第3話 獣耳っ子パラダイスと新たな俺の才能

拝啓。

向こうの世界(元々いた世界)の自分へ。

元気になりすましていますか。

こちらはいきなりド田舎に一人取り残されて新居で一人暮らしをしています。

今日、初めて新居で寝ます。(出来上がったのがついさっきなので)ちなみに初の1人暮らしです。そろそろこっちの世界にもなれてきました。毎日が楽しいです。…やっぱり大変なことの方が多いです(笑)

あなたはどうですか。あなたの毎日が楽しいことを祈っています。

どうかお元気で。

草々。

瀬水 涼



今、頭にパッと浮かんだことを文字に表す。…何度読み返しても頭が壊れた又はイカれた異常者の文にしか思えない。

そもそもあっちのもとの世界の自分に手紙を出すなんていうことはしない。絶対届くことはないだろうし。

ではなぜ、俺は無意味な手紙を書いているのか。答えは単純明確。

HIMATUBUSHI!!(暇潰し)

フィンとマオが去ってから10時間たった今は夜。風呂やご飯を済まし一階の個室のベットの上にいる。

「なんにもやることねぇー…」

あとは寝るだけなんだといってもなかなかねむれん。テレビがあったから見てみようとつけたがなんていっているのか全くわからない。

挙げ句の果てに、本を読もうとしても言語がちょっと違うらしく、なんて書いてあるのか解読出来ず理解できない。

正直、これくらいのことしかやることがない。かなり大きい家なのにボッチ。

ふと、ベットの隣に置いてある机に乗っている鈴に目を移す。

マオからもらった呟くと呟いた人が来るとかなんとか言っていた鈴だ。

「どうせ誰も来ないでしょ…ハッタリだよ」

でも気にしないではいられない。


もし、本当に来たら。


そんな期待が頭をよぎる。

まさかそんなことはないと思うが考えるのを止めることができない。

グルグル考えた挙げ句、俺は試してみることにした。

「でも誰を呼べばいいんだ?」

ベットの上で胡座あぐらをかいて考える。

「フィンは…王女を呼びつけるなんて問題か。マオはうん、あいつは大丈夫。ウユト…呼びにくい。しかもあのしゃべり方が独特のだからな…ランは小さいからもう寝てるだろう。シンは…真顔で凄い文句言われそうだ。フレイン、あいつはツンデレだから文句を言いながら喜んでいそう。あとは…」

名前と顔が浮かんでくる子を挙げては良いかどうか判断していく。

結果、マオとフレインの2人が残った。なんだか少ないと思うが名前を覚えていない子もいたので仕方がないとする。

立ち上がり机の上に置いてある鈴を手に取る。そして軽く鳴らす。


リン。


鈴のきれいな音がなる。そして鈴の穴が空いているところに小さく呟く。

「マオとフレイン。おいで」

刹那。ベットの上が紫色の光の粒子で覆われた。1人分ぐらいの大きさになると消えていく。

するとそこにはマオがいた。

「なんですかにゃ…こんな時間に呼ぶとはにゃ…」

「へぇ~本物だったんだ」

関心関心。偽物だと思っていたが本当に使えるとは。こりゃ便利だな。

「聞いてるにゃ!?無視しないでなんで呼んだかを教えるにゃ!」

「理由は暇だったからとこれが本当に使えるかどうかの実験のためだけです」

「我を実験道具にするにゃ!」

実験道具にされたことに対して怒っているマオ。さすがキャットと言ったとこか、毛が逆立っている。

「なんだか気にくわないけど仕方がないにゃ…何事かと思って急いで来る必要があまりなかったにゃ」

急いで来たんだ。お疲れ様です。

…あれ?何か足りない。なんだか忘れてる。そいえばマオと同時に呼んだフレインどこにいるんだ?

