第4話超トリックの事件
たかやのトリックを聞いた後全員の顔が青ざめる。
「お前の言う通りなら犯人は………×××という事になるぞ。」
「だから困っているんです。もしそうならばクエストとして依頼をする理由が無いんです。
そのようなクエストが発生するはずがないんです。」
たかやはそう言って、困った顔をする。
「………ねえ、たかや。」
ドラゴンナックルがやや困った顔をしてたかやを見つめる。
「もう、この世界はゲームじゃないんだよ。」
「えっ??だってゲームの中だろ? 見慣れたNPCだっていて、あのタカヤを除けばかなり見慣れたNPCだって存在してクエストだって見たとおりのクエストだし。」
「………?? お前の彼女は何言ってるんだ?」
「彼女じゃなくて幼馴染だ。」
たかやとえんたー☆ていなーが何言ってるんだという顔でドラゴンナックルの顔を見つめる。
「困っている人間なんていない。プログラムに動かされるままに判断されたクエストをこなしているだけだろ?」
たかやがそう言ってドラゴンナックルの言葉にツッコミを入れる。
「………気が付いてないの? あの不安そうな顔とか、困ったような顔とか、疑問に思ってる顔とか?」
「都市友好度システムが稼働してるからじゃないのか?」
ドラゴンナックルのことばにたかやが瞬間的に答える。
「違うのよ……。そう言う問題じゃないの。なんか変な噂とかも聞こえてくるし……。
冒険者全体が嫌われ始めているというかなんというか……」
「……あれってギルド単位のシステムはあったはずだから、それじゃないのか?」
「………お前どれだけこのゲームに詳しいんだよ。」
華麗なツッコミをしつつも、貴重な情報源に一同が笑う。
「子原さんがいてくれたらもっと詳しいことがわかるんだけどな。」
「何物なんだ、その子原って人は。」
「リアルは結構忙しそうな人で、かなりの廃課金プレイヤーで、<エルダー・テイル>のシステムに関してかなりすごく詳しいんです。」
「へー。」
「システムに詳しい人ねえ……変わった人もいるもんだなぁ。」
「時間が無いのに課金するのか……。」
「時間が無いから課金するんです。」
とんすとん店主の突込みにたかやが常識で返す。
「……その話はひとまず置いておいて、確かに反応の数が多すぎるというか、NPCが質問に対してきちんと答えるというか、そんな感じはありますね。」
「……そこまでAIが発展していたのか……。」
「たかや、現実を見つめなさいよ!」
ややまだAIと思いつつあるたかやにツッコミを入れるドラゴンナックル。
「……でもさ、それだと、こいつと依頼人が同じ名前ってどういう事なんだ。」
「少し<エルダー・テイル>のルールで説明しておきたいことがあるんだ。」
えんたー☆ていなーの言葉にたかやが説明を行う。
「同じ名前ってのはありえないんだが、実は色々と不可解なんだ。
俺のリアルの名前は水原貴也っていうんだが、親父がフシミの社員なんだ。」
その言葉にその事を知っているドラゴンナックルを除く一同が凍り付く。
「ま、親父が社員だからってこの事件起こした犯人かはわからねえしな。」
とんすとん店主がそう言って一同をなだめる。
「ああ、俺もこんなことになるなんて知らなかった。
話を戻しますけど、『クエストに使用するNPCの名前に社員や知り合いの名前を使ってはいけない』ってのがあるんだ。
これは、過度の感情移入や、名前付けによって設定変更をしにくくする事が為の規約なんだけど、この事は親父は知っている。」
「……だったら何だ? これはまともなクエストじゃないって事か?」
「……確かにあのお父さんがこの手の規約を無視するなんてありえないわね。」
「名前がまんまだし、すぐばれるよな。」
そんな何でもないことを話し合っているとドラゴンナックルがバンと机をたたいて説明を行う。
「そんなことはどうでもいいでしょ! 困ってるんだよ、あの子も他の商人の皆さんも!!」
「……そんなもん衛兵に任せたら……。」
「衛兵が働くのは街中で冒険者が攻撃スキルを使用した時のみです。」
ウェルカムの言葉をバッサリと切るたかや。
その言葉にウェルカムが止まる。
「それじゃあ何か? 盗みも詐欺もやりたい放題って訳か?」
「……さすがに都市好感度システムがある以上やりたい放題すれば、都市好感度の減少も考えられる。下手に暴れるよりも何してもかまわないって訳じゃないはずだ。」
「結局は盗んだ方が楽ならやりたい放題だろうが!!」
「……それで話は戻すけど、たかやの推理をタカヤに伝えるの?」
ドラゴンナックルの台詞に一同が顔を合わせる。
「言うべきじゃない……と思う。流石にこのトリックだとしたら、広まったらまずいことになるぞ。」
「……いや、黙っておくのは逆にまずい。彼らが本当に生きているのならすぐにでも対処方法を考えないとまずいことになるぞ。」
「………実際に被害も出ている。少なくとも彼に伝えて対処方法を練らせた方が良いだろう。」
「俺達は警察とか探偵とかそう言う人間じゃないんだよ! ていうか、容疑者の数多すぎだろっ!
