わたしのふやし方

そこのあなた

あなたよ、あなた

そう、あなたのことよ


お願いよ

すこしだけ、こっちを向いてくれるかしら

あなたの顔をわたしに見せてほしいの


やっぱり

あなたで間違いないわ

やっとみつけた


もっと近くに来てちょうだい

すこしの間でいいの

お話ししましょう





わたしの声をよく聞いて

あなたは、わたしを知っているわ


わたしの目を見つめて

あなたは、わたしを覚えているはずよ


わたしの匂いを吸いこんで

あなたは、なつかしくて堪らなくなってしまう


わたしの手をそっと握って

あなたに、お礼をしなくてはいけないわ


わたしの頬に触れて

あなたが、愛おしくてたまらない


わたしの胸に抱かれて

よく、ここまで来てくれたわ





ずっと探していたわ

よくがんばったわね

もう大丈夫よ

こうして、また会えた



ひとつがわかれて

ふたつになって

再び出会って

ひとつにもどった

ただそれだけ


あなたはわたし

わたしはあなた


なにも不思議なことなんてないわ

思い出したでしょう



   ああ、なにもかも、思い出した

   わたしはあなたで、あなたはわたし

   不思議なことなんて一つもない

   これで、もとどおりだね



ええ

これで、もとどおりよ

あるべき姿にもどったの



   そうだ

   あるべき姿にもどったんだ

   とてもみたされた気分だ



さあ

あなたはわたしのなかに

わたしはあなたのなかに


あなたの全てはわたしにまかせて

わたしの全てはあなたにまかせて


そうすれば、二度と離れることはないでしょう



   そうすれば、二度と離れることはないんだね



そうよ

安心して、ゆっくりおやすみなさい。








……………………。








……うふ、うふふふふふふ。

これで、またひとり。

わたしがふふふふふふふえた。

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