第一話「光の玉を集めよう」
黒フードの男に攫われたサンタのおじいさん。
そして人間にされたトナカイ。
これからどうなるのでしょうか。
「え、え、どうしよ~?」
トナカイはどうしていいかわからなくなっていました。
「あ~もう……そうだ! 近所に住んでいる物知りのお兄さんに聞いてみよう!」
そう言ってトナカイは外へ行こうとしたその時、部屋のドアが開いて誰かが入ってきました。
「おじいちゃんいる~?」
それは短い黒髪の、歳は十一、二歳位の女の子でした。
「あ、ラチカちゃん」
この女の子はサンタのおじいさんの孫でラチカといいます。
「え、あなた誰? なんで私の名前を?」
「僕だよ、ルーだよ」
どうやらトナカイの名前はルーというようです。
「はい? え?」
ラチカは訳がわからず戸惑っていました。
「あのね、実はおじいさんが」
トナカイのルーはさっきあった事を話し始めました。
「おじいちゃんが攫われた!?」
「うん、だからどうすればいいか物知りのお兄さんに聞きに行こうと思って」
「なら私も一緒に行くわ! と、その前に」
「ん、何?」
「ルー、服を着なさい。あなた今人間なんだから裸でいたらだめよ」
ラチカはルーをじっと見ながら言いました。
「えー、いいじゃん別に」
「だめ、おじいちゃんが昔使ってたのが奥のタンスにあるから持ってくるね」
ラチカはそう言って服を取ってきてルーに着せました。
「うん、なかなか似合ってるわね」
「そう?」
ルーは首を傾げていました。
「ええ、それじゃ早く行きましょう」
こうして二人はその物知りのお兄さんのところへ向かいました。
「はあ、はあ、着いたわね」
そこは大きめの山小屋でした。
「早く中へ入ろ」
二人はドアを開けて中に入りました。
「お兄さーん! いますかー!」
「やあ、そろそろ来ると思っていたよ」
そう言ったのは見た目は二十代くらいの、眼鏡をかけた男性でした。
「あの、大変なんです! サンタのおじいさんが攫われたんです!」
「うん知ってる。君がトナカイのルー君だって事も」
お兄さんはすまし顔で言いました。
「いつもなんでも知ってますね? なんでわかるの?」
「秘密。それよりまず座ってお茶でも飲んで。それとお腹すいてたらそれ食べていいよ」
お兄さんは二人にテーブルの上にある料理を勧めました。
「うん。あれ? その人誰?」
よく見るとお兄さんの反対側にゴツイ男が座っていました。
「オ、オラは」
「彼はドンタって言うんだ」
お兄さんは彼を指してそう言いました。
「そうなの。ドンタさん、僕はルーです」
「私はラチカよ」
「え、えーと?」
お兄さんは何やら戸惑っているドンタの近くに行き、耳打ちしました。
「え、うんわかった」
「えっと?」
ルーが首を傾げていると
「ああ、ごめんごめん。彼は遠いところから来たからあまりこの辺には慣れてないんだ。それよりサンタさんの事だけど」
「おじいちゃんがどこにいるかわかるの?」
「ああ、サンタさんは悪い魔法使いの家にいるんだよ。ただそこはとても険しく高い山のてっぺんにあってね、とても普通に登っていけるような場所じゃないんだよ。それともし空を飛んでいけたとしても途中で弾き返されるんだ」
「じゃどうすればいいの?」
ルーが尋ねるとお兄さんが言いました。
「光の道を作ればいいんだ。まずはこれを見て」
お兄さんは袋から綺麗な三つの宝玉を出しました。
「これは光の玉と言ってね、これを七つ集めるとね、光の道ができてどこでも好きなところへ行けるようになるんだよ」
「え、凄いわねそれ!」
「オ、オラそれの事、絵本で読んだことあるような?」
ドンタがそう言って首を傾げます。
「大昔の人はよく光の道を使ってたからね。たぶんそれがお伽話として伝わってたんだろね」
「それがあと四つあればいいんですね、どこにあるんですか?」
「ひとつはここから東へ行ったところの村にあるよ。後はドンタがわかるよ」
「え?」
ルーとラチカはドンタの方を向きました。
「彼はそういう力があるんだよ」
「オ、オラも今初めて知った」
どうやらドンタ自身も知らなかったようです。
「君は光の玉を見たことなかったから、その力に気づかなかったんだよ」
「そういうものなの?」
「そうだよ。さあドンタ、この玉を見て念じて。そうすれば他の玉がどこにあるかわかるよ」
「う、うん」
ドンタは玉をじっと見つめました。
「あ、あっちこっちにこれと同じものが見えた」
「その場所を彼らに教えてあげて。そして一緒に行って手助けしてあげて、もう一つの眠っている力で」
「う、うん」
「ドンタさん、よろしく」
こうしてトナカイのルー、サンタさんの孫娘ラチカ、そしてドンタは東の村へ向かいました。
「僕が直接手出しできれば簡単なんだけどね。皆、頼んだよ」
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