第九話『マニュアルとセミオート』
「これでいいんでしょ!!」
現実世界でも運動美少女のサラは、スライムに美しいかかと落としを放ち、倒した。
見事な体術だった。
「すごーい!」
奈緒子が小さく可愛く拍手をする。
そして、眼鏡を抑えて、じっとサラを見る。
サラの動きを見ているようだ。
「サラちゃん!もしかして、それ、マニュアル操作??」
「まにゅある??」
奈緒子の質問に、奈緒子の言うことは、ちんぷんかんぷんだ、という表情で返すサラ。これだけのRPG初心者なのに、あれだけの動きをするのだから、凄い!僕はそう思って聞いていた。
「この『ラスト・オンライン』の操作には、三種類あるんだ」
と、三の数字を右手で作りながら、僕はサラに助け舟を出す。
「もちろん、基本は、筋電位を読み取るバンド『バーチャルウォーカー』を使って操作するんだけど、マニュアル、セミオート、オートの三種類が用意されてるんだ」
「どゆこと??」
僕の細かい説明に、首を傾げるサラ。さらに進めて説明する。
「順に説明しよう。まずマニュアル操作ね」
と、そのへんに落ちている、木の棒を拾った。
このゲームが凄いのは、オブジェクト全てに触れることだ。
「こういう棒があるでしょ、で、例えばこう!」
と、木の棒を使って、土の地面に文字を書き始める僕。
「『ジュン』そう書いてあるわね」
と僕の書いた字を読んで、サラが言った。
「そう、こういう細かい動きはマニュアル操作じゃないとできない」
「へー、私がこの『マニュアル』ね。みんなこれなんじゃないの??」
と、僕の説明を聞いて、それが当たり前なのでは?という顔をするサラ。
「たしかに、基本はこれなんだけど、これには問題がある」
「問題??有るかしら??」
「僕のような、運動が苦手な人は、この世界でまったく勝てなくなってしまう」
「あー、そっか、せっかくゲームなのに、現実世界で運動が得意な人しか活躍できなくて、普段ゲームをやる人たちがやらなくなっちゃうのね」
と、サラは理解した。
「そう、そこで『セミオート』を使う」
と、木の棒を大木に向かって振る、つまり斬りつけた。
「お、綺麗な剣筋ね」
と、僕の剣をみて、そう言うサラ。
「そう、だけど、これは実際の僕の動きそのままじゃない。僕のモーションから、一番近い、ゲーム側が用意したモーションになるんだ。」
「へー!!綺麗な剣筋に自動で修正されるのね!」
僕の説明をイメージし、納得するサラ。
「そう、これが、筋電位バンド型コントローラー『バーチャルウォーカー』の特徴なんだ。この技術は、そもそも、ロボット技術を使った『パワー増幅スーツ』に使われてた技術なんだ。」
「あ、それ知ってる!!お爺さんたちが、そのスーツをつけて、重いものを持ったりするのよね。」
僕の説明を理解するサラ。
「そうそう、つまり『人のモーションを補正する技術』から来ているので、運動が得意じゃない人でも、ゲームのような、美しい動きができるようになるんだ!」
「すごい、そうだったのね!!」
と僕の説明に目を輝かせる、サラだった。
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