第13話いざ!ウエノへ!
色々と考えているたかやに対してたかやが声をかけてきた。
「あの、ヨコハマとツキジは無視しても構わないのではないでしょうか?」
「理由は?」
「ヨコハマもツキジも常に大量の食糧を輸出入していて、その間隙をぬって「ご禁制の薬」が運び込まれています。
ですがウエノはそう言ったものが一切なくて「ご禁制の薬」が湧いて出ているというか……。すみませんこんな言い方で。」
「なるほど、ヨコハマやツキジには大量の商人がいる。そんな中を今話題沸騰中の三日月同盟が動けばすぐにわかるという訳か。」
とんすとん店主がそう言って、タカヤの言いたいことをフォローする。
「しかしウエノはな……。」
「ええ、治安がかなり悪い地域ですね。盗賊や亜人達の根城になっていますからね。」
「……ウエノか。今は確かあそこを狩場にしてるメンバーはいなかったはずだが……。」
「あそこは確かにな……。」
たかや達はそう言いながらいやそうな顔をする。
「経験値稼ぎに行くわけじゃない……がな。」
たかや達がウエノ行きを嫌がるのはあそこが罠が沢山あるダンジョンだという点だ。
(あそこには東京国立博物館と国立科学博物館がある。だからこそ盗賊の住処として設定されたんだよなー。
普通に居住区があると簡単に探索されちゃうからな。
それにかなり序盤のクエストだし罠系の妨害マシマシで作成されてるんだよな……。)
たかやは色々と思い出す。<エルダー・テイル>の設定においては幾つかの時代軸に別れてる。
即ちなんか現代っぽい文明が存在した神代、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、アルブの4種族が調和していたという時代。そして<エルダー・テイル>の時代だ。
そしてウエノの博物館などは絶好のダンジョンスポットと言えるだろう。
だが普通にダンジョンにしたのでは、何故か調査されないダンジョンが街中に存在する事になる。
ならばという事でこういったダンジョンに適した施設のある町は、治安が悪いと設定されている事が多い。
(大英博物館の時は相当荒れたらしいしな……イギリスの会社が独立して作るという話になったり……。)
そう言った話を聞いて育ったたかやとしては、おおよその意図がつかめるようになっていた。
(マイハマがイースタルの中心になったのはD社の意志が強くなったんだよな。)
そう言ってたかやは余分な考えを頭から跳ね飛ばす。
(……………ゲーム時代の設定にはそれぞれに意図があるから、この辺り変じゃないんだよな。)
たかやはそう考えつつも、ウエノについて考える。
エルダー・テイルにおいて罠系のダンジョンは少なくなってきているのだ。
集団攻略などが行われるエンドコンテンツなどにおいて、見えない罠のせいでパーティーが壊滅するというのはレイドパーティーにおいて多大な精神的ストレスが発生する為であり、また孔明の罠といわれる『見えない』トラップによる嫌がらせは新規ユーザーの加入を減らすというアンケート結果も出ていたのなら、その手のトラップが減っていく事は当然だろう。
その為、エンドコンテンツになればなるほど……即ち『レベルが上がれば上がるほど』、見えない罠は減っていく事になる。
変わりに『彫像系』『ダメージ床』など、見える系の罠は増えていく事になる。
(……今からウエノへ行ったとして……どうやってクエストを受ける? どうやってご禁制の薬を探す?)
「………なんかさ、たかやって動いている間もずっと色々考えてない?」
ウェルカムがそう言ってたかやに声をかける。
「まず行動してみようよ。そっから又考えてもいいじゃないか。」
「……情報は常に整理しておきたいんだよ。」
たかやはそう言って頭を抱えつつ次の行動を予測する。
「そうだ。一つあんたに聞いておきたい。もしも何らかの形で現在の料理法が判明したとしてだ。
もしもその方法が、ご禁制の薬を使わない方だったとした場合だ。報酬を半額欲しい。」
「……半額ですか?」
「そうだ、このままやったとしても、只働きになっちまう。それぐらいだったら何らかの報酬が欲しいからな。」
「わかりました。この件に関しては何らかの形で判明したとしてご禁制の薬を使わない物と判断したのなら半額をお支払いしましょう。」
菫星はそう言って、とんすとん店主の約束に同意を行った。
銀行の中で、たかやはどれを引き落とすか考える。
(今回は金貨の報酬しかないから、製作級のみで……いや新しいクエストだから良い奴で……だけどそうなると摩耗とかを考ええると……。)
頭の中で大量のソロバンをはじきつつたかやはどれを持っていくかを考える。
「やっぱり複雑に考えてる。」
「複雑に考えねえとやっていけないんだよ。」
ひょこっと横から声をかけてきたドラゴンナックルにたかやは平然と返す。
「……今回のクエストは例外ばっかりだ。」
「そうかもしれなけどさ。たかやっていつも考えて考えて考えて……。そのせいで動けなくなるんだもん。」
「……動く前に考えたいだけだ。」
そう言ってたかやは大きくため息をつく。
「……とりあえず罠系の探知の装備だけ持っていくか。」
たかやがそう言って、幾つかのアイテムを指し示す。
「えっと、俺の口座から罠探知の指輪と毒封じの仮面とお願いします。あと「かや」って人の口座からヒーリングポーション5つと馬召喚の笛3つ。」
たかやがそう言って、銀行の局員に声をかける。
「申し訳ありません。かや様の口座は封印されて……申し訳ありませんたかや様が使うには問題ありませんね。」
(……そうか、使われていないサブキャラの口座は封印されるのか。)
たかやはそう考えつつも道具を持ってきた銀行の局員から頼まれたアイテムを持ってくる。
「……なあ、他の奴の口座を勝手に使うのは問題じゃないのか?」
その様子を横で見ていたとんすとん店主が軽口でそういう。
「パスワードもきちんと入力してますし、簡単には盗めないようにはなっていますよ。」
「はは、それもそうか。」
「じゃあオレも封印されている倉庫1から、ヒーリングポーション6つ!」
えんたー☆ていなーがそう言って、自分のサブキャラからアイテムを取り出そうとする。
「えっと……??はい、取り出す分には問題ありません。」
そう言って銀行の局員がヒーリングポーションを持ってくる。
「ようし! 装備も整えたし、ウエノへ出発だ!!」
たかやがそう言って召喚笛を吹くと大八車を引いた馬が現れる。
「ウエノでは戦闘が予想される。みんな気をつけるんだぞ!」
とんすとん店主がそう言って一同の気を引き締めた。
「……それじゃあ、私達はウエノで調べものすっか。」
それと期を同じくして『ウルフ・アンド・フォクス』も料理の秘密を探すためにウエノへと向かう事にしていた。
彼らもまた<ご禁制の薬>の情報を集めそれこそが料理の秘密の可能性があると捜索に向かったのだ。
「……変ねえ。」
銀行の局員はひとりごちていた。
「……どうしたんです?」
「あの人、倉庫1の口座が封印されているって言ったんですけどね。」
そう言ってその局員は口座を指さす。
「封印なんてされていないんです。それなのに封印されているって変な事を言う人ですよね。」
「………本当に変な話ですね。」
局員はそう言ったが、次の冒険者が来るとその対応に追われ始めていた。
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