三人は詐欺団アジトに招かれる

「おい、もう十時まわってんじゃねーかよ」

 誰も車をもっていないため、レンタカーで借りた白いフィットの後部座席に座った柊が、顔をぐっと前に突きだした。

「だな」助手席に座った西沢が、気のない返事をする。

「だな、じゃないって。おまえが、『悪党は夜に活動するから、朝動きだすのは遅い』とか言うからこの時間になったけど、その前に出かけてたらどうするんだよ」

 柊が焦った声をかけるも、西沢は振り返ろうともしない。

「でも、この時間のおかげで、面接に行くって親父に嘘ついて、なんとか仕事休めたんじゃん」

「そりゃそうだけど……」柊が大きなため息をつく。「いいよなー、毎日暇なニートと土日休みの会社員は」

「もうこの時間に来てしまったものはしょうがないだろ、そう焦るなよ」

 焦燥せずにはいられないらしい柊をなだめた高橋は、田園の中に伸びる、舗装されていない広めの一本道の道端にあった竹藪の傍に車を停めた。

「この先にあるのが、そうみたいだな」サイドブレーキを引いてエンジンを切り、数メートル先に建つ二階建ての屋敷へと目を放つ。

 柊が、さらに前へと身をのりだした。

「遠かったけど、すげーわかりやすく建ってんな」

「なんか一面田んぼの景色の中で、あの家だけ浮いてない?」西沢が淡々と言う。

 土曜日の午前十時すぎ、高橋達三人は、街から一時間以上かけて、和佐が見事つきとめた詐欺団のアジトの傍までやって来ていた。

 三人が見つめるその屋敷は、のどかな田園風景の中に、まるで要塞のように建っている。まわりを囲む二メートルほどの煉瓦の壁の上には、有刺鉄線が張り巡らされており、出入り口は、赤銅色の大きな鉄柵の扉で閉ざされている。その横に普通のドアもあったが、侵入者どころか、訪問者すら頑なに拒んでいるように見えた。門扉の左側には、車二台分の幅のガレージがあったが、それもシャッターがしっかりと閉められていた。

 一本道の突き当りにあるそのアジトを眺めながら、「ここを拠点にして、あちこちで詐欺を働いているわけか」と高橋は苦く呟く。

 もってきた双眼鏡を覗いていた柊が、がりがりと頭をかいた。

「けっこう敷地広いし、いい暮らししてそうで腹立つなーおい」

 ゆるやかに西沢が首を振る。「でも、こんな田んぼだらけのど田舎には住みたくないな」

「そりゃそうだけどよ」と応えた柊を無視して、西沢がダッシュボードにいれてあった写真をとり出した。じっと見たのち、またしまう。

「わざわざ写真を撮る必要ないぐらい、わかりやすい三人組だったよね」

「詐欺団が三人だけとは限らないから、気をつけないとな」

「こんなごつい奴がほかにもいたら、嫌だな。勝てる気がしねー」柊が頭を抱える。

「俺達の目的は、あくまでもあのアジトからばれないよう金を盗むことだからな、やり合う状況はさけてくれよ」

 柊に釘をさした高橋の脳裏に、南條との会話が浮かぶ。

『──仮に銀行から金を引きあげたとしても、それをアジトに隠すとは限らないんじゃないか?』訊いた高橋に、『隠すよ』と南條があっさり応えた。『テレビでやってるのを観たことはないかい? 脱税している金持ちはたいがい、大金を自宅のどこかに隠している。いかにもな金庫にはいれずに、庭に埋めたり、天井裏や床下に隠したりとかね。銀行に預けられないやましいところがある金持ちほど、自分の目の届くところに金を置いておきたがるものなのさ。だから詐欺師達も、そうしている可能性が高いと思うよ』

