⑦再会
会場は前回と同じホテルだった。
……と、過去形で話してしまう事態、少し変なのだけれど。
まぁ、2度目なので仕方がない。
「みやびぃ~っ」
数十メートル先から大きく手を振っているのは、華やかなピンクシフォンのドレスを着た愛美だった。
服の趣味は人生をやり直しても全く変わらないようだ。
「愛美。久し振り」
私は、以前より少しスリムで各段に高いパンツスーツを格好良く着こなしていた。
一度目より、明らかに今の自分に自信を持って愛美を迎えた。
「みやび、有名になったねぇ」
愛美はまるで自分の事のように喜び、顔をほころばせた。
「うん。思ってた以上に良い出来よ。で、愛美は?」
私は少し声のトーンを下げ、愛美の大きな瞳にそう語り掛ける。
すると愛美は、それでなくともキラキラしている目を更に輝かせながら、
「うん。最高」
と笑って顔にクシャリとシワを寄せた。
「お2人さんっ」
そんな私達の肩をトンと叩いてきたのは、紛れもなく3人目の同志、夏希だった。
「久し振りっ!人生楽しんでた?」
夏希は一度目とは違い、大人っぽい青色の細身のワンピース姿だった。
肌は程良く小麦色に焼け、その笑顔は何とも自信に満ち溢れていた。
「夏希も順調そうね」
そんな話をしながら、ビュッフェスタイルの料理をつまむ。
数人の同級生にサインをねだられ、仕方なくペンを取った。
それを見守る夏希と愛美の視線は、妙に穏やかだった。
愛美の2回目の人生は、優しい実業家の男性と結婚。
金銭的不自由は皆無で、今は15歳になる一人息子の高校進学を控え、気を揉んでいるのだそうだ。
一方夏希は、1回目に行けなかった大学に進学。
経営学を学び、大学卒業後数年働いた後家業の八百屋を継いだそうだ。
小さかった地元の商店の横で野菜ジュースのドリンクスタンドを開き大当たり。
5年前に念願だったハワイに店を出し、地元の店は社員に任せ、自分は家族とハワイに住んでいるのだそうだ。
私達は3人共幸せな人生を送っていた。
それはまるで、夢のような25年だった。
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