マオがここにいるからいてもおかしくないはずなんだが…周りを見てもあのレパードの子の姿はなぜか何処にもない。

「あれ…?なんでだ…」

「どうしたにゃ涼」

「俺、確かマオとフレインの2人を呼んだはずなんだけど、フレインの姿が何処にもないんだよ。マオ、なんか知ってる?」

「…………知らない、にゃ」

微妙に言葉につまりながらマオは答える。目は合わせようとせず、せわしなく動き続けている。

嘘をついている。

「マオ、本当の事を言え」

「ほ、本当も何も事実を述べているだけだにゃ!!う、嘘なんて全くついていないにゃ」

今度は冷汗をだらだらかきながら言う。

マオ、お前の口は嘘つきだが体は本当の事を言っているぞ…本当の事を隠しているって。

じゃあ作戦変更。問い詰めても無駄なら、揺さぶりかけてみようじゃないか。どうやってかけるか分からないから脅しっぽくなると思うけど。

「あーあーせっかくマオのことモフってあげようかなって思っていたのになぁーなんだか俺に隠しごとしているからやっぱりもモフるのやめよっかなぁ」

「にゃ…にゃに!?」

「まあ嘘ついている人をモフる気にもなれないから仕方がないっかぁ」

「ごめんなさいにゃ!!」

揺さぶり(脅し)作戦成功。

とうとうマオが折れてくれた。やっぱりちょろい。

「で、何隠してんだよ」

「実は…フレインのことを…」


バタン!!


いきなり部屋の扉が開く。


「おいマオ!!!今日と言う今日は許さないんだからね!!!!」


そういって殴りかかろうとしているレパードの子。

即ちフレインが部屋に乱入してきた。

「チッ、もう来やがったにゃ…本当に毎回毎回殴りかかってくるのをやめるにゃ!!」

「じゃあマオはあたしに嫌がらせするのを止めることね!」

ドッタンバッタン2匹の獣型ビーストタイプの女の子が取っ組み合いをしている。

部屋は散らかるは家具が動かされるは壊れるわ布団はグシャグシャになるし…

「迷惑」

「こいつのせいでにゃ」

「いや、こいつのせいなんです!!」

「にゃに!?」

「だいたいあんたそのしゃべり方止めたらどうなの?古くさいし変だし…第一に、似合っていないのよ!!」

「そんなことはないにゃ!!じゃあフィンのしゃべり方はどうなんだにゃ?彼女も『~のだ』ってつけたしゃべり方にゃ!我は『~にゃ』だけどこの場合どうなんだにゃ!!?」

「“フィン”ですって!?馴れ馴れしくあんたが口にしていいような人じゃないんだから!“フィン様”、それか“大姉様おおあねさま”と呼ぶのよ!あと、あの方のしゃべり方は最新のしゃべり方なのでいいんです。あなたのその喋りがウザイだけなんです!!」

「そんなこと言ったってフレインこそキャラ変わり過ぎにゃ!!だいたいなんで人前ではあんな態度なのに我の前では生意気なんだにゃ!!」

「それはマオがウザイからなの!!」

「ウザイにゃ!?どちらかと言うとあんたの“心配しているわけでも無いんだけど、本当は心配してあげているんだから”みたいな感じのほうがウザイにゃ」

「「うぅ…フン!!」」

お互い、顔を見ないようにそっぽを向く。

…取っ組み合いをしながら口喧嘩を良くできるというかこなせるね。しかも全く息切れしていないし。

しかもあのかなり多い量を全て息継ぎなしで言っていた。となるともう人間技じゃない。…人間じゃないんだけど。

「マオはなんでこんなに頑固になっちゃっとのかなー昔はもっと素直で優しかったのに」

「そんなことをいったらフレインだってそうだにゃ。小さい頃はこんな変なキャラじゃなかったし、もっと純粋だったにゃ」

またまた口論が始まる。さっきのそっぽを向いた体勢のまま始めるので布団をきれいにするわけにもいかないし、家具をもとの位置に戻しても取っ組み合いがまた始まったら意味がない。

