⑧選択肢
同窓会の帰り道、私達3人は同じタクシーで駅へと向かっていた。
明日からは未知なる人生が始まる。
まだ経験した事のない時間。
せっかく手に入れた最高の人生だ、残りの人生も上手く生きなくては……。
そう思っていた矢先だった。
「さて皆様、リルートされた人生は如何でしたか?」
タクシーの運転手が、不意にそう言った。
「……え?」
愛美が小さく呟く。
「リルートされた人生の選択肢は3つ」
狼狽える私達を尻目にタクシー運転手は話し続ける。
「リターン、ステイそしてリルート。皆様はどれを選ばれますか?」
その瞬間一度目の人生と二度目の人生が、走馬灯のように頭の中を駆け抜けた。
亭主関白で面白くもない旦那との生活。
でも、今にして思えば優しい所もあったし、あれはあれで幸せだったのかも……。
なんて思ったりもする。
「リターンとは、元の人生に戻ること。ステイとはやり直した人生をこのまま続けること。リルートとは……もう言わなくてもお分かりになりますよね?」
選択肢は……3つ。
「じゃ、私はステイ。前の人生に何の未練もないわ。旦那は優しいし、子供も可愛い。何よりもずっと夢だったハワイに住んでるのよ。言うことない」
いち早くそう言ったのは夏希だった。
確かに今の人生を手放す理由はない。
「私は……」
次に口を開いたのは愛美だった。
「私だって今の人生がいい。でも……。せっかく貰ったチャンスだから凄く頑張って生きたのに……また戻ったりやり直したり出来るの?そんなのズルい!千花や美季のこと、やっと諦めたのに……」
愛美はそう言って泣き崩れた。
元の世界に残してきた娘と今の世界に存在している息子を天秤にかけるのは相当辛いのだろう。
子供のいない私にだって察するに余りある選択だ。
それじゃあ私は?
捨てるには惜しい今の人生。
でも、今だからこそ思える……結婚も悪くなかった、と。
それならいっそ、もう一度リルートして違う人生を歩もうか。
迷いのない夏希と、泣き崩れたきりの愛美を交互に見比べてみる。
「私……は……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます