荒野の1LDK

八尾 一護

第1話 平凡な今まで

スマートフォンのアラーム音が鳴り響く。僕はまだ眠たい目を擦りながらアラームを止める。午前5時20分。これが僕の毎朝の起床時間だ。机に置いてある眼鏡をかけて、それからカーテンを開けた。あぁ、気持ちのいい朝だ。

 僕は中野荒太。普通の会社に勤務して、普通に仕事をこなして、普通に生活している。いわゆる平凡な人間だ。そんな平凡な人間である僕は今日も普通に朝起きて、普通にご飯を食べた。そんなとき、とあるニュースが耳に入った。

 『昨日の午後8時15分頃に川部地区を中心として地震が発生しました。川部地区の方は余震に気を付けてください。』

 …僕の住んでいるところではないか。地震があったんだ…。あったかな…?少なくとも僕は8時15分頃はまだ起きていたしそもそも僕は風呂に入っていたはずである。まぁ、いいか、と、呟いて出社の準備をした。……でも、地震なら震度を言うよな…。言わなかったから地震じゃ無いんじゃないか?など考えているうちに出社の時間である6時30分になってしまった。僕は会社から遠いところに住んでいるからこの時間に出ないと間に合わないのだ。さて、ハンカチも持った、財布も持った、鍵も持ったしスマホも持った。これで準備完了、出社するか。僕は張り切って家のドアを開けた。

 そこには目を疑うような光景が広がっていた。





ドアを開けた先は―――――無限に広がる荒野であった。

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