【第九話】 自由行動

「これからどうする?」

 華久良の顔には暇だなぁと書いてあるように見えるほど暇暇オーラが全身から出ている。

「どうするもこうするもないだろ?」

 いつの間にか近くに来ていた集が話に入ってくる。

「することはないですし、こちらのこともよく知らないので何をすることもできないのは確かですね。ですが、華久良ちゃんが言ったように暇なのもまた事実ですね」

 優莉の言葉だが、華久良は全身から暇オーラを出してはいるが実際に暇と言ったわけではないのだが、集も想護も本人である華久良さえも疑問には思わなかった。

「いや、その手があった!」

「急になんだよ華久良?」

 優莉の話を聞いた華久良がグデっと机に突っ伏した状態から急に立ち上がったので集がビクッと驚きなんなんだよと聞く。

「ほら、優莉ちゃんが言ったでしょ? 異世界こちらのこともよく知らないって」

「当たり前だろ昨日来たばっかで少し話聞いただけなんだからな」

「そう! つまり私たちはゲームで言うところのチュートリアルが終わったところなんだから、城の人に話しを聞いたり城の探検しよう!」

 華久良が名案! っといった風に言う。先ほどまでの暇オーラは消え失せやる気に満ち溢れた顔をしている。

「おぉ! 確かに暇だし面白そうだな!」

 集も華久良の思いついた意見に同意を示す。

「ソウ兄と優莉ちゃんも行くでしょ?」

 華久良は今にも飛び出して行きそうな雰囲気で想護に詰め寄る。

「ちょっ、華久良鼻息荒いよ……」

 想護は妹が机の上に身を乗り出して顔を寄せてきた華久良に少し引き気味。

「で、ソウ兄も行くよね?」

「いや、今回は遠慮しておくよ、実は昨日はすぐに寝てしまったから風呂に入ってないから風呂に入れないかお願いする予定。丹敷さんはどうするの?」

「私も遠慮しておきます。調査で慣れない魔力操作などを行って疲れてしまって、午後の訓練もありますから少し部屋で一休みしたいと思います」

「えぇー。ソウ兄も優莉ちゃんも来ないの? 集と二人じゃあんま面白くないじゃん! しかたない他の人に声かけて連れて行くか」

「城の人に行って良い所を聞いて迷惑かけないようにね」

 頬を膨らませ不満の声をあげる華久良に最低限の注意をする想護。

「りょうかーい!」

 ビシッと敬礼のマネをしている華久良に本当に大丈夫なのか不安を感じた。

「じゃ、俺らはそこら辺の奴らに声かけて城の探検行ってくるわ」

 そう言って集と華久良は他のクラスメイトたちが集まっているところに歩いて行った。

「では、私も部屋に帰りますね」

 次に優莉も想護に会釈して、部屋から出て行った。

 優莉が部屋から出ていくのを確認し想護は壁際に立っていると言っていたマーガレットに声をかけるために辺りを見回してみれば彼女の綺麗なプラチナブロンドが目に入る。

 先ほどからマーガレットは想護を見ていたのか想護がマーガレットの方を向いたことで目が合った。目が合った瞬間にマーガレットはすぐに顔を背けてしまった。この時のマーガレットの顔が真っ赤なことは顔を背けられてしまった想護にはわからない。

「マーガレットさん」

 想護が近づきマーガレットに話しかけたのでマーガレットは再び想護に顔を向けた。その後すぐに俯いたのは言うまでもない。

「っ! は、はい! な、何かご用事でしょうか?」

――うぅ、大切様のお顔がこんなにも近くに。それに急に顔を背けてしまった私にあの優しい笑顔はまぶし過ぎます。

 想護に顔を向けたマーガレットの目の前にあったのは優しく微笑みかけていた想護の顔。実際は背けて顔は見えないが耳が赤くなっていることやこの広間に来るまでの間の緊張していた様子から心配していたのと安心させようとした笑顔だったのだが、それを見たマーガレットが気づくことはなかった。

「出来たらで良いのですが、お風呂って入れますか?」

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