第九話『魔王』

「ヒビキちゃーん、集めてきたよ〜!!」

とカナデが言った。


ぼくとカナデが枯れ木を集めて戻ってきた。

「火を起こすの??」と僕が聞く。

「うん」とカナデが応える。


「ヒビキちゃんがつけてくれるよ!」

というカナデ、みんなが暖まれる位置に枯れ木を置く。


「ヒビキちゃ〜ん!お願い!!」

「は〜い!」

と、ヒビキさんがやってくる。料理の準備をやっていたようで、手を拭きながらこちらに向かってくる。


「ちょっとまってね〜」

と言いながら、枯れ木に手をかざす。


「ファイヤー」

と、ヒビキさんが呪文を唱え、枯れ木に火が付き、焚き木となった。あたりが明るくなり、キャンプファイヤー感が一気に増す。


「おぉぉぉぉ!魔法だ!!」

と僕が喜ぶ。

そう、それは『ザ・異世界』だった。


「う~ん、素晴らしい!」

と、ヒビキさんの魔法を見て言う僕。

うん、ほんとに異世界にやって来たんだな、と僕が思う。


「なに言ってるのよ、変なコータ!!」

と、笑う、活発少女カナデ。


「どうぞ」

と、ヒビキさんにお皿を渡された

そして、炎を囲みながら、ごはんを食べる僕ら。


「これは!!」

と、僕はヒビキさんにもらったお皿をのぞいて言う。


「カレーだ!!」

僕のテンションが上がる!!カレー好きってなんでヒビキさん知ってたのぉぉ、と言いたいところだが、ギリギリのところで、心の中で思い止めた。


「カレー??」

カナデが不思議そうにこちらを見ている。

「香辛料煮込みよ??これ」

と、カナデが言う。

そう、それがカレー。

インドの香辛料煮込、それがカレー!!


そして、僕は、カレーを食べる。

「うまー!!カレーうまー!!」

と、僕はパクパクと食べる。うん、僕はこの世界でもやっていけそうだ。ごはんが美味しければ、どこでも問題ナシ!!ヒビキさんラブ!


「そう、よかった!」

と、手を胸に持ってきて、可愛らしく、微笑むヒビキ。


そのまま、僕は夢中になって食べ続ける。

ある程度、落ち着いたところで、スプーンを動かしながら聞く。


「ところで、この旅の目的って何?」

と、僕がみんなに聞く。


「魔王を倒しに行く」

ちいさな少女、キョウちゃんが答えた。


「魔王!キタコレ!!」

と僕は笑う。


「わりと正統派の異世界物ということか」

と、僕は分析する。もちろんみんなは何を言っているのやら、という顔をしている。


近年の異世界ものは、数も増えてきた事により、細分化が進んでいる。当然チート無双系が主流だが、スローライフ系もかなり流行っている、魔王そっちのけで、居酒屋やったり商売やったり、するものが最近のトレンドだ。


「今回は、魔王!ド直球の正統派ということだなぁ」

と分析する。そして、多分チート無双系なのに、僕には凄い攻撃力や魔法能力はない、多分、いまのところ。どうしよ!と笑った。成長チートであることを願う!!


「魔王。魔王か〜!」

と僕は考える。魔王はどちらかというと、今の異世界ブームというよりは、90年代のライトノベルや少年漫画の定番だよなぁ、今みたいに美少女ばかりになる前の骨太な、とそこまで考えたところで。


「魔王が美少女だといいなぁ」

と僕は笑った。それなら最近のトレンドだ。


もちろんみんなは何を言っているんだコウタは、という顔をしていた。

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