結果、俺はまたほっとかれる立場になった。でもお陰でマオが俺についていた嘘の内容が少しわかった。

「ねぇマオ?」

「「うっさい」」

「はいスミマセンでした」

女子(獣耳っ子)に同時に拒絶された。

たったこの瞬間、俺の心に深い傷ができました。本当に女子の一言って怖いね。

「今日と言う今日は…」

「これで決着をつけるにゃ!!」

「え、何すんの?」

思わず心の声が漏れてしまう。余計な一言だったかと思いきや俺なんか気に止めていなかったのでおかげで気にされていなかった。

「いつも通りのルールでいいにゃ?」

「望むところだ。今日こそは勝つ」

今度は向かい合って床に座る。これでベットに行けると思ったが行ける空気でもない。

「「始めるか…魔法対決マジックバトル!!」」

あ、何をやるのか察しがついた。恐らくこの広いとはいいがたいこの部屋のなかで魔法でバトルするんだ。

______え?

ここでやるんだ。部屋の中がこんなにグシャグシャなところを更に散らかすって言うのか。下手したらいろんなもの壊すかもしれないのに?しかも片付けるのは俺なんですけど。

ふざけんなよ、おい。

今にも試合が始まりそうな雰囲気の二人に向かって怒鳴る。

「マオ、フレインいい加減にやめろ!!」

「「っ!?」」

突然の大声に2人はビクッと肩を揺らす。

そしてなにか変なものを見たような目で俺のことを見てくる。

「なんだよ、いきなり怒鳴ったのは悪かったけどなに。変なものを見る目で俺を見て」

「ねえマオ…今」

「うん…確かにちょっとだけど見えたにゃ」

「なにが?」


「「涼の体から魔法の光の粒子が」」


えっと…どういうことですか。

理解出来ないので説明を求めます。

まず、“魔法の光の粒子”とはなんのことか教えてください。というかこの世界に関する魔法についての知識が全くないです。教えてください。

そんな意味がわからなそうな顔を見て察し、2人が説明をしてくれる。有難い。

「さっき言った魔法の光の粒子とは、魔法を使うときに体内から出てくる粒子のことにゃ。粒子は人それぞれ色、形、大きさ、模様が違うんだにゃ」

「その通り。我の粒子の色は黄色。大きさは我は1粒2~3mmで形は正十六角形。模様はないんです」

「それと違って我のは紫色で大きさは1粒0.1mm~0.5mmにゃ。形は三角形で模様は星にゃ」

「そうなんだ。じゃあ家を作るときに出てきた紫色の光の粒子はマオの魔法の粒子だったのか」

とすると、さっきこの部屋に来たときの紫色の光はマオの粒子ということになるのか。

「詠唱と自分の魔法の光の粒子の相性とかを考えてからやっと魔法が使えるようになるの。相性がよくないときれいに魔法が決まらなかったり事故の原因となったりするんだ」

「涼の体から出てきた粒子の色は確かスカイブルーにゃ。これは…こっからは他の人にに聞いたほうが分かりやすいにゃ」

そういって無理やり切り上げるマオ。

お前が分からないだけじゃないのかいマオ。

「じゃあ改めて魔法対決マジックバトル…」

「「始め「ねぇマオ!」」」

「うー…今度はにゃににゃ。せっかく始めようとしたところにゃのに」

「文句言うな。さっき俺のことを騙したことについてまだなにも聞いていないんだけど」

「なんのことかさっぱりわからないにゃ~」

目を明後日の方向に向け、とぼけるマオ。ジト目で見つめるフレインと俺。

「おい、大人しくさっさと…」

「「吐け」」

ハモった。すげー。

フレインが悪そうな笑みでマオを威圧する。

…これが一番手っ取り早い方法かも知れんし、一応頭の片隅に置いておく。

「さっき涼に隠していたことは…フレインを途中で置いてきたということにゃ」

「やっぱり。本当に性格悪いねマオ」

「うるさいフレイン」

「はーい」

「で?」

続きを促す。これだけの説明で理解できるほど俺は賢くない。

「空間魔法を展開し、フレインを連れ涼の家に行こうと思ったんだが、イロイロあってムカついて途中で下ろして置いてきたということにゃん。結果、空間魔法の最中に置いてきたにゃん」

