫で下ろしながら電気の確認に移った。といっても起きたときにテレビをつけたので無事なのは分かっていたし、情報設備もメールできたので無事である。取り敢えず、ライフラインは無事だということか…。僕は大きく息を吐いた。
起きてから時間がたち、12時になった。
「さて、昼飯でも買いにいくか………ん?店は…」
盲点だった。どこに昼飯を買いにいくのだ。行けたとしても何kmかかるのか。そもそも僕は車を持っていない。万事休すだ。…仕方がない。作るか。僕は家にあった食材でなんとか作り、無事昼飯を食べることができた。
「さぁ、これでまた問題が出てきたぞ…」
その問題とは食料の確保のことである。スーパーやコンビニが無いのならいずれ食料が尽きるのは目に見えている。…そういえば某人気アイドルグループがテレビの企画で農業をやってたっけ…。なら僕もと考えはしたが残念ながらそんな道具も根気もない。どうしたものか…。そうか、ネット通販を使えばいいのか。さすが僕、頭いい!!
「そうと決まれば早速実行だ!!」
僕はネットを開き必要なものをカートにいれて買おうとした。しかしまた重大な事実に気づいてしまった。ここ、届くのか?こんな広い荒野の中にぽつんとある家に届くのか?否、届かない。もはや打つ手がない。
「仕方がない、取り敢えず一週間、今ある物で過ごすか…。その頃には救助が来るだろう。」
半ば諦めたようにそういった僕はこの日をだらだらして終えた。
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