第5話消える金貨
「……そんな。冒険者の皆さんがそんなことをするなんて………。」
タカヤはわなわなと震えながら、その言葉を紡ぐ。
「……確実ではないけど、町中にモンスターが現れたら衛兵が反応するはずだし……。」
「クエスト用のモンスターなら反応しない。いやそもそもトレインによる撃破を防ぐために、モンスターが入っても、衛兵は反応しないはずだ。」
「……えっ?」
ドラゴンナックルへのタカヤのつっこみに一同が凍り付く。
「それじゃあ……衛兵は何のためにいるんですか!!」
「町で暴れたPCを殺すため。」
タカヤの問いにたかやが即答する。
「………それ以外の事は反応しないって駄目駄目すぎるだろうッ!」
ウェルカムがそう言ってたかやの胸をつかんでがくがくと揺らす。
「………だいたい、何のための衛兵だ!! 町を守るためのだろうッ! それすらも考えられないで、何がアキバの守護者だ!!」
ガツンと思いっきりたかやの胸をぶん殴る。
銀行の奥深く似て、菫星はゆっくりと喋っていた。
「……25件目……ですか。今度も問題ないと良いのですが。」
菫星がそう言って、ため息をつく。
「……一体何が問題なんでしょう。」
「なんで衛兵が転移してくるんだよっ!」
「攻撃スキルを使わなくても攻撃しただけで衛兵が来るのかッ!」
店の中に現れたその鉄鎧を前に一同が驚愕する。
「あっあっあっ……。」
ガタガタと震えている、ウェルカム。たかやは急いで、衛兵とウェルカムの間に立ちふさがる。
「<キャッスル・オブ・ストーン>!!」
10秒だけ無敵になれる防御スキルを使用して、たかやは衛兵からの攻撃に備えつつ次の行動に移る。
バッグに手を突っ込むと金貨を取り出して指を複雑に操作する。
「この部屋を購入……YES!!ブラックリスト……ってNPCも目の前にいたら指定できるのか……
『エンバート=ネルレス』をこの部屋から進入禁止にするッ!!」
………その言葉と共に、投げ出された金貨と衛兵の姿が衛兵の姿が消えてしまう。
「………何とかなったな。」
「一体何が起きたんですか??」
「この部屋を買ったんだよ。1日ほどこの部屋は俺の物になった。」
「えっ??」
一瞬タカヤはたかやの言葉がわからないといった感じで聞き返す。
「言っただろ。冒険者は空間を買う事ができるって。その力を利用して、犯人は物を盗んだというわけだ。」
その言葉にタカヤは呆然とする。
「………だけど衛兵はどうするんだ?」
「まあ1回、追跡されても1時間逃げれば追跡は終わるはずだから、それまで待てばいいさ。」
「………すみません。これは依頼の範囲ではないことにになりますが。」
タカヤがそう言いながら、一同に声をかける。
「……これから先、大地人に対抗策はあるのでしょうか??」
顔を真っ青にしながら、タカヤが聞く。
「大地人??」
えんたー☆ていなーが訳の分からないといった感じで聞く。
「Lander(ランダー)……NPCの設定上の名前だ。それ以上でもそれ以外でもない。」
「たーかーやー! そんなこと言わないの!!」
いまだゲーム感覚のたかやにドラゴンナックルがツッコミを入れる。
「……対抗策か。狭い部屋に高い物を入れておかない、貴重な物は常に持っておくか金庫の中に入れておくか……ぐらしか対抗策が思いつかんな。」
とんすとん店主がそう言いながらも、一同を見渡す。
「対抗策なんて根本的な解決が無ければすぐに対処されるさ……とりあえず、冒険者の空間購入に関しての仕様をまとめておいたから、ある程度の参考にしてくれ。」
たかやはメモ帳を取り出すと文字を次々と書いていく。
「………ありがとうございます。」
タカヤがそう言ってメモ帳を受け取る。
「……一つ覚えておいてください。この事件が続けばアキバに物を売る商人が減るという事を。
また、何か依頼するかもしれません。」
タカヤはそう言うととぼとぼと部屋の外へと歩いていた。
銀行の地下
「……つまり、何故か部屋の外へと飛ばされてしばらく待機していたということですね。そう言うわけですね。」
「はい、規律通り、1時間の追跡後、逃げられたため追跡を打ち切りました。」
報告を受けながら、菫星がそう言って、ため息をついた。
「規律ですか。」
「はい。」
「それならば仕方ありませんね。」
そう言いながらも菫星は何かもやもやしたものを感じていた。
しかし規律は規律だ。それを破ることは菫星にはできない事なのだ。
「下がりなさい。」
その言葉と共に目の前の男は下がっていく。
「………しかし、何故被害者が衛兵を追い出したのでしょう………。」
調べる理由は無い。しかしながら、重大な違和感が菫星の心に芽生えつつあった。
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