 自信に満ちた南條の言葉に、高橋は反論できなかった。心理カウンセラーの彼が断言するなら、きっとそうなのだろう。

 西沢も、そんな柊に横目をくれた。

「南條さんも、みつかったら逃げろって言ってたじゃん。バカって、脳みそまで筋肉なの?」

「てめー、やばくなっても助けてやんねーぞ」またしてもバカにされた柊が不満げに言い返すと、西沢がふふんと笑った。

「俺、足速いから、その前に逃げられるし」

「っとに、かわいくねーな、おまえは」

 荒っぽく吐き捨て、柊が後部座席にもたれこむ。

 やはりそれを無視して、西沢が窓の外を見た。

「それにしても、ひと気なさすぎじゃない?」

「ふらふらしてるガキ一人いねーとはよ」

「せめて誰かに、あそこに何人住んでるのか聞きたいところなんだがな」

 高橋も視線を巡らせていると、柊が声をあげた。「お、あっちから誰か来るぜ」

 柊と同じようにうしろを見ると、老人らしき男性がこちらに向かって歩いてきていた。地味な色の作業着姿で野球帽のような帽子をかぶり、雨でもないのに長靴をはいている。「詐欺団の一員……には、見えないな」

「柊さん、話、聞いてきてよ」すかさず西沢が柊に言った。

「なんで俺だよ」

「この人、コミュ力ないし」と高橋を指差す。「俺は面倒くさいから」

「面倒くさいとか、どんな理由だよ」

「それでいいじゃん?」

 はっきり言われすぎてむっとしようと屈託なく訊かれ、高橋は「そうだな」と渋々返す。人の機嫌にかまわずマイペースに振る舞えるとは、なんて羨ましい性格なんだ、と改めて思う高橋だ。

「しょうがねーな」

 一方、バカだが気のいい柊が、言いながら車をおりる。駆け寄って老人に声をかけ、しばらく話をしたのち戻ってきた。

「どうだった?」西沢が初めて、後部座席に座った柊のほうを見た。

 高橋もうしろを振り返る。「詐欺団とは関係なかったろ?」

 おう、と応えた柊が、どこか得意げに二人を見返した。

「あのじいさんは、この辺に住んでて、アジトができたのは一年くらい前だって言ってた。車で出かけるのはたまに見るけど、誰がいて何をしてるのか全然わかんねーから、不気味がってたぜ。あと、この前、建築業者らしい連中が来て、家の中でなんかやってたってよ」

「なんか、ってリフォーム? 詐欺師でもそういうことすんの?」

「まわりに詐欺師ってばれてなきゃ、することもあるんじゃねーか? あいつらだって、快適に暮らしたいだろうし」

「詐欺師のくせに、生意気だな」苛ついたように西沢が唇を歪める。

 話がずれている気がして、「おい」と高橋は口を挟んだ。

「リフォームとか、どうでもよくないか? 問題は、一年も住んでるのに、地元民が何もわかってないところだろ」

「確かに問題だけど、わからないものを問題にしたところで、どうしようもなくない?」

「もっとほかにも捜してみるか? 地元民」

 柊がきょろきょろとあたりを見回す。高橋も西沢も人の姿を捜したが、やはりひと気はなく、捜しあぐねた三人の口から次々にため息がもれた。


 そうこうするうちに三時間がたち、ついに柊が、「もう無理だー」と音をあげた。「コンビニのパンが昼飯じゃ全然たりねーし、誰もあらわれねーしよー」

「うるさい、バカ」かなりいらっとした表情で、西沢が振り返る。

「バカって言うな、ガキ」

「ガキって、誰に言ってんの?」

「おまえ以外に誰がいるんだよ」

「はあ?」

「いい加減にしろよ、おまえら」空気がどんどん険悪になっていくのを感じた高橋は、仕方なく二人の間にはいった。こうなるのも無理はない。広くはない車内に三時間も閉じこめられていて、疲労や焦燥やらで皆苛立っているのだ。実際、高橋も相当苛立っていた。なぜ友人でもない彼らと、こんな無意味な時間をすごさなくてはならないのか? という思いが浮上するたび、いや、これは美加のためなんだ、と自分に言い聞かせる。えんえんとそれの繰り返しだった。

