④rerout

 カーナビの真ん中にデジタルな感じの円が映し出された。


 クルクルと半時計回りをしながら『reroute』の文字が点いたり消えたりしている。


「何か、いつもと違う」


 夏希がポツリと呟いた。


 それでも画面の中の円から目が離せなかった。


 どれくらいの時間そうしていただろうか?


 あっという間だったような気もするし、やけに長かったようなような気もする。


 目の前の画面には『restart』の文字が……。


「え?」


 気が付くと私は、どこかのパソコンの前に座っていた。


 かなり古臭い。

 分厚い割に画面の小さい……そう、多分20年位前に流行ったタイプのパソコンの前に。


「何よコレ……」


 そう呟いた私の隣で、


「……嘘」


と言う声がした。


 声の主は、女子高生。

 私の卒業した高校の制服を来た少女で、彼女は大きな目を見開き、驚いたようにパソコンの画面を只ジッと見つめている。


 あれ?この子……。


 私はその少女に見覚えがあった。


 愛美?


 そう思ってから『否、そんなはずはない』と全力でそれを否定した。


 だって、私の目の前に居るのはどう見たって女子高生。


 幾ら変わらないとは言え、流石に42歳の愛美の変装とは思えない。


 なら、愛美の娘……とか?


 否、そんな事よりも!

 何でさっきまで車に乗っていたはずの私がこんな所に?


 湧き上がる疑問は尽きなかった。


 その時『キーンコーン』と言うチャイムの音がなり『起立』と言う掛け声が掛かった。


 不思議なものだ。

 そう言われれば自然に立ち上がり頭を下げてしまう。


 そして、気付いた。


 ここは学校だ。

 当時最先端と言われていたパソコンの授業をしていた、あの教室。


 そして、この教室に居るのは、さっき再会を懐かしんだばかりの同級生達ばかり。


 無邪気に笑い、ふざけあっているあの当時のままの同級生達の姿。


 まさか。


 そう思いながら再度辺りを見回す。


 あの窓際に居るのはサッカー部の武井くん、教卓の所でしゃべっているのはクラス委員の宮内さんと調理部の立川さん。


 今教室から出て行こうとしているのは……夏希。


 じゃあやっぱり、この隣の少女は愛美?


 ってことは……まさか私も?


 私は急いで自分の足元を見た。


 上履き、白ソックス、紺色のプリーツスカート。

 あとは見なくても分かる。


 私は自分の胸元にあるはずのリボンをギュッと握って確認した。


 そしてそのまま手のひらをほっぺたにあてる。


「ウソーーーっ!?」


 思わず大声で叫んだ。


 夏希が振り返る。

 そして愛美もこちらに顔を向けた。


 否、2人だけではない。

 教室の中に残っていた生徒全員が、一斉に私の方を見た。


 こんな時に何だけど、みんな……若いね!

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