第14話博物館

何やかんやあって5人はウエノについた。

「……遥か昔、俺達の時代に似た時代の遺跡か……。」

そう言ってウェルカムはあたりを見渡す。

「国立博物館がまんま残っているな。」

そういってとんすとん店主が一つの建物を指さす。

「……今日は博物館見学に来たわけじゃないんですよ。」

たかやがそう言って、大きくため息をつく。

「……だけどさ。盗賊ってどうやったら会えるの?」

「えっ? クエスト受けたら自動的に出てくるんじゃないのか?」

たかやがそう言って一同を見渡す。

「「「…………………」」」

一同がまるで氷点下のごとくたかやを見つめる。

「あのなあ……ゲーム脳もそれぐらいにしておけよ。」

はぁとため息をつきながら、とんすとん店主がツッコミを入れる。

「…………なんか根拠あるかなーと思ったらそれだったんだ。」

「まあ、仕方ないか。一個一個建物をしらみつぶしに潰していくか。」


………


そういってたかや達は国立博物館を模した建物に入っていく。

「おーい、誰かいねえか?」

しかし返事はなくたかや達は博物館の中へと入っていく。

「………おかしいな。」

たかやは被っていた眼鏡をはずしてそう言う。

「……誰もいない。」

そう言いながらも次の眼鏡をかけてあたりを見渡す。

「罠は……警報の罠があちらこちらに仕掛けられてるな。

 ……まあ、ご丁寧に攻撃不能の罠まで存在するのか。」

「……あのでかい銅像ね。」

中央にどんと置かれている剣が折れた戦士の象を見てドラゴンナックルが答える。

「……つまり、この中にいる限り、俺達は誰からも攻撃されないって事か?」

「……それは無いです。『ジャック・ザ・リッパー』みたいに攻撃不可能な場所でも攻撃してくる恐ろしいモンスターが時々いますから。

 ここのガーディアンも同じ能力を持っているのがいますからね。」

「そうか、攻撃できない場所だから安心っていう訳じゃないのか。」

そう言いながらもたかやたちは博物館の中を探査していく。

「……変だな。」

たかやはそう言って、あたりを見渡す。

「ここ、こんなに広かったか?」

「…え? ああ確かにゲーム時代と比べたら広くなったような気はするけどな。」

えんたー☆ていなーがそう言いながらも返事をする。

「……博物館ってだいたいこれぐらいだと思うぜ。」

「そうか?」

たかやはそう言いつつも、思いっきり首を傾げた。

「そう言えば眼鏡何回も変えてるけど何しているんだ?」

「罠とか隠れてるやつとかいないか調べてるんだ。それぞれ別のアイテムだから、変えないとわからないんだ。」

「……なるほど。便利だか不便だかわからんな。」

「何でもできるアイテムがあったらゲームにならんだろうが。」

たかやはそう言って大きくため息をつく。

「しかし誰もいねえな。」

「……夜まで待つか……仕方ねえ昼飯でも食べるか?」

そう言って一同はバッグからパンを取り出し、階段で食べ始める。

「……ここは最初期において、セルデシアの歴史を知るっていう名目のクエストの為に作られたマップなんだけどな。」

「……なにそれ?」

「要するに設定を語る為の場所って事さ。だけど、後付後付していったら色々と不整合が発生し続けて……。変えたら変えたで文句を言う人がいたりもするし、変えないと新しいコンテンツが作れなくなったりな。