 こんな状態が、ずっと続くと思うとぞっとする。それならいっそ諦めて帰ってしまおうか、と悩んでいると、また柊が大声を発した。

「だいたい、もうこの狭さが無理だ、限界だ」

「限界を感じるほど狭くないじゃん。しかも自分は一人で後部座席占領してんだし」

 西沢に怒ったように返された柊が、今度は意外にも弱気に面持ちになって、「でも、もう無理だ」と繰り返した。

「俺、閉所恐怖症なんだって」

 言うなり、柊がドアをあけて外に出る。──と、そのとき、バックミラーにグレーの車が向かってきているのが見えた。

 慌てて高橋は柊に言う。「中にはいれ、奴らの車かもしれないぞ」

「お、おう」と柊がすぐに車内に戻る。しかし、ときすでに遅かったのか、フィットの横を走り抜けたグレーのセダンが、少し前で停車した。カラーボールの塗料は消されていたが、間違いなく奴らの車だ。

 そして、三人が見たことがある男──竹上が、車からおりてこちらに歩いてきた。そのうしろで車が発車し、アジトへと走り去る。

 誰もが緊張して無言でいると、竹上が運転席の窓をこんこんと叩いた。かたい顔つきで高橋が窓をあけると、にっこりとほほ笑んだ。

「皆さんお揃いで、何をしてるんですか?」

「ただのドライブだ」高橋は低く応える。

「そうですか」竹上が中を覗きこむように、頭をさげた。「では、お楽しみのところ悪いんですが、車からおりて、私と一緒に来てもらえませんか?」

「俺達が、わかった、とでも言うと思うのか?」

「あなたは確か……山口美加さんの恋人のタカハシさんですよね?」言ってから、竹上が思いだしたように頬をゆるめた。「ああ、失礼。元恋人でしたっけ」

 そして西沢と橘へと視線を移す。

「そして、たぶんあなたがニシザワさんで、そちらがヒイラギさんですね? お二人とも素晴らしいコントロールと腕力をおもちで」

「だから?」西沢が冷たく訊く。

 そんな反応を気にとめたふうもなく、竹上が高橋と目を合わせた。

「実はさっきの車に、山口美加さんが乗ってまして」

「美加を誘拐したのかっ」とたんに高橋の顔が怒りの色に染まる。

「とんでもない」すかさず竹上が、顔の前で手を振った。「我々の家にお招きしただけですよ」

「そんなわけないだろう」

「あり得ないな」

「おまねき、とかよく言うぜ」

 西沢と柊の声にも怒りが満ちている。

「本当に、誘拐なんかしてませんよ、彼女は自分から我々の車に乗ったんですから」

 竹上が、スーツの内ポケットからICレコーダーをとり出した。ボタンを押してこちらに向ける。

『一緒に来ていただけますか?』『行くわ』

 そんな会話を訊かせたあと、「ほらね?」とまた中を覗きこんだ。

「って、都合のいいとこしか録ってないよね? その前にうまいこと騙して車に乗せたんだろ」

 確かに美加の声だったことに動揺する高橋に代わって西沢が言った。

「でも、無理やりつれさっていない証拠にはなるでしょう?」すかさず竹上が反撃する。

「ですから、あなた方にも来ていただきたいと思いまして」

「行かなきゃ、美加を返さないつもりだな」

「それはどうでしょう」

 高橋に睨められようとも、平然と竹上が笑う。

 あざとい笑顔を憎々しく睨んだまま、高橋はドアを開いて外に出た。西沢と柊も黙ってそれに続く。

 軽やかに歩く竹上のあとについて屋敷の門扉の前まで来ると、横のドアを開き、「さあ、どうぞ」と三人を招きいれた。中には広々とした庭があり、それを囲むように様々な木々が植えられていた。その向こうに、白い積木を組み合わせたような、大きな四角ばった二階建ての家が建っている。はきだし窓はなく、白い枠に縁どられた窓にはすべて銀色の格子がつけられていて、異様な雰囲気を漂わせた外観だった。

