怒られない方法

どうしよう、どうしよう。


おじいちゃんの大事なお皿を割っちゃった。

そんなつもりはなかったのに、棚の上にあるものを取ろうとしたら、隣にあったお皿を割っちゃった。


おじいちゃん、これをすごく大切にしてたのに。


また同じ失敗しちゃった。

前にもおじいちゃんの大切なものを壊してしまったことがあった。

もちろんわざとじゃなかった。それに、すぐに心から謝った。

だけど、あの時のおじいちゃんは今まで見たことがないくらい怒ってた。

もう怖くて怖くて、怒鳴り声で耳が痛くなって、涙で目がとろけるくらい泣いちゃった。


またあんな風に怒られるなんて絶対に嫌だ。

あんなに怖いのは、絶対に嫌だ。


考えた。

どうしたら怒られないですむかを、一生懸命考えた。

それで、とてもいい方法を思いついた。


台所から包丁をもってきて、椅子に座ってるおじいちゃんの頭に後ろから差し込んだ。

床にうつぶせに倒れたおじいちゃんは、しばらく叫んで手と足をばたばたしていたけれど、そのうち動かなくなった。


これでよし、もうおじいちゃんに怒られることはない。


安心していたら、廊下を歩く足音が聞こえてきた。

しまった、他の家族がやってくる。

おじいちゃんを殺したのがばれたら怒られちゃうだろうな。

でも大丈夫。怒られない方法はある。


包丁をおじいちゃんから抜き、死体を見て悲鳴をあげる家族を次々と刺していった。

怒られる前に殺しちゃえば、怒られないんだから。


家族はみんな、倒れて動かなくなった。

ほっと息をついていたら、呼び鈴の音が家中に響き渡った。


きっとお隣さんだ。

家族全員を殺したのがばれたら怒られちゃうだろうな。

でも、怒られる心配なんてない。


包丁を手にし、玄関に走った。

お腹を深々と刺すと、お隣さんは何が何だか分からない、という顔で横たわった。


これでよし。怒る人はもうどこにも…


いや、待てよ、お隣さんのお隣さんさんとか、そのまたお隣さんとか、そのさらにお隣さんにばれて怒られちゃうかもしれない。


いや、お隣さん達だけじゃない、何かの拍子に世界中の人達にばれたら、世界中の人達に怒られる。


そんなの怖い。絶対嫌だ。

こうなったらやることはひとつだ。


世界中の人達を殺しちゃえば、誰にも怒られない。

そうと決まれば、早速出かけよう。

世界中の私以外誰もいなくするんだ。


あなたのところにも、そのうち行くね。

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