第十六話 召喚術士と姫騎士の姉妹喧嘩がはじまりました
街道から少し外れた草原で、二人の少女が向かい合う。
一人は小さな体に黒いマントと三角帽を纏った金髪の少女。
もう一人は栗色の髪をした赤白鎧の少女。
クリムとブリュンヒルデだ。
二人の間は10メートル程か、その距離を最初に詰めたのは赤白の戦乙女であった。
「速いな」
腕を組み、見守るリイトが呟いた通り、重厚な鎧に盾と剣を装備している割に、その初動は速い。だが、数歩駆けた所で強制的に足を止められる。
「土精よ」
クリムお得意の精霊召喚術であった。草地が隆起し、次々と壁が現れる。
ブリュンヒルデは速度を落とさぬまま、鋭いステップでそれを避けると再び走りだした。
「風を呼べ」
ごお、と突風が吹いた。遠巻きに眺めるリイト達でさえ、思わずたたらを踏むような暴風だ、まともに受ければ重鎧を着込んだ騎士ですら吹き飛ばされるだろう。だがそれを、斜めに構えた盾の裏に屈んで隠れたブリュンヒルデは、地面に突き立てた剣で堪える。
「絡め取れ、茨の女王」
暴風が止まぬ内に這い出した茨がブリュンヒルデのブーツへ絡みつく。地面から引き抜いた剣で茨を切り裂き立ち上がるものの、追撃はすぐそこまで来ていた。
「騎士の剣風」
斬撃の嵐が風に乗り、舞い上がった草葉を千々に刻む。
「やはり、近付くことも困難か」
「それはそうでしょう、我が国で騎士の廃れた理由が召喚術士の台頭なのですから」
「ですが、そう簡単に行きますかな?」
一方的な決闘を弛緩した空気で見守るリイトとドニに、ギルベルトが疑問を投げた。
「お嬢様はこれまで、どんな騎士よりも訓練を積み重ねて来られた。女性ゆえ力は足りませんが、それを補う技術はとても十五の娘とは思えぬ程ですぞ」
ギルベルトの言葉通り、巧みな盾捌きで剣風を受け流したブリュンヒルデが再び走りだす。まさか凌ぎきれると思っていなかったのか、驚くクリムはもはや目の前だ。
「疾ッ――」
短く息を吐き、剣を振るう。
クリムは石柱を生み出しそれを止めようとするが、柱は半ばまで断たれ、砕け折れる。風精を喚び出し後方に逃れるも、ブリュンヒルデはすぐに追い縋ってきた。
「脇が甘いわ!」
クリムがカウンター気味に放つのは、押し固められた土の弾丸だ。風の後押しを受けて飛翔したそれは鎧に守られた脇腹を叩くと、ブリュンヒルデを大地に転がす。
ブリュンヒルデは危なげなく受け身を取り立ち上がるが、彼我の距離は再び数メートル程離れてしまった。それでも走りだそうとしたブリュンヒルデだったが、ふと自分が汗をかき過ぎていることに気付くと同時、周囲の異変を察知した。
「火傷させない程度に火精を使うのは、骨が折れるのよね」
クリムヒルトの精霊召喚術だ。彼女は火精を喚び出し、また水精も利用することで、ブリュンヒルデの周囲だけを擬似的なサウナに変えてしまったのである。
「ふざけた真似を!」
猛烈な暑さで体の動きが鈍る。だが、この程度で戦乙女は止まらない。クリムに詰め寄り剣を振るうが、精彩を欠いた一撃は木の葉のように風に舞うクリムへは当たらなかった。
ここまでの攻防で、ブリュンヒルデは姉が手を抜いていることに気付いていた。召喚術には詳しくないが、
(ついに、喧嘩でも勝てなくなってしまいましたのね)
自分にもはや勝ち目はない。
このまま無為に剣を振り続けることに、どれだけの意味があるだろう。
(でも――)
唇を噛み締め、盾と剣を握り直す。
大地を蹴り、愚直に前へと踏み出す。
腕を振り、剣を薙ぐ。
盾を構え、剣風を散らす。
「あの夜に誓いましたもの!」
思い出すのは、あの日の事だ。もう一度、姉を追いかけると決めた。決して諦めないと誓った。
だから――
(せめて、本気の一撃くらいは引き出してやりますわ!)
