第ニ話「何年も何十年も……」

 サンタさんを助けるためには光の玉を7つ揃えて光の道を作ればいい。

 そう物知りのお兄さんに教わったルーとラチカ。

 お兄さんの家で出会ったドンタという光の玉がどこにあるかわかるというゴツイ男が仲間になり、三人で東の村へと向かっていました。




「ねえドンタさん、東の村のどの辺に玉があるかわかるの?」

 ルーはドンタに聞きました。

「う、うん。なんか大きなお屋敷のどこかにあるのが頭に浮かんだ」

「それって偉い人の家だよね。もしかして村長さんかな?」

「そ、そこまでわかんないよ。とにかく行ってみよ」

「うん」




 やがて三人は村の入り口に着きました。

「この村ね、どこにそのお屋敷があるのかしら?」

 ラチカが辺りを見ながら言います。

「た、たぶんあっちだと思う。そんな気がする」

「わかったわ。じゃあ行きましょう」


 しばらく歩いていると、

「こ、このお屋敷だ。頭に浮かんでたのは」

 そこはとても立派で大きなお屋敷でした。

「凄く大きいわね」

「誰のお家なんだろ?」

「だ、誰か出て来た」


「ん、どうされましたか? 家に何か用ですか?」

 出てきたのは中年の男性でした。

「すみません。僕達これと同じ玉を探してるんです。知りませんか?」

 ルーは男性に光の玉を見せました。

「うーん、見たことある気もしますが、家にあったものだったかは覚えてないですね」

「そうですか……」


「ドンタさん、本当にこのお屋敷にあるの?」

 ラチカがドンタに聞きました。

「う、うん。近くに来たからわかった。なんか物置の中みたい」

「物置ですか? そういえばもう長い間整理してないですね。そうだ、その玉があるかどうか知りませんが、よければ探してみますか? もしそれがあったら持って行っていいですよ」

