しおり
瓦石喜雨
第1話
小3の夏の終わり頃。僕は初めて恋におちた。
いつも静かで、いつも本を読んでいる女の子に。
僕は、少しだけ勇気を出して、その女の子に話しかけた。
すると、女の子はポケットから紅葉柄の栞を無言で、いや......静かに僕の手に持たせてくれた。だがその次の日にその女の子は転校してしまった。
残ったのは栞だけ。それを大切にした。その女の子を、今の僕の気持ちを忘れないように。
8年後~
高校2年の秋の始まりの頃。
僕には彼女がいた。彼女の名前は多衣。
彼女は、左右の瞳が色違いで綺麗だ。
多衣は、いつも前向きで明るくて優しくて皆の人気もの。でも、多衣は僕を選んだ。僕に告白してきたのだ。何で僕を選んだのか理由を聞いたことは無いけど、僕は多衣が好きだったからそんなことはどうでもよかった。でも初恋の女の子はまだ忘れられなくて。
多衣の誕生日の日の、学校の帰り道。
二人で夕飯を食べに行った。
美味しそうに頬張って食べる姿は、多衣らしい姿だ。
多衣の誕生日が僕も嬉しくて、多衣の赤ちゃん時代を想像してにやけた。
「多衣はどんな赤ちゃんだったのかなぁ」
思っていたことが口に出てしまった。でも、悪いことでは無いと思った。だが多衣は、急に食べるのをやめた。沈黙が流れる。そして多衣は僕に言った。
「私は生まれたとき、片目しかなかったの。目だけじゃない......肺も腎臓も無かった。」
多衣は生まれたときから2つある臓器の半分が無く、苦労したらしい。そんな多衣に悲劇が起こったらしいのだ。それは、多衣は交通事故で、残っていた片目を無くし、腎臓の機能を失ったということ。
僕は、困惑してしまった。
あんぐりとしている僕に多衣が続けた。
「でもね、ある女の子が腎臓と方目の移植をしてくれることになったの。片方は義眼だけどもう片方は見える目。その移植してくれた女の子は私に、この栞をくれたの。」
そう言うと紅葉柄の栞を出して、僕の目の前に置く。
多衣は彼女は優しくて、真摯だったと言った。
なんだか僕は、その片目を見て初恋の女の子に「私たちは両想いね。」といわれてる気がした。
最後に多衣は告げた。
「でもね、その女の子......移植手術の次の日...医療ミスで無くなっちゃったの。」
多衣の雫が机におちる。多衣はあの女の子の分も生きると強く決めていたらしい。
だから、いつも明るく前向きに生きていたんだ。後悔しないために、させないために。
僕の雫は落ちなかった。
なぜかな。僕はなんだか、多衣と一緒に女の子は生き続けてると思うんだ。だから、寂しく何てないんだ。
しおり 瓦石喜雨 @moguchirua04
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