 それに設定を後出ししたい場合とかもあると不都合が出てきたりもしてな。

 この辺りは最低限の設定を語る場所としてしか使われなくなったってわけだ。

 ちなみにここと同じ場所はアメリカサーバとスミソニアン博物館、東欧サーバだと、最初期は大英博物館が担っていたんだが……。」

たかやが遠い目をする。

「……色々あって架空の博物館を作って対処する事になったんだ。」

「なんじゃそりゃ。」

「……イギリスとフランスの国家間議論があったんだよ。

 博物館周辺の治安を悪化させるってのがイギリス側の怒りを買ったってのが原因かな。

 これでWeMOT(ウェモト)って概念が生まれる原因になったんだ。」

「ウエモト?」

「WE Make Our Town.(我々の町は我々で作る。)って意味だ。

 要するに地元出身の開発者の意見を優先して町を作ろうって概念だな。」

「……それにしてはウエノとか盗賊の町になってるのはひでえ扱いだな。」

「ウエノは最初のコンテンツだから、一回決まってしまうと、なかなか変更できないんだよ。

 ここが盗賊の町になったのはこの博物館に近づかせないための方便だしな。」

たかやはそう言って部屋に入る。

「調べてみたらどうだ?」

「……罠が増えている可能性がるんですけど。」

「そう簡単に既存マップは変えられないんだろ? だったらある程度は今までも大丈夫じゃねえか?」

「……そうですね。じゃあ解説読むだけでも。」

そう言って味のしないおにぎりを食べた後5人は3階の部屋へと入っていく。

「このボタンを押すと解説が始まるんだよな。」

たかやがそう言って<太古の歴史><ヤマトの設定>などと書かれたボタンを指さす。

「じゃあ、まずは<太古の歴史>からはじめるか。」

「ぽちっとな。」

とえんたー☆ていなーがそう言って台に存在するボタンを押す。

『むむむむむかっかかかかかかしいしいいいいいむううううかぁぁぁぁしいいい…この世界にいいいは4つの種族が存在してええええいた。

 平均的な能力のヒューマン、体力自慢のドワーフ、素早さが高いエルフゥゥウそして、遥かなる力を持つアルブ。』

「……昔と解説が少し変わってるな。こんな壊れた音声だったかな?」

『がががががっがががががががが。』

「大丈夫か壊れていないか?」

次の瞬間、機械音声が止まり、空中に謎の影絵が表示され始めた。

『昔々1人の少女が箱庭を作りました。』

「………何だ? わけのわからん解説が始まったぞ。」

「静かに。」

『少女はその箱庭をみんなに見せました。そしてどうすればもっと素晴らしい箱庭になるのかみんなに聞きました。』

「…………何なのこれ?」

「まるで、絵本の中身だな。」

『ある青年が、少女に近づいてこう言いました。この世界でみんなが遊べるようになればもっと面白い事ができるよ。と。』

「ああ、こりゃ青年が少女を搾取する話だはこれ。」

『少女は青年に言われるままに箱庭を作りました。ですが青年はその箱庭が気に入りませんでした。』

「……破局するんのかこれ?」

『……青年は必死に考えました。この箱庭を盛り上げる方法はないかないかと。』

「……なんか流れが変わってきたな。」

『青年はこう思いつきました。この世界と模した箱庭を作ればいいと。』

「…………いやまさか。」

『青年達は箱庭をたくさんの人に開放しました。』

「……たかや、なにかわかったのか?」

『多くの人がその箱庭に興味を持ちまた別の場所に別の箱庭が作られ始めました。』

「………。」

『箱庭にははどんどん作られます。それを管理する為に魔女となった少女は機械を作りました。機械は魔女の名前が与えられました。』

「……なるほど。」

「何がなるほどなんだよ!」

たかやの言葉にえんたー☆ていなーがツッコミを入れる。

「おそらく、箱庭は<サーバ>。青年はアタルヴァ社初代社長の事だろう。

 これはセルデシアの歴史じゃない。<エルダー・テイル>の歴史が表示されているんだ。」

「<エルダー・テイル>の?」

「……おそらく<大災害>の時に様々な物が混戦してしまったのだろう。

 本来ならセルデシアの歴史を表示させるはずだったが…『そんなものはない』か『色々と書き換えられてしまった為』、<エルダー・テイル>の歴史が上書きされたのだと……思う。

 確証はないけど、そう言う推測が成り立つんだ。」

「他の重要人物としては、魔女となった少女が恐らくプログラマーの事だとして、魔女の名前が与えられた機械ってのは何だ?」

「<エルダー・テイル>の管理システム『A』。」

たかやがそう言って、言葉を止める。

「<エルダー・テイル>ほぼ全てを管理する最高システムの事です。

 BOT探索や経済調停全てを担うと言われているシステムで……その全貌を知っているのはおそらくアタルヴァ社上層部だけでしょうね。」

たかやはそう言って大きくため息をつく。

「そんなもんがあったんだ。」

「……僕も噂だけでしか聞いていません……だけど確かに存在するのは確かです。

 そうでないと<エルダー・テイル>はインフレ地獄になっているはずですからね。」

「でもさ、これって。大災害の理由は出てないわよね。」

「恐らく大災害については、向こうとしても予想外だったんだろうな。」

ウェルカムはそう言いながら、次のボタンを押そうとする。

「………たかや、どうしたの?」

「………いや、ちょっと考え事しててな……。この話が不自然なのは運営側の視点から見た作品なんてあるはずがない。これは規約に決まっている事だ。」

たかやはそう言って次に言葉を紡ぐ。

「おそらく、今この世界はパッチワークのように敗れた個所に何らかのフォローを入れ続けている状態だと思う。

 本来、ここでは過去の話がなされるはずだった。だけどこの世界の過去なんてない。だからこそ、アタルヴァ社による作成の様子が流れたんだ。」

……たかやはそう言って、言葉を一回止める。

「……だけどわからない。現在のゲームの仕様ではどうやったて<大災害>を起こすことは不可能だ。」

「当たり前だ!」

「……だとすると、一体どうやったら大災害が発生したんだ?」

「………大災害の時に何かの記録が残っていれば……。」

「そんなもんあるわけねえだろ!」

「……ある事はあるんだが……。」

たかやがそう言って、ため息をつく。

「あるのか?」

「『A』が分析を行う為に数年分の記録をとるシステムが<エルダー・テイル>には搭載されているんだが……。」

「……普通プレイヤーは見れないわよね。」

「ああ『プレイヤー』は見れないな。」

たかやはそう言って、ニヤリと笑う。

「『NPC』ならば見れる可能性がある。おそらく普通のNPCでは不可能だろうけど……。おそらくシステムに近い『A』や『ミズハラ』家になら確認できるかもしれないんだけど……。問題はそのデータベースが何処にあるかなんだよな。」

「……だったら探せばいいじゃねえか。」

「どうやって? この広いヤマトの大地で隠されている物を?」

たかやは苦難の顔を浮かべながら、その表情を浮かべる。

「…………まずは動かんと始まらんさ。」

とんすとん店主がそう言って、解説の次のボタンを押す。

「まずはここの情報を整理しようじゃないか。」

そう言ってたかや達は情報を集めたのだが……。

「………すいません。この情報俺全部知ってます。」

「…………だああああああああああああっ!!」

たかやのその言葉に全員ずっこけるしかなかった。

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