第三話「一緒にいてもいいんだよ」

 ロボットのニコが仲間になった一行は次の光の玉があるという北の塔へと向かっていました。


「そういえばドンタさんって、お兄さんのところへ来る前は何してたの?」

 ルーはドンタに尋ねました。

「オ、オラ前はとある町のゴロツキ集団にいたんだ」

「え、嘘でしょ? ドンタさんっていい人にしか見えないわよ?」

 ラチカは信じられないという口調で言いました。

「そ、そう?」

「うん、いい人に見えるよ」

 ルーもラチカと同じ意見でした。

「う、嬉しい。オラ前はあちこちで嫌われて追い出されの連続だったの。でも親分に拾ってもらったおかげでやっと落ち着く場所ができた。でもその町の人からはある人達に出会うまでは嫌われてた」

「ある人達って?」

「た、旅の人達。その人達は皆に何かを気づかせてくれた人達だった。そしていろいろあって親分や仲間達やオラはその人達や町の人を守るために戦って、今は町の自警団やってるよ。親分が団長で」

 ドンタは空を見上げながら語りました。

「親分さんも仲間の皆も本当はいい人だったんだね」

「そうよね」

「あ、ありがとう。本当にあの人達はオラの恩人だ」




「ねえ、あれが北の塔じゃない?」

 ニコが言いました。

 ちなみにニコは歩けますけど小さいので、ドンタの肩に乗って移動しています。

「そうみたいね。ドンタさん、あの塔のどの辺りに光の玉があるかわかる?」

「う、うん。一番上みたい」

「えー、結構高いよあの塔。トナカイのままなら飛んでいけたのに」


「文句言わないの。さ、行きましょ」




 そして塔の中に入り螺旋状の階段を昇って

 ゼエゼエはあはあ言いながらも一行はてっぺんまでたどり着きました。


 そこには女神の像が祀られていました。

「あ、あれ光の玉じゃない?」

 ニコは女神像の胸のあたりに飾られている宝玉を指しました。

「あ、そうね」

「よし、僕取ってくるね」

 ルーは女神像に近づいて光の玉を取りました。

「すみません。サンタのおじいさんを助ける為なんです、持って行きますね」

 ルーは女神像にそう言いました。


「さて、もうここに用はないわね、行きましょう」

 ラチカは皆に言いました。

「うん」

「ルー、あんた光の玉大事に持ってなさいよ」

「わかってるよ、この袋に全部入れて」

 ルーが袋を見せようとすると、


「いただき~!」

 いきなり誰かが現れてその袋をかすめ取って行きました。

「え!?」

「あ、あそこ」

 

 ドンタが指さした先には頭にバンダナを巻いたいかにも盗賊の格好をした少年がいて、袋から光の玉を取り出して見つめていました。

「へえ、これって高く売れそうだな」

「ちょっとあんた! それ返しなさいよ!」

「やだよ~だ、返してほしけりゃオイラを捕まえてみろさ~。できねえだろけどさ。あっかんべー」

 そう言って少年は階段を走って降りて行きました。

「あ、こら! 皆、追いかけるわよ!」

「うん!」

 一行は少年を追いかけて行きました。




 一行は塔の入り口まで来ましたが

「も、もうあんなとこまで行ってる」

 少年はかなり遠くまで走っていました。

「僕に任せてよ。ドンタさん、僕を降ろして」

「う、うん?」

 ドンタはニコを肩から降ろしました。

 すると、


「これでもくらえ!」

 パカッ。

 ボボン!

 ニコの胸が開いたかと思ったらそこからミサイルが発射されました。




「へっ、やっぱ追ってこれねえよな、ん?」

 ミサイルが音を立てながら少年目掛けて飛んできました。

「え、あれって……ちょ、そんなのありか~!」


 ドッカーン!