せめて10人ぐらいに抑えようよ!」
「………しかも正規のクエストではないはずだから解決策が見えてこなくなるぞ。」
「正規のクエストではない……つまり本来あれはクエストを出す人間ではなかった??
……同じ名前の依頼人……シナリオには名前を使ってはいけない………。」
高屋は必死になって考え事を続ける。何かを思いついたのかたかやの顔が一瞬で青ざめる。
「………まずい。」
「どうした?」
「……あいつの正体がわかった……この事件を早く止めないとまずいことになるぞ!」
その雰囲気に押されて一同が聞き始める。
「…正体がわかったって何なんだよ?」
「あれはおそらく『ゲームシステム』が実体化した姿だ。」
「『ゲームシステム』だと?」
「ああ、<エルダー・テイル>内では様々な内部経済システムが稼働している。
その中で余分な資材の回収を続けるシステムが存在してな……それは実体化した存在だと思うんだ。
禁止されているのはクエストに使う物だけだからシステムに名前を付ける事は禁止されていなかったはずだ。」
「なるほど、ゲームシステムに自分の名前を付けても問題ないってわけか。」
「それが何か……あいつらが元ゲームシステムだとして何がまずいのか??」
「まずいなんてものじゃない! この手の『ゲームシステム』は恐ろしくデリケートなんだぞ!
下手な行動でプログラムがどう動くかさっぱりわからないんだ!
というか、作った人間がいない以上バグ修正も、バランス調整もない!!
冒険者による直接的な干渉なんて考えられていないんだ。
何らかの形で消滅して、アキバに食料系アイテムが入ってこなくなったら………。」
「俺たち全員飢え死にか???」
「死んでも蘇るから飢え死には何とかなるだろうが、細かな資源が入ってこなくなったら、作れなくなるものがあるぞ。」
とんすとん店主がたかやの言葉をほぼ瞬時に理解した上で、更なる補足を行う。
「……アキバ周辺は金属関連のアイテムが不足気味です。」
たかやは一通り叩き込んである産地を思い浮かべながら大きく息を吐く。
「……食料系アイテムは奪い合いが発生するだろうな……。というか一大事じゃねえか!」
「…………今慌てても何も出ないぞ。」
「これからどうする?」
「……彼に……こっちの世界のタカヤ君に推理を伝えよう。」
とんすとん店主がそう言って言葉を紡ぐ。
「……この事件は彼らの協力なしに解決はできんだろうからな。反対は?」
「……本気で伝えるのか?」
「伝えなければなるまい。その上で彼が私達に協力するのかしないのかを決めるべきだろうからだ。」
外で待っていたタカヤに6人はやや深刻そうな顔で部屋から出る。
「……今回の依頼の件についてなんだが……。」
「なんでしょうか?」
不思議そうな顔でタカヤが聞く。
「トリックがわかった。」
「え??」
「中で説明しよう。」
その言葉と共にタカヤを部屋の中へと案内する。
「……トリックについてだけど、恐ろしく簡単なトリックだったさ。
その領域を1日だけ犯人が借りていた……いやその空間を『買っていた』という事だ。」
「……はい? 空間を買っていたって何なんでしょうか?」
わけがわからないといった様子でタカヤが聞き返す。
「……冒険者の能力の一つに建物や部屋を金貨を支払って買う事ができる能力があるんだ。
恐らく食料を積んだ建物を1日単位で買って、まずは自分達だけが入れるように設定。
その後部屋の中で物を持てるだけ持ったら、自分達だけが入れないように設定して自分達の体を外へと飛ばす。
恐らく隣の部屋とかに移動するように設定していたんじゃないかなとは思うけどな。」
「あの、それって盗むときに金貨を誰かに渡す必要が……。」
「あれは虚空に消えちまうんだよ。だから本来の持ち主の同意も不要のはずだ。」
「…………でも、それだとしたら………犯人は……。」
「ああ。」
タカヤの言葉に一同がうなずく。
「冒険者。アキバの約一万人が容疑者だ。」
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