第二百三十三話『無敵時間』

「籠手を構えた?どゆこと・・・?」

とサラが僕に聞く。


簡単に言うと、右腕を伸ばして、相手に向けている、という状態だ。

確かに、普通の籠手だと思っていたら、良くわからない状態だ。


と、同時に、パシュッと、アスカの右腕、つまり籠手から、弓矢が発射された。


「うん、あれは速射弓矢だね。片手で打てる、機械式の弓矢だ!」

と僕が言う。


「そう、私達は、弓矢三人チームだよ!」

と普通サイズの弓矢を持つサヤカが弓を引きながら言った。


小柄なアスカの速射弓矢が、一番近い『ダークウィザードジュニア』に当たった。


「速射弓矢??」

とサラが聞く。


「手元のスイッチを押すと、機械仕掛けのフックが外れて、弓が発射されるタイプの変わった弓矢だ。」

と僕が答える。


そう、それは機械式の弓矢。

この仕組だと、両手が使えるままなので、動けるタイプの人にぴったりの武器だ。

そして、小柄なアスカは、走って良いポジションを取りながら、矢を打つという、独特の戦い方をしていた。


「グオォォォォ!」

とその弓を浴びた、『ダークウィザードジュニア』が吠える。


「よくやった、アスカ!」

と、普通弓のサヤカが言いながら、その、アスカによってダメージを受けている、『ダークウィザードジュニア』に向かって、弓を引いている。


そして、硬直がとける瞬間に、その矢を放った。


「うまい!」

と僕が言う。


「すごいですね!」

と奈緒子も言う。


「え?なに?なに?」

とサラが僕達二人に聞く。

何が上手いのかよくわからなかったようだ。


「ゲームだと、だいたいダメージをくらった瞬間は、他の攻撃を受け付けないようになってるんだ」

と僕が説明する。


「へー?なんで・・・?」

とサラが聞く。


「そうじゃないと、無限にダメージをうけることになるから、一回ダメージを受けたら、まず負けって状態になっちやうからだね」

と僕が説明する。


「あー・・・?なるほ・・・ど?」

と、サラが言う。


ゲーム独特の概念は理解しにくいようだった。

物理現象に則ったルールに関しては凄まじい理解力を見せるサラだったが、ゲーム独自の概念は理解に時間がかかるようだ。


「そして、今、サヤカは、アスカが攻撃してダメージを受けている、『ダークウィザードジュニア』の硬直がとけた瞬間に弓が当たるように打ったんだ」

と、僕が説明する。


「なるほど!タイミングを見計らったのね!」

と、なんとなく理解するサラ。


「すごーい!サヤカちゃん!!」

と、サラがいう。


そして

「グオォォォォ」

と言いながら、二人に攻撃された『ダークウィザードジュニア』が消滅した。


「それほどでもないよ!」

と、にっこりサヤカが笑った。


「そう!サヤねぇさまも凄いんです!」

と小柄なアスカが言った。


「でも、うちで一番すごいのは・・・」

と、サヤカが言う。


「エリカおねぇさまです!!」

それに答えるようにアスカが言う。


「いきます!」

と、エリカが弓を引いた。

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