ブリュンヒルデは剣戟を身に受けること覚悟で、クリムへと盾を投げつけた。
「なっ!?」
驚き、慌てて風で打ち払う。
右から左に吹き飛ばされたカイトシールドが、その名の通り風を受け舞い上がる。再び正面へ目を向ければ、盾に気を取られた一瞬の内にブリュンヒルデが消えていた。
「何処に――!?」
殺気を感じ左を向けば、そこには剣を振り上げる妹の姿。
クリムが風精を喚んで盾を吹き飛ばすと読み、その通りに吹いた突風に乗って回りこんだのである。
そして、その間隙をついて放つのは、殺気を込めた本気の一撃。
これまで手加減していたのはブリュンヒルデも同じであった。姉を追放すると宣ったが、憧れの姉を殺す気など毛頭ない。これまではどれも、寸止めできる勢いで打ちかかっていたのだ。
だが、この一撃だけは違う。もしクリムがこの一撃を防げなければ、ブリュンヒルデは姉を失うことになる。それでも、ブリュンヒルデの実力では、こうでもしないとクリムの本気を引き出せそうに無いのだ。
(お姉様は、努力の方向音痴と言うでしょうね。でも、それがわたくしですわ)「それが決して諦めない女、ブリュンヒルデ・バランタインですのよ!」
剣を振り上げたブリュンヒルデの本気に、クリムの思考が一瞬止まる。まさか妹が、本気で自分を殺しに来るとは思っていなかったのだ。
そしてその一瞬が、彼女から余裕を持って対処する時間を奪った。残された刹那で反射的に選んだのは、怪人の攻撃を何度も防いだ、剣にして絶対の盾。
「巨兵の剣!」
二人の上空に巨大な剣が現れる。
重力に引かれ落下する剣先は、彼我の距離が近すぎるためか、まっすぐにブリュンヒルデの頭頂部を指している。
「お嬢様!」
敬愛する主に巨大な剣が突き立とうとする瞬間、焦燥と絶望に顔を歪め叫ぶギルベルトはそれを見た。
それは、風をも越えるスピードでブリュンヒルデを攫う蒼い光だ。
轟音が響き、巨剣が大地へ突き刺さる。
土煙が上がり、剣が地面にめり込んだ分の土砂が周囲へ巻き上げられた。
至近距離に召喚したため、大地を叩く衝撃に巻き込まれたクリムがごろごろと転がった先、目を回す彼女を見下ろすのは、抱きかかえられた妹と蒼い姿の英雄だった。
「助かったわリイト。おかげで私は泥まみれだけど。けほっ」
「最初は君が斬られそうだったから変身したんだがな。間に合ってよかった」
ほっと胸をなでおろし笑い合う二人の下に、ギルベルトとドニ、騎士団の団員たちが駆け寄ってくる。
「ブリュンヒルデ様!」
「バランタインさん、大丈夫ですか?」
特にギルベルトを始めとした騎士たちの顔は真っ青だ。まさか領主の娘姉妹が本気で殺しあうとは思ってもいなかった。
「大丈夫よ。ブリュンヒルデも大丈夫? ごめんなさい、本気で来るものだからつい……ブリュンヒルデ?」
長身のリイトに抱え上げられたブリュンヒルデの顔は、身長の低いクリムからは覗えないが、体を縮こませたまま動かない妹の様子はどうもおかしい。確かに巨剣に頭から串刺しにされかけたのだから、恐怖で身が竦むのは当然であるが、それにしたって彼女は騎士だ。危地を脱した今になっても声一つ上げないのは、どうにも違和感がある。
「大丈夫か?」
変身を解除したリイトが、抱きかかえたまま彼女の顔を覗き込んだ。
「きゃっ」
「きゃ?」
バランタイン家の当主を目指し、騎士団団長として訓練を積んできた彼女にあるまじき乙女チックな悲鳴に、クリムとギルベルトを含む団員達がポカンとした表情を向けた。
「どこか痛むのか?」
そんな空気を意に介さず、純粋に心配したリイトが更に顔を近づけると、ブリュンヒルデはもじもじとしながら口に出す。
「あの、大丈夫ですので、そろそろ降ろして頂けると……」
