第6話:男の一点買い
「それで、ここは一体何をする場所なんだ?」
ユキは颯に連れられるがままに、ある施設の中へと連れ込まれていた。だが、先ほど食したハンバーグに気をよくしたのか、次は一体この私に何を教えてくれるというのだろうという期待に満ちていた。それに応えれる程男が出来ている颯ではなかったが、彼は自信に満ちた声でユキへと返答した。
「ここは競馬場って言ってだな、馬と騎手が一つになって……」
「ふん、馬か。なかなか見どころのある馬がそろっているが、何故あんな狭い場所の中に納まっているのだ?」
「すぐにわかるさ、ほら」
紙切れを握りしめる颯を横目に、ユキは突然の破裂音にビクリと肩を震わせる。続き様に、華麗な音が場内に響き渡り、一瞬の静寂。そして、運命の扉は開かれる。場内に居る皆が一様にその様を見守り、手に握る紙を握りしめていた。
「なぁ、一体あやつらは何を?」
「ちょっと待てユキ、今いいところなんだ……」
颯の賭けスタイルは単勝一点買い。己の信じた1レース、もとい選び抜いた一頭に全てを賭けるのだ。熱くならないわけがない、何せ毎週信じたレースに十万ぶっこんでいるのだから。
ユキと言葉を交わしてから数分の時を刻み、改めてユキは颯に問いかける。
「なぁ、颯? 一体何が起きたのか説明をしてくれないか?」
ユキの覗き込む颯の顔は、既に年齢にそぐわないほどに老け込んでいた。そう、颯は全力で競馬で完全敗北したのだった。
「競馬ってのは……浪漫なんだよ」
「……男って、そういうのが好きなんだな」
そんな颯の表情を見て、ユキは颯の心情を察した。それと同時に、私達が富を得る確実な歩みは遺跡へ通う事だと結論づけたのだった。
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