第六話「七つ揃ったけど……?」

 一行は最後の玉があるという南の洞窟へと向かっていました。


「そ、そういえばルー君ってトナカイなんだよね?」

 ドンタがルーに聞きました。

「そうだよ。悪い魔法使いのせいで人間になっちゃったんだよ」

「そうなのかよ、じゃあサンタさんのソリ引いてるのってルーかよ?」

 今度はチャスタが聞きました。

「うん。何年か前にお父さんから引き継いで、今は僕が引いてるんだよ」

「じゃあサンタさんを助けてもさ、ルーが人間のままだったらプレゼント配れねえじゃんか」

「あ、そうだった。どうしよ?」

「大丈夫よ、おじいちゃんならなんとかできるわ」

 ラチカが自信満々に言いました。

「そ、そうなんだ」

「でもさ、サンタさん助けたとしてもプレゼントの準備は大丈夫? 世界中の子供達の分を用意するのって結構時間がかかるんでしょ?」

 ニコが心配そうに尋ねました。

「そうだった。どうしよ?」

「もう、そんな事は後で考える! 今は光の玉探すのよ!」




 そうこう言ってるうちに洞窟の入り口に着きました。

「ドンタさん、洞窟のどの辺りにあるかわかる?」

 ルーがドンタに尋ねました。

「ち、ちょっと待って……うーん、いちばん奥だけど、この洞窟地下へ続いててかなり深いみたい」

「どのくらい?」

「え、えと、チャスタと出会った塔の高さより深いくらい」

「ま、まあ行きましょうよ」

 ラチカは「うわあ……」と思いながらそう言いました。

「でもこの先真っ暗だよ? どうするの?」

「大丈夫だよ、僕にまかせて」

 ニコがそう言うとピカッと目が光って洞窟の中を照らしました。

「さ、行こう」

 一行は奥へと進んで行きました。




 しばらくして洞窟の奥に着きましたが、そこは行き止まりでした。

「あれ? 何もないよ?」

「ドンタさん、この辺りなの?」

 ルーが尋ねると

「え、えーとあれ? もっと奥みたい?」

 ドンタは意識を集中した後でそう言いました。

「じゃあ隠し扉でもあるのかな? オイラちょっと調べてみるよ」

 チャスタは辺りを調べ始めましたが、何もなかったようです。


「ねえ、壁にミサイル撃って穴を開けようか?」

「そんな事して洞窟全体が崩れたらどうするのよ!」

「うーん、開けゴマとか言ったら開かないかなあ」


「そんなんじゃ開かんわい」


「やっぱり……え? 今の声って誰?」

 一行が辺りを見回すと

「ここに人が来るのは久しぶりじゃのう」

 体が透けていて白くて長いお髭のおじいさんがいました。


「あの、もしかしておじいさんって幽霊?」

 ルーがそのおじいさんに尋ねました。

「そうじゃ、もう死んでどのくらいになるかの」

「何でここにいるの? もし天に昇れないのなら私が昇らせてあげるわよ?」

 ラチカがおじいさんに聞きました。

「昇れんわけじゃないわい、わしは神様の言いつけでここにおるんじゃ」

「なんで?」

「この先にはあるものが封印されておる。その封印を破られないよう見張るのがわしの仕事なんじゃ」

「あるものって何よ?」

「それは言えん。すまんの」


「ところでおじいさん、光の玉って知らないですか? これと同じものなんです」

 ルーは光の玉をおじいさんに見せました。

「おお、光の玉とは懐かしいのう。わしも生きてた頃に一度使ったことがあるわい」

 どうやらこのおじいさん光の玉の事をよく知ってるようです。

「これがその先にあるはずなんですけど」

「ん、そうなのか? ちょっと待っとれ、見てくるわい」

 そう言っておじいさんは壁をすり抜けて行きました。


 そして

「待たせたのう、たしかにあったわい。いやいや、他の物は封印前に皆外へ出したはずだったんじゃが、あれだけ残ってたのか」

 おじいさんはお髭をこすりながら言いました。

「でもおじいさん、何も持ってないみたいだけど?」

 ルーが尋ねると

「当たり前じゃ、わしは幽霊なんじゃから物は持てんわ。じゃが念力で動かす事はできるので、この壁のすぐ向こう側までは移動させておいた」