 

 少年はミサイル攻撃を受けて真っ黒焦げになって倒れました。


「どんなもんだい」

 ニコは得意気に言いましたが、

「ニコのバカー! 光の玉まで壊れたらどうすんのよーーー!」

 ラチカはニコに向かって怒鳴りました。

「あ……ま、大丈夫じゃないかな?」




「光の玉は無事だよ」

 ルーは光の玉が無事なのを確認しました。

「よかったわ、さて、こいつどうしましょ?」

 少年は気絶したままでした。

「う、うう」

「あ、気がついた」


「わあああ! な、なんだよてめえら! ミサイルなんか撃ってくるなあ!」

 少年は起き上がった途端後退りながら言いました。

「あんたが光の玉盗むから悪いんでしょうが!」

「仕方ないだろ! オイラ盗みするしか生きてく術がないんだからさ!」


「でも盗みばかりしてたらいつか捕まって首切られるよ?」

「そうだよ」

 ルーとニコが言いました。

「……そりゃしなくても生きていけるならしないさ。でもオイラさ、これだもん」

 そう言って少年は頭のバンダナを取りました。


「え、それって?」

 少年の頭には鬼の角がついていました。

「そうさ、オイラの死んだ母ちゃんは人間だけど父ちゃんは鬼族なんだよ、これのせいでどこ行っても怖がられたり石ぶつけられたり……オイラ別に何もしてないのに、勝手に嫌われて、誰も助けてくれなかった。だからオイラは」

 皆黙り込んでしまいました。


「これでわかっただろ。それは諦めるから見逃してよな。じゃあオイラもう行くわ」

「ま、待って」

 ドンタが少年を呼び止めました。

「なんだよ?」

「オ、オラも何もしてないのに皆から気持ち悪がられて嫌われてた」

「は?」

「酷い時は石ぶつけられてたり殴られたりして、あちこちでそんなだった。オラはやっと出会えた仲間に助けてもらえたから君よりはマシだったけど、もしそうでなかったらどうなってたか。オラ皆には今でも感謝している」

「で、なんだよ?」

「だ、だから今度はオラが君を助ける」

「……え?」

「君が盗みなんかしないでも生きていけるようにオラが守る」

「あんたバカだろ?」


「たしかにオラは底抜けのバカだよ。でも同じ思いをした人の痛みくらいはわかるつもりだよ。ねえ、オラ達と一緒に来ない?」

 少年は黙り込みました。


「ねえ、ルー、ニコ。どうする?」

「僕は一緒に行ってもいいよ」

「僕も」

 ルーとニコが頷いて言いました。

「そう、じゃあ私もそれでいいわ、で、どうするのあんた?」

 ラチカが少年に聞きました。

「……一緒に行ってもいいのかよ?」

「いいから言ってるのよ」

「そんなふうに言ってくれる人なんか今まで誰もいなかった……う、う」

 少年は涙ぐみました。


「オイラ、オイラ一緒にいていいんだよね? 皆と一緒にいても?」


「そ、そうだよ、いいんだよ」

「う、うええ~ん! ありがとう~! え~ん!」

 少年はドンタに抱きついてしばらく泣き続けました。




「皆ごめんな、もう落ち着いたよ」

 泣き止んだ少年は皆に謝りました。

「いいわよ。じゃあ行きましょうか。あ、あんたそういえば名前は?」

「オイラ決まった名前なんてねえよ。本当はあったのかもしれないけどさ、今まで鬼っ子だのなんだのとしか呼ばれてなかったから」

「あ……ごめんなさい」

「いいよ別に」

 するとドンタがこう言いました。

「じゃ、じゃあさ、オラが名前つけたげる……そうだ、チャスタってどう?」

「チャスタ?」

「うん、いいでしょ?」

「うん、わかった。オイラこれからはチャスタだ」

 少年、いやチャスタは胸を張って言いました。

「いい名前ね、チャスタ」

「チャスタ、これからよろしくね」

「ごめんね、ミサイル撃って」


「いいよもう、皆よろしくな」

 チャスタは頭を下げて言いました。



「さてドンタさん、次はどこへ行けばいいの?」

「ちょ、ちょっと待って。えっと、西の方にお城が見えた。たぶんそこ」

「お城ね。じゃあ行きましょうか」


 こうしてチャスタが新しく仲間になりました。

 そして一行は西の方のお城へと向かいました。

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