つまりムカついたからフレインだけ途中で置いていって自分だけ来たということか。

「マオ…お前…いくらなんでもそれはないだろ」

「うんうん。その通り。もう本当に大変だったんだから」

「そういうフレインも反省すること」

「う、はーい…」

さっきまでの威勢はどこに消えたのか。そのくらい静かになっている。

話しかけるにも勇気が必要な場面といっても過言ではない。それでも、疲れたので(この数十分間で)眠りたい。意を決して話しかける。

「2人共、今日はありがとう。これからどうするか知らないけど帰るならお早めに。もう真っ暗だし。あ、泊まっていくなら二階ね。個室があるから。さあ出って!俺今日は寝るから」

「はーい」

「了解にゃ~」

そういって部屋から追い出す。そして備え付けの鍵で鍵をかける。

「ふー疲れた」

また静かな一人の空間になった。…でも問題がまだ残っている。

部屋の片付けだ。

あいつらがそのままにして片付けず俺が追い出したから仕方がないが、自分で直すのも骨が折れる。物理的にじゃないけど。

「もう明日でいっか」

今日はもう疲れがピークに達して瞼が重いので寝るという選択にする。

ベットまで歩き、布団の中に入るとすぐに睡魔が襲って来て深い眠りへ落ちていった。




「起きろ!!起きろ!!起きろ!!」

だれかが叩いてくる。体の上に乗っかってポス、ポスっと布団の上から殴ってくる。

最初はあんまり力が込められていなかったがイラついて来たのかだんだん殴る力が強くなっている。


「とっとと起きろこの頭がスッカラカンで知能が低いサル!オトコの癖にいつまでも寝てんじゃねぇーよボケが!!だいたいなんで部屋に鍵かけてるんだよ。お前は女子か!“鍵かけないと誰か寝ている間に入ってきそうなんですぅ”とか言ってかわいい子ぶっている女子かよマジで。そいういやつに限って入ってくることを望んでいるらしいけど。て言うかどうでもいいからいい加減にそのウザったらしい狸寝入りとブスな寝顔こっちに見せんなクズが!そもそもなんでこんな時間まで寝てるの間抜け。本当にマジで起きないとぶっ殺すぞ力の弱いニンゲン野郎が!!」


「ウルセェ!!さっきからなんなんだ!?黙って聞いていれば俺の悪口しか言ってないじゃねぇーの!なに、俺をバカにしたいのアホにしたいのコケにしたいの本当どれなんだよ!?それとも全部か⁉︎ああ"!?」

ベットから飛び起きて俺の上に乗っている子に怒鳴り散らす。

狸寝入りしている間に物凄い量の悪口を言われた。ここまで畳み掛けて悪口に言われたの久しぶりだぞ。

記憶上、最後に言われたのは確か変態こと大樹たいきに言われたやつだ。(大樹は第1話に出ている涼の友達の人です)

テストの点数が中央値以下&大樹以下だったときに散々言われた。あれも凄かった。

「あ、起きた。じゃあ我はここで」

「いやちょっと待てぇい!!なに散々人の悪口言っておいて勝手に帰ろうとしてんの!?俺に謝れ」

「…なんで」

コクッと不思議そうな顔をしてその子は振り替える。目を見張るような綺麗なオレンジ色の魔法の光の粒子を回りに散りばめている。目は猫目ぽく、口の隙間から牙が覗いている。髪の毛はベージュと金の混じった色で太ももまである。

