負け犬共は
私達は檻の中で毎日その光景をずっと見ていて、言葉を失っていた。そして次は自分じゃないかと、他の仲間と共に、死の恐怖を味わっていた。
次ではなかったら明日かも。明日ではなかったら明後日かも。明後日ではなかったら明明後日かも。そうやって震える日々を送っていた。
観客が「ざまぁみろ」と私達に向かって喜びの声を上げていた。その言葉が今でも脳裏にこびり付いている。
その場が狂気―…否、狂喜に満ち溢れていた。あれはあの世の入り口に近い場所だった。
呆然とするまでもなく、淡々と他の仲間も同じように死んでいった。
*
――嫌だ。あんな死に方したくない。
あそこには戻りたくない。あんなこの世の物ではない場所に帰りたくはない。
「捕まえたぞ!」
無骨な男の手が私の肩を掴んだ。男の込めている力は強くて、肩の骨がギリリと痛んだ。
「触らないで無礼者! 私を誰だと思っているのです!」
その手を振り払い、後ろを振り向き、咄嗟に構えた。
彼らはそれぞれ武器を持っていたからだ。武器と言っても鎌やら鍬やら斧。一般的に目にする農具等である。武器と呼べない代物だが、長年培われてきた防衛本能が私を勝手に動かした。
足が止まると、男達は私が逃げられないように包囲する。
――囲まれたわね。
「国家の犬だろう!」
「毛並みの良いだけの駄犬共がっ!」
「一匹残らず殺してやる!!」
「私の娘を返してちょうだい!」
口々に罵声を浴びせられるが、そんなもの右耳から左耳へ流せばいい。無視を決め込み、敵の人数を数える。
六、七、八――……十一人か。なら、まだなんとかなりそうね。
戦うことを知らないたかが民衆に、遅れをとるつもりはない。それに相手は男だけでなく、女もチラホラといる。
女なんかは相手ではない。その手には包丁を持っているが、私にとってはそこまで脅威な存在ではない。其処らの石ころと同じである。
家の中で従順にご飯を作っていればいいものを――。
――大丈夫。確実に殺れる。
「お待ち。その娘なかなかの別嬪だよ」
棒のように細いおばさんが、前に歩み出た。
「だからなんだと言うんだ、ロルダさん」
「あんたらその娘、犯しちまいな。女にとって一番の地獄を見せるのさ。今までの怨みをあの娘の体に刻むんだよ」
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