「む、済まない」
地に足をつけてからも、赤白の鎧をガチャガチャ言わせながらクリムの妹は体をくねらせている。不思議そうに首を傾げるリイトを見る翡翠色の瞳は潤み、普段は毅然としているはず表情は、蕩けきって真っ赤であった。
「アンタ、マジなの……?」
「ああ、春がきたのはクリムヒルト様ではなく、ブリュンヒルデ様であったか……」
クリムとギルベルトの呟きは、なんとも締まらない空気の中に溶けて消えた。
◆
「本日のお茶は、エルガルシア産のハーブティーでございます」
「二級品じゃない」
「申し訳ありません。騎士団の予算にも限りがありまして……」
「いえいえ、お気遣いだけでも結構ですよ」
薔薇騎士団詰め所の応接室にて、出されたお茶に文句を言うクリムと、それをフォローするドニの横では、なんとも居心地の悪い空間が作り出されていた。
「さあリイト様、粗茶で申し訳ありませんが、ぜひお召し上がりくださいまし!」
「お、おう……」
ずずと紅茶を啜るリイトに顔をしかめるのはクリムばかり。下品と取られかねない所作も、熱に浮かされる少女には素敵に映るらしい。ブリュンヒルデはきゃいきゃい黄色い声を上げている。
「まあ! なんて飲みっぷり! やはり強い男性は、お茶の飲み方も人と違いますのね!」
「そういう訳では無いと思うが……」
リイトは隣に座って顔を近づけてくるブリュンヒルデから目をそらし、クリムに向けた視線で助けを求めるも、この世界に来てからの相棒は鼻を鳴らして顔を背けてしまった。
捨てられた子犬のような顔をするリイトにドニは苦笑を一つ、不機嫌そうなクリムに水を向ける。
「バランタインさん……いえ、ここではクリムヒルトさんの方が良いですかね?」
「クリムでいいですよ、ドニさん。気になるのは調査のことでしょう?」
「ええ、詳しい事情は知りませんが、今は屋敷に居る人物の所為で、クリムさんが自由に動けないというのは理解しました。ですので、僕一人でも街の中を探索させて貰えませんか?」
「それは良いですけど、
「ええ、調査の前に何か気付くところがないか、簡単に調べたいだけですので」
「それでは、案内の者をお付けしましょう」
そう言うギルベルトの提案を、ドニは申し訳無さそうに固辞する。
「先入観のない状態で街を見て回りたいのです。駄目ですかね?」
「ドニさんがそう言うなら。いいわよね、ギルベルト」
「お嬢様がそう仰るのであれば、私めに否やは御座いません。騎士団が見回っていますので治安は保証致しますが、目の届かないところも御座います。十分ご注意ください、ガーラント様」
「ありがとうございます。それでは、日が暮れる前にはここに戻ってきますので」
「ええ、こちらの問題が片付いたら、すぐに調査をしましょう」
クリムの言葉に一つ会釈すると、ドニは薔薇騎士団の詰め所を後にした。
残ったクリムはお茶を飲みながら、妹に絡まれてあたふたするリイトを横目で観察していた。
するとそれを見咎めたのか、すすと寄ってきたギルベルトが小声で耳打ちする。
「婚約者ではないと仰られましたが、やはり気になるようですな」
思わず紅茶を吹き出しギルベルトを睨みつけると、彼はなんとも言えないニヤニヤ顔でこちらを見ていた。ともすれば不敬にあたる態度であるが、幼い頃から面倒を見てくれていた老執事相手では分が悪い。
「別にそんなんじゃないわよ、リイトは私の協力者で護衛ってだけ。仲間の色恋にまで口は出さないわ」
それより、とクリムが続ける。
「マルティバはウチに何の用で来たわけ? 見合いから抜けだした事で何か言ってきてるなら、家格を持ちだして黙らせてやりなさいよ」
