第六話『運動不足とナイフ』
「じゃぁ、さっそく、まずは、武器と防具を手に入れましょう!」と、ヒビキさんがいう。その言葉に導かれて、僕らは武器屋さんに来ていた。
僕の武器を買うためだ。そういえば途中で、お金がないことに気がついたけど、貸してくれるらしい。コインだけで、戦うのはもう無理なので、貸してもらうことにした。
とはいうものの、基本武器があれば、あとはネットの知識で、お金を稼ぐこともできるだろうという算段もあった。僕が武器無しで、彼女たちに負荷がかかる方が困る。というような事を考えながら、武器屋についた。
「わあぁぁぁ、いっぱいあるわね!」
とカナデがうれしそうに、言う。
「あっ、これ私のとおなじシリーズだ、コータちょっともって見なよ!!」とカナデが僕に言う。
「あ、いいの?」とカナデに聞いたら、奥から低い声が聞こえてきた。
「いいぞ!」
武器屋のおじさんだった。
試しに持たせてくれるらしい。こういうのなんて言うんだろう。試食でも試飲でもなく、試持??斬らせてくれる場合は試し斬り?今回は持ってみて判断していいらしい。
「どうぞ」
と。武器屋のおじさんに渡されて、剣を持つ。
ガクッと重みが両腕に掛かる。
「重い!重い!重い!重い!」
と叫ぶ僕、さらに、
「ムリムリムリ!!」
と言って落としそうになる。
こんなのを持っていたら、倒れる、肩こりになる。
今時の現代人はスマホを持っているだけでも、肩こりになるんだぞ!!
現代人代表として、運動しないマンを貫いて、ここ数年は一切運動していなかった僕にこれはムリだ。よし、やめよう。
「なによ、だらしないわね!」
と、カナデが僕から剣を取って、片手で持ち上げる。
「うそ・・・だろ・・・」
と僕は驚く。
「こういうのはコツがあるのよ!」
と笑うカナデ。確かに、コツはあるかもしれないが、それは基本的に鍛えたうえでのコツだろうな、と思う。鍛えてる人は、鍛えてない人がどのくらいできないかが分からない。
「ぼくは、こういうのじゃなくて、ナイフとかがいいです・・・」
と、刀身の長い3キロも4キロもあるような武器を常時持つのはムリだと諦めた。
「えーっ!!だらしなーい!!」
と、つまらなそうにカナデが笑う。
その言葉は聞こえないことにした。
『検索』できても、いきなり体力は上がらない。
無理して体力勝負するのではなく、得意なところで戦うのがいい。
「ああ、これがいいですね」
と、普通のナイフを指差す僕。柄が黒く、刀身がシルバー。ごく普通のナイフだ。だが、これがいい。これがベスト。これなら借金も少なくてすむ。僕の体力にも僕の財布、(まだないけど)にも優しい。
「そうか、お前さんにはちょうどいいかもな」
と武器屋のおじさんが、取って渡してくれる。うん、軽い。スマホよりは重いけど。スマホは120グラム。でこのナイフは400gくらいといったところか。
と、言って購入した。
正しくはヒビキさんに買ってもらった。
「気にしなくていいのよ!」とヒビキさんは笑っていた。
そう、武器も手に入れて、これから僕らの旅が始まる。
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