第八話『格闘少女サラの才能』
「がんばります!」
最初の『クエスト』を受注して、喜ぶ僕達。
「やっと、冒険が始まるという感じだなー。」
「ついに、はじまりますね。このバーチャルウォーカーを使った冒険が!」
僕が、期待を込めて言うと、奈緒子が同意した。奈緒子もRPG好きなのかな、と思った。「バーチャルウォーカー」はVRMMOを実現した装置で、体を動かすと、実際の体は動かずに、ゲーム上のキャラクターだけ動くという装置、つまりコントローラーだ。この名前を覚えているくらいだから、そこそこ興味がある人なのだろう。サラは、お兄さんのものを使っているみたいなので、「パーチャルウォーカー」の名前も知らないだろう。
「でもさぁ、ファンタジーの最初のクエストが、食堂のおばちゃんに頼まれた、きのこを採りに行く仕事だよ!!これでいいの!?ファンタジーって!!ユニコーンとかバハムートとか倒さなくていいの??」
と、サラは初心者らしい感想を口にして笑った。
「すぐ、出てくるさ、最初は簡単なクエストからだね」
と、僕は笑った。そうこうしているうちに僕達は街の端まで来ていた。
「この道をまっすぐいけばいいんですかね?」
と、奈緒子が森を指差して、僕らに言った。
「たぶん、そうだね。この道の最後に、「ふつうのきのこ」があるはず。それをゲットして、おばちゃんに渡したらクエスト終了だ!」
と僕が応える。
「よーっし!」
パン、と顔を叩いて、屈伸する、サラ。
いかにも運動少女っぽい振る舞いだ。
「楽しもう!」
と僕も言った。そうして進んでいると奈緒子が何かを見つけた。
「あ、あれ、敵じゃないですか?」
奈緒子が最初に敵を発見した。大作RPG最初の敵はやっぱりスライムだった。
「お、スライム!!?」
サラがテンションを上げて、僕らに聞いた。
「そうそう」
「そうです!!」
と僕と、奈緒子が応えた。
「よっしゃ、私が倒す!!」
と走っていく、サラ。
「ちょ!!」
僕が静止する間もなく、スライムの射程内に入るサラ。
その瞬間、スライムが飛んでくる。
ドン!!
吹き飛ばされるサラ。
「いったーい!!」
スライムに吹き飛ばされて、尻もちをつくサラ。
「だから、不用意に近づいちゃダメなんだって!!」
僕が注意した。
「わかった!わかった!」
と、笑う。サラ
「次は大丈夫だから!」
そういって、笑顔が一瞬真剣な表情になる。
「かかっておいで、スライムちゃん!!」
とスライムを煽るサラ。
その挑発に応じたわけではないと思うけれど、飛び込んでくるスライム。
こんどは、構えをとって、待っているサラ。
「よっ!」
と、スライムの攻撃をひらりとジャンプしてかわすサラ。
そして、そのままの動作で攻撃にシフトした。
ジャンプしたまま、足を高くあげ、振り下ろす
「かかと落とし!!?」
いきなりの大技に驚く僕。そして、スライムははじけ飛んで消えた。そしてコインが飛んでくる。
「これでいいんでしょ!!」
とサラが笑顔で言った。
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