尻尾を振り
お構い無く。地獄なら三日前に見てきましたから。
私の体に、男の見定める視線が、頭から爪先まで刺されていく。
頭も髭も服装も、ボサボサな不衛生な人にジロジロ見られるのは、気持ち悪いったらない。その邪な瞳の中に私の体を入れるんじゃない。
――なんて下衆なの。
「しかしロルダさん、その、あんたらが……」
鍬を持った男が歯切れの悪そうに言葉濁した。
ロルダと呼ばれたおばさんは「なに、私達は村に帰るさ。邪魔しちゃ悪いからね。後は頼むよジョン」と手を振って、豪快に笑った。
それに賛同するように、他の女も薄く笑って頷いた。女衆はチラリと私の方に目線を向けると、軽蔑した目を向けてきた。目は「ざまぁみろ」と言っていた。
そしてその場から立ち去ろうと、女衆は背を向ける。さっさとこの場から退くつもりらしい。
誰かここに道徳心を持つ者はいないのか。これだから学が無い者は嫌である。
それに私は、誰も無事に帰すつもりはない。それが例え
私を見たものは全員殺さなければ。後で男衆が帰ってこないと気づいた女衆が、私を血眼で探しにくるかもしれない。そうなったらもっと厄介になる。今より沢山の仲間を引き連れて、探しに来るに決まってる。
女衆は闇の中に溶けていく。そして足音も徐々に消え去った。今残っているのは七人だ。勿論、全員男である。
「じゃっ、遠慮なく」
鍬を持った男――ジョンと呼ばれた男がそう言った瞬間、それが合図となった。
背後で私を囲んでいた男二人が、私の腕を掴んだ。
腕の血の流れが止められる。圧倒的な力に屈して、あっさりと後ろに手を回された。 男二人に敵う腕力は流石に持っていない。抵抗するまでもなく、あっさり組み付かれた。
私はジョンと無理矢理対峙させられる形となる。
「猫みたいに、しなやかな体つきだな」
「だがいい女だ。見ろ、娼婦より綺麗な顔立ちしてやがる」
渋い声が背後から落ちる。組付いて来た二人の男のものだ。
「先ずはその忌々しい隊服を剥ごうぜ」
「まあ焦るな。時間はたっぷりあるんだ。おい、もっと明かりをくれ」
何処から若い男の声が飛んでくる。暗すぎて何処にいるのか分からない。ランプの明かりに入っていないから、少し離れた所にいるのだろう。
ジョンが闇に向かってその者を制す。
そしてオレンジ色の光が三つ近づいて来た。闇の中からランプを持っていた三人の男が姿を現す。
ランプがたくさん集まると、流石に明るい。
私はこれで六人の男に囲まれた。
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