「あの、光の玉をこっちにワープさせる事出来ないんですか?」

「それはわしには無理じゃ」

「じゃあどうやって取ればいいのよ?」

「やっぱ壁をミサイルで」

 ニコがミサイルを撃とうとしますが

「やめてくれ。そんなのでは壊れんはずじゃが、万が一壊れたら封印が解けてしまうわい」

「うーん、ワープできる呪文使える人を探して連れてくるか?」

 チャスタがそう言いましたが

「封印の力でそういうのも防いでおるから無駄じゃ」


「どうしよう、全部揃わないとサンタさん助けられないよ」


「ん、どういう事じゃ? もうちっと詳しく聞かせてくれんか」

 ルー達はおじいさんに事情を説明しました。




「なんと、そうじゃったのか。ならいい方法があるぞい。お嬢ちゃんはサンタクロース殿の孫なんじゃろ」

「ええ、そうよ」


「この壁は聖なるものなら通り抜けれるんじゃ。サンタ一族は聖なる血を引く者、お嬢ちゃんなら通れるじゃろて」

「そうなの?」

「そうじゃ。さ、壁に手を当てて念じるんじゃ」

「うん」

 ラチカは壁に手を当てて念じました。

 すると

「わあっ!?」

 ラチカは壁の中に吸い込まれるように入っていきました。




「イタタ、あ」

 壁をすり抜けた拍子に転んだラチカの目の前に光の玉がありました。

「やったわ。これで全部揃ったわ」

 ラチカは光の玉を持って立ち上がりました。

 すると目の前に大きな宝石のようなものが浮かんでいました。


「あれ何? あれが封印されているものなの? なんか綺麗な宝石ね」

「そうじゃよ、あれが封印しているものじゃ」

 おじいさんがラチカの側に来ていました。


「おじいさん、あれってただの宝石じゃないのよね、何なの?」

「……内緒じゃぞ? あれは聖核セイントコアじゃ」

「え、何それ?」

「全ての世界の核となると伝わる物での、あれはそれの一部なんじゃ」

「よくわからないわね」

「まあ、わからんでええわい、お嬢ちゃん達には関係ないものじゃから」




「皆、光の玉あったわよ」

 ラチカが壁から出てきました。

「やったー! これでサンタさんを助けにいけるよ!」

 ルーが飛び跳ねて喜びました。

「で、光の玉ってどうやって使うの?」

 ニコがルーを見つめながら聞きました。

「え、えーと? 七つ集めたら光の道ができるはずだけど」

「そうなの? でも何も起こらないよ?」

「あれ? おかしいな?」

 その時おじいさんも壁から出てきて言いました。


「光の道はのう、一人一つずつ玉を持って念じないと出てこないんじゃ。お前さん達は五人、じゃからあと二人仲間がおらんとだめじゃの」

「ええ!?」

「そんな事お兄さんは言ってなかったわよ!?」


「おそらくあのお方は最後にわしと出会う事が見えてたんじゃろうな」

 おじいさんは頷きながら言いました。

「あれ? おじいさんって物知りのお兄さんの事知ってるの?」

「ん? まあの」


「じいちゃん、あと二人って誰でもいいのかよ?」

 チャスタが尋ねると、

「そんなわけなかろ、ちょっと待っとれ……ブツブツ」

 おじいさんは何か念じ始めました。

「ふむ、ありゃ?」

「どうしたのよ?」


「いやの、あと二人の仲間がどこにいるか探ったんじゃがの」

「どうだったんですか?」

「一人はわかったんじゃがもう一人が見えん? はて、そんなはずはないのじゃが?」

「ええ~!?」


「おかしいのう……?」

 おじいさんは首を傾げていました。

「ど、どうしよう?」

「でもとりあえず一人はわかるんだろ? だったらそいつ探しに行こう」

 チャスタが皆にそう言うと

「その必要はないぞい、六人目はもうじきここに来るから」


 その時ブウウウウン、と音がして天井に黒い穴ができたと思ったら、そこから一人のシスターらしき少女が落ちてきました。


「あ、あの~ここどこですか~?」

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