「それがですな、奴めバランタイン領を復興させるための調査をしたいなどと言って、怪しげな術者達を領都に連れ込んで来たのです。旦那様がそれを許可されたものですから、今や奴らが我が物顔で街を闊歩する始末でして」
「はぁ!? 何やってるのよあのお父様は! いくら召喚術に疎いからって、身元の知れない召喚術士を領都に入れるなんて」
ピルケの街に不法侵入した挙句、勝手に住み着いた自分の事を棚に上げた発言であるが、召喚術士は先の戦闘でクリムが見せたように、並の騎士では歯が立たない程の戦闘力を持つ。そんな者を易々と街に入れるなど、防衛意識が欠如しているとしか思えなかった。
「それには概ね同意致しますが、あまり旦那様を責めなさるな。原因の一端は、クリムヒルト様にもあるのですぞ」
「う……」
バランタイン伯がマルティバに付け込まれている原因の一つは、帝都で召喚術に明け暮れ、連絡一つ寄越さなかったクリムにもあった。まさか父がブリュンヒルデを後継にする事に、そこまで否定的だったとは思わなかったのである。
「勿論、原因の多くは旦那様を諌められなかった私達にあるのですが……」
そう言って肩を落とすギルベルトは、心の底から後悔をしているようであった。それを感じ取ったクリムは、主の乱心にそこまで心を痛める家臣達の存在を有り難く思い、同時に今まで一人で苦労させてしまったブリュンヒルデへの罪悪感を募らせる。
「ブリュンヒルデ、あのね……」
と、妹の方を振り向けば、
「はい、リイト様。あーん」
「あ、あーん」
アホ面晒してリイトにお茶菓子を食べさせている妹が居た。
「アンタねぇ! 私が折角謝ってやろうってのに、なにバカップルみたいな事してんのよ!」
「そんなカップルだなんて、嫌ですわお姉さまったら! うふふふふふふ」
「気持ち悪っ! もうやだぁ、私の妹はこんなんじゃなかったのにぃ~」
全身に立つ鳥肌を押さえるクリムに、リイトが哀れみの表情を向ける。その目は頭のおかしい妹を持つ姉への同情だった。彼の妹は品行方正でとても良く出来た娘であったから、尚更。
「口いっぱいにスコーン詰めてその目すんの止めなさい!」
クリムは溜息を吐くと、妹を無視してギルベルトに告げる。
「こんな状況を放って置けないわ。調査のために来てるドニさんに悪いし、屋敷に戻ってお父様と話をつけるわ」
「おお! そうして頂けますか!」
「当たり前でしょ。召喚術士である前に、私はバランタイン家の長女なんだから」
◆
二人が訪れたのは、領都の中央に位置する巨大なお屋敷だ。その広さは、庭だけで二人の住んでいた屋敷が、何件か収まりそうな程である。
「本当にお嬢様だったんだな……」
「何よ、信じてなかったの?」
「そういう訳ではないが、俺の常識を超えていて、驚いた」
正直、この世界に来て召喚術を初めて見た時よりも驚いている程だ。狭い日本ではこんな屋敷、まずお目にかかれない。「英雄ロボの格納庫より広いぞ」などと考えていると、二人を見つけた衛兵と数人の使用人達が慌てて駆け寄ってきた。
「おかえりなさいませクリムヒルト様! シューゲル様から話は聞いています。さ、お連れの方も中へどうぞ」
「ありがと。お父様は居る?」
「はい、旦那様はすぐに会われるとの事ですが、クリムヒルト様のご支度は……まさかそのお召し物のままで?」
クリムの服装は旅の間着ていた服に、いつものマントを羽織ったままだ。帽子は屋敷に入る時に脱いで小脇に抱えているが、とても伯爵令嬢とは思えない装いである。
「ちょっと話をするだけだから問題無いわ」
「そ、そうですか……」
顔を引き攣らせる使用人を無視すると、クリムは及び腰になっているリイトの袖を引く。
「こっちよ、リイト」
