第七十四話『三つの居住区』

「よっしゃ、それじゃ、全部見に行こか!!」

と、両手を両膝に当てて、よいしょ、と立ち上がる珊瑚。

珊瑚がマイホーム見学ツアーの添乗員になってくれるのだった。


「瑠璃と水晶もええか?」と、突然の提案に、仲間二人の確認もとる珊瑚、意外とちゃんとしているんだよなぁ。と失礼にも思う。

「大丈夫よ!!」と、小さく右指で丸を作って笑顔の水晶。

「仕方ないから行く」とぶっきらぼうに言う瑠璃。しかし、よーく見ると、心なしかなしか楽しそうにも見える。


「よっし!チームの許可も下りたし、行こか!」

「そうね、ご飯も食べ終わったし」という、珊瑚の提案に応えるサラ、いつの間にか話に夢中になりながらも、全て食べ終わっていた僕らだった。


「まずは、『過密都市 - モダンエリア 』から行こか!」

「さっき、候補から外していたところだね」

と振り返る僕。三つの居住区『過密都市 - モダンエリア 』『郊外都市 - ライフエリア』『神殿都市 - キャッスルエリア』 から、僕らのお姫様ベッドが欲しい!や、庭が欲しい!という意見を聞いて、珊瑚が候補から外していたのだ。


「そやねん!そやかて、自分の目で見た方がええやろ思てな!」

「たしかに!!」と僕は言う、思っていたより珊瑚は教えるのが上手なようだ。ちょうど疑問に思っていることを、目と耳で体感させながら情報を増やしてくれているようだ。


「おもしろそう!!」とサラも言う。

「良いですね!!行きたいです」と言う奈緒子。


「でも、どうやって行くの?」

と言うサラの質問に、満面の笑みの珊瑚。その質問待ってました、と言わんばかりのドヤ顔だった。


「これや!」

と、ワープゲートを取り出す珊瑚。まるで未来から来た猫型ロボットのように、ファンタジーアイテムを取り出す珊瑚。「パッパラパッパ、パーパパー」という効果音が頭の中で響いた。


「この、ワープゲートがあれば、一度行ったところには行けるんや、『過密都市 - モダンエリア 』にはもちろん、あたしらがいったことあるから、一緒にいけると思う。」

「へー、そういう仕組みかぁ」と僕が感心する。


「ワープゲート起動。『過密都市 - モダンエリア 』へ!」

珊瑚がそう言うと、僕らは一瞬で目的地へ飛んだ。


「ここが、『過密都市 - モダンエリア 』かぁー、てマンションじゃん!!全然ファンタジーじゃないじゃん」と、到着するやいなや、モダンエリアに対してサラが突っ込む。


「そやねん、普通に高層ビルやねん、ファンタジーの景観を損ねないように、高さ制限があるんやけどな。」

「リアルな設定・・・」と僕が驚く、景観権や日照権の問題などもある、ということに驚きを隠せないとともに、人がたくさんいたら、同じような問題が、バーチャル空間でおこってもおかしくはないなとも、思った。


「リアルですね。景観権や日照権もちゃんとあるんですね!」と奈緒子も同様のことを思ったようだ。


「な、ここ『過密都市 - モダンエリア 』を外した理由がわかったやろ!!」

と珊瑚が言い、僕を含めたみんなが頷く。


「さて、わかったところで」

と、一呼吸置く珊瑚。


「次のエリアに行ってみよか!」

「おー!!」

珊瑚の呼びかけに元気よく応えるサラだった。

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