「あ、犬だ」はいってすぐに柊が指差したほうを見ると、小さな池のまわりの芝生のところに、放し飼いにされた二匹のドーベルマンがじっとこちらを見ていた。犬が嫌いなわけではなかったが、今にも襲いかかってきそうな様子に、高橋の拍動がはやまる。

「彼らはうちの番犬です。迂闊に近寄らないほうがいいですよ、噛み殺されるかもしれませんから」

 竹上の説明に、高橋はますます内心でびくつく。西沢も、さも嫌そうに顔をしかめていたが、柊は「まじかよ」と、ただ驚いているだけのように見えた。

 芝生の中に敷かれた白っぽい石畳の上を進んでいき、玄関まで来ると、竹上がその脇にあるパネルを何度か押した。まわりに黒いカバーがついていたので、押す仕種しかわからなかったが、どうやら暗証番号が鍵になっているらしい。

 ドアをあけてはいった中は、廊下が奥へとのびていて、壁も天井もコンクリートの打ち放しになっていた。あたたかみがまるでない、牢獄か何かのようで、高橋はいい気分がしなかった。

 しかし、突き当りにあった部屋は、一変して白を基調とした大きなリビングルームで、その落差に高橋は戸惑う。きらびやかなシャンデリアや、白い革張りの豪華なソファーセット、大型のテレビなど、これらを買った金が善良な人々から騙しとったものかと思うと腹立たしくもなった。──が、今はまず美加のことだ。

「我々の家にようこそ。あなた方三人に会えたおかげで、南條さんを呼びだす手間がはぶけましたよ」

 ソファーの真ん中に座るなり、入り口に立つ自分達に向かって仰々しく手を広げた竹上を、高橋は射るように睨みおろした。

「美加はどこだ」

「どこでしょうね」

 とぼけた竹上が指を鳴らすと、別のドアがあき、マツイが姿をあらわした。何度見ても怖い顔だ。

「あなた方に暴れられては困るので」竹上が言う。

 確かに、竹上と自分達だけなら力づくなやり方もできただろうが、いかにも戦闘要員的なマツイがいると、おいそれとは動けない。また柊が互角にやり合えるかもしれないが、今回も彼らが素手とは限らないのだ。

 そんなことを考えた高橋の双眼が、さらに鋭く竹上を睨む。

「美加は、無事なんだろうな」

 竹上の顔には、相変わらずむかつく笑みがはりついている。「それは、もちろん」

「美加をどうする気だ」

「どうもしませんよ。我々は野蛮な誘拐犯じゃありませんから。だから、交渉もする。──どうですか? 一人百万、三人で三百万出してくだされば、すぐにでも彼女を解放しますが」

「はああ? そんな金ねーよ」聞くや否や、柊が声を荒げた。

「もってたら、こんなとこにいないし」小声でぼそっと西沢が言う。

「何か?」

 聞きとれずに首を傾げた竹上に、高橋は憤然とした目を据えた。

「それなら、ここからなんとか脱出して、警察に頼るしかないな」

 竹上の顔から笑みが消える。「そんなことをしたら、美加さんがどこかに消えてしまいますよ? まあ、その前に脱出なんて不可能ですけど」

「美加が消える? 殺す気か」

「そんな物騒なことはしません。あなた方にばれてしまったここからいったん消えていただいて、その後警察に行ってもらいます。そして、監禁された事実などなかったことにしてもらいますよ」