「う、うむ……」
すれ違うたびに頭を下げる使用人達に気後れしたのか、おっかなびっくりクリムの後についていくリイトである。普段の勇気もこういう場所では役に立たないようであった。
クリムは案内しようとする使用人を断り、勝手知ったる自分の家とばかりに上等な絨毯の上をすたすた歩いて行く。長い廊下と幾つもの部屋の前を通り過ぎ、辿り着いたのは屋敷の最奥、バランタイン伯の執務室であった。
クリムは重厚な木の扉をなんの気負いもなくノックすると、来訪を告げる。
「お父様、クリムヒルトが帰ってきたわよ」
「入りなさい」
軽い挨拶に対し、帰ってきたのはなんとも重々しい男性の声だった。
扉を開けた先で最初に目に入ったのは、上等な木材で作られているであろう、年季の入った執務机。幾つもの書類が積まれた机を取り囲むのは、分厚い本が並べられた本棚だ。そしてその中央に座る初老の男性こそ、バランタイン家現当主、ヴォーダン・フォン・バランタインその人である。
「久しいな、クリムヒルト」
瞳こそ娘と違い焦げ茶色だが、皺が刻まれてなお精悍な顔立ちと鋭い目つき、短く刈り込んだ栗色の髪は、ブリュンヒルデとよく似ていた。肩幅は広く、筋肉質な体型をしている。リイトの目は、バランタイン伯ヴォーダンに武術の心得があることを見抜いた。
「久しいな、じゃないわよ。得体のしれない術士を領都に入れるなんて、正気なの?」
「その言葉遣いは帝都に行っても治らんか。して、そちらの御仁は何者かな?」
「こっちはリイト。私の研究に協力してくれてるの。それより質問に答えて」
「バランタイン領の為に必要な事だ」
クリムの質問に対する答えは素っ気ないが、乱心しているという割に受け答えははっきりしている。
「まあ座りなさい。リイト殿もな」
応接用のソファセットを示され、リイトはおずおずと、クリムは渋々といった様子でそこに座る。
対面に腰掛けたヴォーダン伯は、値踏みするようにリイトを睨めつけると、クリムに向き直って口を開いた。
「何故見合いを断った」
「いきなりそれ? そんなの嫌だからに決まってるでしょ」
「お前が婿を取り、次期当主となるのはバランタイン家の為なのだ。何故それが分からん」
「分かってないのはお父様でしょ。あんな小悪党の言葉を信じるわけ?」
それはリイトにとっても疑問であった。その理知的な瞳からは、とても小悪党に騙されるような人物には見えない。
「小悪党か。確かにマルティバは信用ならん」
「じゃあ、なんで……」
「クリムヒルト、お前は神の声を聞いたことがあるか?」
「はぁ? 私は
クリムの怪訝な口調に、ヴォーダンは憐れむような溜息を一つ吐き、心から娘を案ずる瞳で彼女を見返した。
「ならば、そう思うのも仕方あるまい」
「まるで神の声を聞いたことがあるような口ぶりね」
「そう、私は偉大なる神の声を聞いたのだ」
小馬鹿にしたようなクリムの言葉にも苛立ちを見せず、聞き分けのない娘を諭すような声で言うヴォーダンの瞳に、リイトは一欠片の狂気を見出した。
その瞳は、狂信者のそれだった。
「いいか、クリムヒルト。バランタイン領は間もなく、聖地となるのだ。そのためには召喚術士であるお前と、マルティバの力が必要なのだ」
「聖地って、何を言って……」
「クリム、気をつけろ」
突如リイトが立ち上がり、エイユウギアを構える。
それと同時、どこからとも無く邪竜帝国の
闇から溶け出るように現れた戦闘員を一顧だにせず、ヴォーダンは言った。
「竜神ファブニール様は、間もなく降臨する。そしてお前は、竜神の巫女となるのだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます