最高の最期
尊敬する先輩がいた。
こんな私の面倒もよく見てくれる、優しくて素敵な人だった。
ある夜、先輩と二人で街を散歩していた。
話しながら横断歩道の信号が変わるのを待っていたら、先輩が突然叫んだ。
「危ない!」
先輩が私をドンっと突き飛ばすのと、先輩が歩道に突っ込んできた車に轢かれたのはほとんど同時に思えた。
先輩を轢いた車は少しの間その場にとどまっていた。
けれどやがて、ぶるんと大きく一つ震えて走り去ってしまった。
残された先輩に目をやった。
血がたくさん出てたけど、今すぐ助けを呼んだら助かるかもしれないってくらいの怪我だった。
先輩は、苦しそうな目でこちらを見上げた。
先輩との思い出が、次々脳裏に去来する。
ここには私しかいない。私にしかできないことがあるんだ。
よし、先輩。今助けます。
首をへし折って殺してあげた。
私は先輩を尊敬してる。それはもう、心から。
さっきのだってそう。車に轢かれそうになった後輩をかばって代わりに轢かれてくれた。
それって、最高にかっこいい最期じゃないか。
ここで助かって、将来かっこ悪い死に方をするかもしれないくらいなら。
ここで死んだ方が、先輩は最高な人だったって、ヒーローみたいだったっていう風に、色々な人達の印象に残るに違いない。
良かった。私やっと、先輩に恩返しができた。
先輩に、最高の最期をプレゼントできた。
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