第七十五話『神殿都市 - キャッスルエリア』

「次のエリアに行ってみよか!」

「おー!!」

珊瑚の呼びかけに元気よく応えるサラだった。


「ラスト・オンライン」には3つの居住区がある。

『過密都市 - モダンエリア 』

『郊外都市 - ライフエリア』

『神殿都市 - キャッスルエリア』


僕らはまず、『過密都市 - モダンエリア 』を見に行っていた。


そこには、なんと、マンションが広がっていた。現代人はファンタジー世界でもマンションに住みたいと言う人たちが多いということだった。子供の頃からずっとマンションに住んでる人も多いことも影響しているだろう。


「珊瑚ちゃん、次はどこ?」

「『神殿都市 - キャッスルエリア』がええかな思うとるやがどうや?」

格闘少女サラの問いに、提案を返す珊瑚。立派にコーディネートしてくれている珊瑚。僕らの理解状況を把握して、いろいろ説明してくれてるようだ。


「超楽しそう!!キャッスルきたこれ!!」

と、珊瑚の提案に大喜びのサラ。ジャンプしながらくるくると回っている。サラはファンタジー世界のドラゴンや城には結構食いつく。好きなのだろう。


「ほな、いこかー!」

珊瑚は、ワープゲートを発動させる。このアイテムは一度行ったことのある所なら、どこでも行けるアイテムだ。珊瑚たちが行ったことがあるので、今回は、『神殿都市 - キャッスルエリア』にもいけるようだ。


到着するやいなや、壮大な景色が広がりサラが大きく喜んだ。


「す、すっごーい!!」

ピョンピョン跳び回りながら、走り回るサラ。

それもそのはず、そこには、サラが待ち望んだ、ザ・ファンタジーな景色が広がっていたからだ。


そこには、青い空が広がっている。湖面に面した白い城。山頂にそびえだつ赤橙に彩られた城。塔、城壁、礼拝堂を持つ本格的な城まで、多種多様な城にあふれた空間だった。


「ここがいいよ!!私ここに住む!!」

ファンタジーの世界を楽しんでいるサラには、最高な光景だったようだ。珊瑚が詳しい説明をする前に、すでにテンションは最高潮だった。サラの中でどんどん生活の想像が膨らんでいるのだろう。


「私はここでお姫様になる!!」

「え!?」と驚く僕。


「サラが、よくわからないことを言い出した!」

と僕が笑う。

僕の笑いなど気にせず、サラが続ける。

「決めたのです!!ここのお城で、お姫様になる!!お姫様ベッドに揺られて寝る!!私はお姫様になる!!」

マシンガンのように願望を告げるサラ。熱意が凄い。


「お姫様宣言!!」

と、僕が笑った。普段は、豪放磊落なサラだが、ぬいぐるみや、お姫様ベッドなど、ところどろ少女趣味が発動する。自分の服などは、ジャージの方がいいじゃん動きやすくて、というくらいなのに。


「盛り上がっている所、悪いんやけど、ここに住むのは実は難しいねん!」と、更に、水を差すのはいやだけど、これ以上ぬか喜びをさせてはいけないと思ったのか、珊瑚は優しく切り出した。


「え!?なんでですのん??」

大きく驚きすぎたのか、サラは珊瑚の関西弁が移ってそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る