ハモノネズミ

 ハモノネズミ


 人間と同じくらいのサイズのネズミ。全身が体毛が変化してできたありとあらゆる刃物― 包丁、カッター、ハサミ、刀、剣、メス、彫刻刀、斧、鎌、ノコギリ、鉈など― に覆われていることが最大の特徴。

 これらは自己防衛のために進化した結果だと考えられている。


 食べても金属のような味がするだけでお世辞にも美味とは言えないが、警戒心が強く常に「襲われるのではないか」という恐怖心を抱いている。

 誰であれ近づいてくる者にはまず刃物を逆立てる。

 自分達が世界で最も優れた生物なのだと信じて疑わず、決して違う種類の生物と親しくなることはない。分かりあえる可能性のある生物に対しても分かりあおうとする姿勢を見せることはせず、とにかく刃物で殺そうと考える。

 食事中でも、どんなに疲労している時でも、仲間が助けを求めている時でも、とにかく手を離せないような重要なことをしている最中でも、それらを放り出してまで攻撃しに行く。

 より防衛力を強化するためにと、石に身体をこすりつけて自身の刃物を研ぐことに一日の大半を費やしている。


 そんな彼らだが、現在絶滅の危機に瀕している。


 彼らの死因第一位は、「自分の刃物が身体に刺さってしまった」というものである。

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