第3話 大きな音
僕の家の周りが荒野になって二日目の朝、耳元でなり響く大量の通知音で目が覚めた。
「だぁぁぁぁぁあ!!うるさい!!」
携帯を取り上げて画面を見る。そこには数百件の通知が来ていた。ゲームにしてはしつこいし、母親からは考え辛いしなぁ…。恐る恐る確認してみると、それはすぐに合点がいった。
「なんだ、<線>と<青い鳥>の通知が来てたのか。焦ったわ~。」
※<線>と<青い鳥>というのは携帯やパソコンで誰でもできる無料情報サービスのことである。ここでは個人に連絡された場合、通知されるのである。儂らの若い頃はこんなの無かったわい、最近の若者は……。
……誰だ?今のは。まぁ、いいか。俺は来ていた通知を片っ端から見ていくことにした。まずは会社の人からの通知であった。
《地震にあったんだって?大丈夫か?早く来いよ~、仕事溜まってるぞ~w》
《先輩、大丈夫ですか!?怪我とかしてないですか!?無事なら連絡してください!!》
《大丈夫かい?地震にあったのは知っているが、なるべく早く帰ってきておくれよ。君がいないと仕事にならないんだよ…。》
等々、いろんな人から来ていた。なるべく早く帰るつもりではあるんだけどな…。この状況ではどうにもならないんだよなぁ…。
ため息をついてから、<青い鳥>の通知を見ることにした。
<青い鳥>の通知は特に心配するようなことも来ていなかったし、寧ろ昨日のドラマの感想などを聞かれていた。知らねえよ、昨日のドラマなんて。見てねぇし、見る余裕ないわ。心のなかでそうツッコミを入れて、少し遅めの朝食を取ることにした。
正午、昼御飯を食べ終わった僕は昨日に引き続き、食料問題について考えていた。
「さてと、肥料や道具などは偶然あったんだけど…。問題は育つかだよなぁ…。」
僕は全く進展しないこの問題に頭を抱えていた。まぁ、進展しないというのは少し語弊があるが、道具などを見つけただけであるので、大差はない。
「そういや、野菜は育てられても、肉や魚は無理だよな………。…………大問題じゃねぇか!?」
今更ながらその事実に気付き、落胆する僕であった。
取り敢えず外に出て土を掘ってみることにした。悩んでいても始まらない!!まずは実行だ!!思い切り鍬を振り上げ、念を込めて降り下ろした。
「おりゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
バキッ!!
清々しいほどの音を立てて………鍬が折れた。突然のことに固まる僕、土に突き刺さる鍬の先。ようやく状況を理解して、抜こうとする。………抜けない。どんだけ深く刺さってるんだ。びくともしない。最悪だ。終わりだ。
「誰か…誰か…誰か助けてくれぇぇぇぇぇ!!」
抜けるような青空に僕の大絶叫が虚しく響いた。
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