第四話「絵の中のお姫様 前編」
チャスタが仲間になった一行は西の方のお城へと向かっていました。
「え~と、お城って王様がいるんだよね、サンタさんと仲良しの」
ルーは言いました。
王様は子供の頃からサンタさんと仲良しで、ルーもラチカも何度か会っています。
「ええ、おじいちゃんは王様が一番の友達だって言ってたわ」
「ならちゃんと話せば光の玉をくれるよね」
「そうね。でも王様が持ってるのかはわからないわよ」
「あ、そうか。ドンタさん、わかる?」
「え、えと、もう少し近くに行かないとわからない」
「じゃあ近くに言ってわかったら教えて」
「う、うん」
そして一行はお城の門の前まで来ました。
「ん、何だね君達? 何か用かね?」
お城の門番が近づいてきて一行に尋ねました。
「あの、王様はいますか?」
ルーは門番に聞きました。
「そりゃいるけどさ、それがどうしたの?」
「私はサンタクロースの孫のラチカです。王様にお会いしたくて来ました」
ラチカが門番に言いました。
「え、サンタさんのお孫さん? ……ちょっと待ってて。会えるかどうか聞いてくるから」
そう言って門番はお城へ入っていきました。
そして
「お待たせしました。さ、どうぞこちらへ」
そう言われて一行はお城の中へ入りました。
「へー、お城って広いな、それに珍しいものがたくさんあるや」
チャスタはキョロキョロしながら言いました。
「チャスタ、盗ったらダメだよ」
ニコがそう言いました。
「わかってるよ、もう盗みはしないよ。ミサイルもゴメンだし」
そして一行は玉座の間に着きました。
「おお、ラチカちゃんか。大きくなったのう」
王様がラチカに話しかけました。
王様はサンタさんと同じくらいの歳で髪もお髭も真っ白です。
「ところでサンタは元気かの?」
「えと、王様、実は」
ラチカは事情を説明しました。
「なんと、サンタが?」
「ええ、それでおじいちゃんを助けるためには光の玉を集めないといけないの」
「そうか。しかし城には無いはずじゃがのう?」
王様は手を顎に当てて考えました。
「ドンタさん、光の玉がどこにあるかわかる?」
ルーはドンタに尋ねました。
「え、えーと、なんか可愛らしいお姫様がいる部屋が見えた」
「ん? うちには王子はおるが姫はおらんぞ。王妃はもう可愛らしいという歳でもないしのう」
王様はそう答えました。
「あ、あれ? おかしいな?」
ドンタは意識を集中して念じました。
「お、おかしいな、何度やってもお姫様がいる部屋が見える」
「ドンタさん、調子悪いの?」
ルーが心配そうに聞きました。
「なあ、部屋が見えてるんだろ? だったらその部屋を見つけたらどう?」
チャスタが言いました。
「そうよね。王様。すみませんが城の中を探させてもらっていいですか?」
ラチカが王様に聞きました。
「いいとも。サンタを助けるためじゃ」
こうして一行は城の中を探し始めました。
王様も手の空いてる者に命じてそのような部屋がないか探させました。
そして夕方、皆は玉座の間に集まりましたが
「そんな部屋なかったわ」
ラチカは疲れてその場に座り込みました。
「うん、なかった」
ルーも座り込みました。
「もしかしたらお人形さんとおままごとセットの家かと思ったけど、そんなのもなかったよ」
ニコは細かいところを探していたようです。
「オイラ天井裏とか床下とかも見たけどなかった。隠し部屋みたいなのもなかった」
チャスタは人が普通に行けないような場所を探していたようです。
「ご、ごめんなさい。やっぱ同じ」
ドンタは何度念じてもその部屋しか見えないそうです。
「どうしよう。物知りのお兄さんがここにいればわかるんだろけど」
ルーは考え込みました。
「父上」
「ん? おお、王子ではないか」
そこにこの国の王子様がやって来ました。
王子様は王様が歳を取ってからできた子供なのでまだ若いのです。
「どうした? 何かわかったのか?」
「ええ。もしかすると皆さんが探している部屋は、これではないかと」
そう言って王子は手に持っていた絵を皆に見せました。
「あ! オラが見えたのはこの絵に書かれてる部屋だ!」
「えっ!?」
皆が声を上げました。
「でも絵でしょ?」
「どういうことなんじゃ?」
「はい、実は」
王子様は語り始めました。
ある日旅の商人が一枚の絵を持ってきました。
その絵はただどこかの部屋が書かれているだけでしたが
「この絵は不思議な絵なんです。満月の夜になるとね、絵の中に可愛らしいお姫様が現れるのですよ」
王子様はそんな事あるわけないだろと思いつつも、本当だったら面白いかなと思って商人から絵を買いました。
そして満月の夜、絵を見ていると……。
本当にお姫様が現れました。
「ほ、本当だったんだ。しかしなんて可愛らしい姫だ」
王子様は絵の中のお姫様に一目惚れしてしまいました。
「ん? 口が動いているが」
絵の中のお姫様は何か喋っているようでしたが、声は聞こえませんでした。
それから王子様は満月の夜になるたびに絵の中のお姫様に語りかけました。
お姫様の声は聞こえませんが、どうやら王子様の声は聞こえているようでした。
お姫様は王子様の話を聞いてにこにこ笑ったり、たまには怒ったりと表情を変えていました。
そんなある時、
「君はもしかして、絵の中に閉じ込められているの?」
王子様がそう言うとお姫様は悲しそうな顔で頷きました。
「そうだったのか。でもどうやったら絵の中から出せるんだろう」
お姫様は何か言っているようでしたが、やはりわかりません。
「待ってて。なんとか君をそこから出してあげるよ」
そう言って王子様は皆には内緒でお姫様を絵の中から出す方法を探し始めました。
「という訳です」
「そうだったのか、なら相談してくれればよかったのに」
「信じてもらえるかわかりませんでした」
「信じないわけがなかろう、親が子の言う事を信じないでどうする」
「父上……」
「うーん、これってたぶん絵の中のお姫様が光の玉を持ってるんだよね?」
「そうよね。どうやって絵の中から出そうかしら?」
「あのさあ。それたぶん呪いだと思うからさ、呪い解ける魔法使いでも連れてきたら?」
チャスタが言いましたが
「それはもう試したよ。でもダメだった」
王子様は悔しそうに呟きました。
「そうなのかよ。どんだけ強力なのさ」
「ならさ、呪いかけた奴をやっつけたら?」
ニコがそう言いました。
「でもそいつがどこにいるかわからないだろ?」
「お姫様に聞けばいいだろ」
「どうやって? 声は聞こえないんだろ」
「でも口は動いているんでしょ? だから口の動きを読めばいいでしょ」
「あ、そうか」
そして皆は月が出るまで休むことにしました。
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