「おじさん、ありがとうございます」


 三人は男性に案内されて庭の隅にある物置へと向かいました。

「あの、このお屋敷っておじさんしかいないんですか?」

 ルーが男性に聞きました。

「ええ。私一人ですよ」

「こんな大きいのに?」

「昔は妻も子供もいたんだけどね……皆天に行ってしまってね」


「あ、あの。ごめんなさい」

 ルーは真っ青になって謝りました。

「ちょっとあんた余計なことを!」


「いいですよ、お気になさらずに」

 男性は手を振って言いました。




「ここがそうですよ」

「うわっ」

 三人は思わず声を出しました。

 物置は普通の一軒家くらいの大きさだったからです。


「さて、鍵はこれだったかな」

 男性が古びた扉に鍵を差し込み、そこを開くと、

「う、凄い、ゲホゲホ」

 中は埃っぽくて汚れていました。


「もう何年入ってないか忘れました」

 男性がそう言います。

「これ、探すの大変そうね」

「オ、オラだいたいの位置わかった」

「どこ?」

「そこの一番下」

 ドンタが指差した場所にはたくさんのガラクタが山積みになっていました。

「見つけたらついでに整理していきましょう、お礼も兼ねて」

「それは助かります。では私は屋敷の方にいますので、何かありましたらそちらへ」

 男性は屋敷へと歩いて行きました。


「さて、まず光の玉を見つけましょ」

「うん」


 とりあえず光の玉を探すため、ガラクタをどかし始めました。

 そして、

「あったー!」

 光の玉が見つかりました。

「これで四つね。さてと、ここ片付けて行きましょ」

「うん」

 三人は手分けして物置を整理し始めました。




「んしょんしょ、あれ? これ何だろ?」

 ルーが見つけたものは写真が入った写真立てでした。

「あれ、この人あのおじさんかな? 他の人は奥さんと子供?」

 そうルーが呟いた時、

「その人知ってるの?」

 どこからか声がしました。


「え、誰? どこ?」

 ルーはあたりを見渡しましたが誰もいないようです。


「ここだよ、君の足元」

「へ? あ」

 そこにあったのは子供がガラクタを集めて作ったようなロボットです。

 喋っていたのはこのロボットのようでした。


「君は?」

「僕は見ての通りのガラクタロボットだよ。その写真に映ってる子に作ってもらったんだ」

「そうなんだ。で、おじさんがどうしたの?」

「ねえ、その人に会ったの?」

「そうだけど? おじさんここに連れてきてもらったんだし」

「……そうなんだ。やっぱりまだ」

「ん?」


「ねえ。僕をその人のところへ連れて行って」

「いいよ。でもここの片付けが終わってからね」

「じゃあ僕も手伝うよ」


 ロボットはそう言って動き出したかと思うと、見た目より凄い力で重いものを運んでいきました。

「あれ、君って動けたの?」


「ううん。僕は今まで体を動かす事ができなかったんだ。でもよくわからないけど、君から何か不思議な力が流れてきて、動けるようになったの」

「え、僕そんな力知らないけど」

「そうなんだ。っと、早くここを片付けよう」



 そして片付けが終わり、

「ロボットさんお疲れ様」

 ルーがお礼を言い、

「しかし凄いロボットね。最初びっくりしたわよ」

 ラチカはまだ驚いていて、

「オ、オラがいた所でもロボットは見たことあるけど、やっぱ凄い」

 ドンタは感心しています。

「ありがと。さ、そろそろ行こうよ」




 一行は屋敷へ行きました。

「うわ、ここも汚いわね」

 屋敷の中に入ると床には埃が積もっており、壁や階段などあちこち傷んでいました。

「おじさん一人じゃ掃除や修理が大変なのはわかるけどさ」

「と、というか、ここって人が住んでる感じがしない」

 ルーとドンタが辺りを見渡して言います。

「そりゃそうさ。だってね……」

 ニコは何か小声で呟いていました。


「おじさーん、どこですかー?」

 ルーが大声で男性を呼びました。

「何か?」

 男性はすぐ近くにいました。

「あ、おじさん、玉はありました。そして物置の整理しておきましたよ」

「それはありがとうございました。玉はどうぞお持ちください」

「はい。あ、おじさん。これ見覚えないですか?」

 ルーはロボットを男性に見せました。

「ん? おお、これは昔息子が作ったものです。物置にあったんですか」

「ええ、それとこれおじさん達ですよね」

「こ、この写真は。これも物置にあったのですか?」


「ねえ、もういいでしょマー君のパパ」

「は?」

 男性は辺りを見渡しました。


「僕だよ、マー君に作ってもらったロボットだよ」

「え、喋ってる!?」

 男性はロボットを見て声を上げます。


「あの、もういいって?」

 ルーはロボットに聞きました。

「このお屋敷にいた人は全員食中毒で死んじゃったんだよ。パパが買ってきたお魚が原因でマー君もママも使用人さん達も、そしてパパ自身も」


「……え!?」

 三人共その言葉を聞いて驚きました。


「でもパパは皆を死なせてしまったって自分を責め続けているんだ。そしてずっとお空に昇れないで、何年も何十年もここにいるの」

「そうだよ……私は皆を、死なせてしまったのだ」

 男性は膝をついて泣き出しました。


「ねえパパ。もういいでしょ、もう充分でしょ。お空でマー君が泣いてるよ。早く行ってあげて」

「……しかし」


「あーっもう! だったら向こうに迎えに来てもらうわよ!」

「は? 迎えに?」

 男性はラチカを見上げました。

「私これでもサンタクロースの孫よ。それじゃあ……まだ早いけどクリスマスプレゼントよ!」

 ラチカは手を天にかざしました。


 するとどこからか優しい光が差し込み、


「あ……?」

 男性の前に写真に写っていた女性と男の子が現れました。

「……すまなかった。私が特売でフグなど買ってこなければ」

 男性は涙を流しながら謝りました。


「もういいのですよ、あなた」

「パパ、もういいよ。今年こそ皆でクリスマスパーティしようよ」

 女性と男の子、男性の妻子がそう言いました。

「……ありがとう」


 男性がそう言うと三人は光に包まれ、そして天に昇っていきました。


「よ、よかった」

 ドンタが涙を流しながら言い、

「あれ? 私ただ幻を見せようとしたつもりだったんだけど? なんで?」

 ラチカが首を傾げて言います。

「ラチカちゃんにも自分自身でも知らない力があるんだよ」

「そうなのかしら?」


「マー君、よかったね……」

 ニコが空の上の友達に向かって言いました。




 そして、

「ドンタさん、次はどこへ行けばいいの?」

「う、うーん、北の方に塔が見えた、そこにあると思う」

「じゃあそこへ行きましょう」


「あのさ、僕も連れて行ってよ」

 ロボットが言いました。

「え、最後に悪い魔法使いと会うけどいいの?」

 ルーがそう尋ねますが、

「いいよ。ここにいても寂しいし。それに皆と旅したくなったんだ」

 ロボットはそう答えました。

「うん。じゃあこれからよろしくね、ロボットさん」

「あ、僕の名前はニコって言うんだ。マー君がつけてくれたんだよ」

「わかったよ。じゃあニコ、よろしく」


 こうしてロボットのニコが新しく仲間になり、四人は次の玉があるという北の塔へと向かいました。

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