「またサイミンジュツを使う気だな、この野郎っ」

 柊は怒りをあらわにしたが、高橋はそれをかろうじて抑えこんだ。自分達が圧倒的に不利な状況でかっとなっても、いいことはない。

「悪者とわかっているのに、また催眠術にかかるとは思えないがな」

「美加さんは実にかかりやすいタイプのようですよ。その人一倍かかりやすい彼女が、本当にかからないと思いますか?」

 そこまで言われて不安になった高橋は、思わず二人のほうを見た。

「……かからないよな……?」

「自信ないのかよ」

「そこで弱気になるとか、だめじゃん」

 彼らにあきれられた高橋は、もう一度自分に気合をいれなおし、竹上を見据えた。この二人にバカにされたりするのだけは、なんだかすごく嫌だったのだ。

「じゃ、もし俺達が金を払わなかったら、どうなるんだ」

「そのときは彼女を洗脳して、我々の仲間になってもらうしかないでしょうね」

「洗脳だと?」高橋の頬がひくつく。「なら、力づくでとり返してやる」

 こらえきれなくなった高橋がついそう言うと、竹上が冷酷な表情を見せた。

「この前はそちらの勝ちでしたけど、今回もそううまくいくとは限りませんよ。ここは我々の家ですから、不法侵入、正当防衛となれば、捕まるのはそちらになると思いますが」

「不法侵入、って、そっちが招きいれたんじゃん」

 西沢に指摘されようとも、竹上の顔つきはかわらない。「という証拠があればいいですね」

 高橋はぎりぎりと歯噛みした。

「人を騙して金を巻きあげてる詐欺師が調子にのるなよ」

「我々は、あくまでも教団への寄付をいただいてるだけですよ? 無理やり奪っていないという証拠のビデオも録ってある。何より、誰からも被害届けは出ていない」

「それは弱みを調べて口封じしてるからだろうが」

「なんにしても」竹上がすっと腰をあげた。「美加さんが何事もなく戻ってくるかどうかは、あなた方次第ということです」

 ゆっくりと近づき、竹上が三人の前に立つ。

「どうしますか?」

「おい、どうすんだよ」

 柊に小声で訊かれた高橋は、苦渋の面持ちで口を開いた。

「……金は払う……だが、三百万は無理だ」悔しさと情けなさが、心の底からこみあげてくる。奴らに対抗する力も頭もないだけでなく、愛する人をとり戻すための金すらないとは。こんなないない尽くしでは、美加に振られるのも当然だ。

 西沢が、すかさず高橋のあとを継いだ。「どう脅されても、ないものは出せないし」

「そうですか……」と考える素振りを見せた竹上が、息をついて微笑した。

「なら、貯金全額でいいですよ。あなた方にはここを突きとめられてしまったことだし、それで手を打ちましょう。その代わり、誤魔化されると困るので、催眠術をかけさせてもらいます」

「そんな面倒なことせずに、キャッシュカードを渡すから、おまえらでコンビニに行って引きだしてくればいいじゃないか」

 高橋がやけくそ気味に言うも、「それはできません」と竹上がきっぱり応える。

「あくまでも寄付なので、あなた方におろしてきていただかないと。私が行ったら、監視カメラに映ってしまう。そのせいで捕まるのはごめんです」

「おまえらの悪事を知ってる俺達が、あっさり催眠術にかかると思うのか?」

「100%かかりますよ。阿南あなんさんは、日本でも屈指の催眠術師で、彼の術にかからなかった人はいませんから」

 それを聞いた柊が瞠目する。

「100%だってよ、すげーな」

「感心してる場合じゃないんじゃない?」

 西沢が眉をひそめ、高橋もまた顔をしかめる。

「100%なんて、あり得ないだろう」

「それがあり得るのが、阿南さんなんです。ちなみに、かからないと思ってる人ほど、かかりやすいですからね」

 子供にでも言うように優しく言った竹上が目顔で指示すると、マツイが奥にある三つめのドアへと向かい、無言で開いた。

「その前に」と竹上が三人を順番に見た。

「解放したとしても、我々は美加さんのことを調べ尽くしてある、ということをくれぐれも忘れないでください」

 一転して冷然と念押しした竹上の目が高橋をとらえる。

「じゃあ、あなたからにしましょうか、タカハシさん」

 その瞬間、高橋の体が緊張に強ばった。





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