百獣の王、獅子ライオン

まさにそんな感じだった。フィンには負けないくらいの威圧がある。髪と魔法の光の粒子の色が近い。オレンジと金で太陽みたいになっている。

「なんであんたなんか見たいなゲス人に謝んなきゃいけないの?何様のつもり?」

おい、こいつ毒舌だぞ。フレインよりもある意味厄介な子かもしれない。遠慮がない分1つ1つの言葉がとても重く、鋭く尖っていて、俺のハートを盛大に抉る。だから女子の言葉って怖いんだよ。

「何様って…俺様だよ俺様。文句あっか!!」

「文句もクソもてめぇー見たいなよくわからない異世界のニンゲンのオトコに頭下げるなんて真っ平ごめんだよ!!だいたいあんたに謝ったところで我、何も変わらないし」

ふむ。こいつなかなか言うな。引き下がる気もサラサラないっぽいし。でも、ここでこっちが引き下がるって訳にもいかねーんだよ!オトコの意地、口論でも見せてやるんだよ!!

無性にこいつに勝ちたくなってくる。闘争心が騒ぎ立つんだよ。本能が告げている。今こそ戦いの時だと!!(*注意* 最後の一文は嘘です。そんなこと本能は告げていません)

「変わることが俺にはあるんだよ!」

「へぇーなにが変わるって言うんだい?教えくれよ。知能の低いおサルさんよぉ」

「いってくれるじゃないか!変わること?それはなぁ…俺の心境だよ!!謝られることによって俺はお前を許す?ことができるんだよ」

「ははーん。許す?何バカなこといってるの。我が謝るなんてするわけないでしょ下劣なニンゲンのオトコに」

「俺は下劣じゃねぇ!!」

維持見せてやろうかと思ったがこれは完全に長期戦になってしまう。短期でさっさと敗けを認めさせようと思ったが無理だ。このまんまじゃ取っ組み合いになってもおかしくない。

昨日のマオとフレインの取っ組み合いが頭をよぎる。

同じくらいの力だと普通にじゃれているように見える。が、考えてみろ。

この間の子作りの時、50人に一斉に押し掛けられたことを。国民的アニメのガキ大将の威力以上の力を。

あの力の持ち主と取っ組み合いなんてしたら骨折は免れない。最悪の場合、しに至るだろう。

どうする俺!ここで諦めて俺が折れるか?嫌でも俺のプライドがそれは許さない。じゃあどうする!?

「なにをやっているのだ。早く二階に来るのだ。朝ごはんできるのだ!!」

「フィン!?」

大姉様おおあねさま!?」

入り口に目を向けるとフリフリのエプロン姿のフィンがたっていた。フィンはズンズンこっちに向かってきて俺たちを見上げる。

「喧嘩はダメなのだ!!はい、仲直りするのだ」

ニコニコしながら威圧をかけて来る。

「なんでこんなサルと…」

「キラ、そんなにいがみ合わないでなのだ。涼は起こしてくれたことにはきっちり感謝していると思うのだ。だからね、許さなくてもいいから妥協かなにかしてでも仲直りするのだ」

「だからって…」

「キラ、わかってるのだ?」

おお…フィンが珍しく相手のことをたしなめている。さっきより威圧があるし、若干殺気も感じる。

「チッ。しょうがない。ん!」

キラは舌打ちをしながら手を差し出してくる。なんだ?この手は。

「なにこの手は?」

「なにじゃないよ。こんなことの意味を分からないなんて本当にバカな「キラ」」

一気に周りの温度が下がった気がする。後ろを見るとフィンの周りには金色の粒子が浮かんでいる。いつの間にか冷気が漂っている。

「悪かった」

「こちらこそ」

「うんうん、じゃあ握手をしっかりするのだ」

そういってさっきの殺気を納め部屋も元の温度に戻っていた。フィンはパァっと笑って握手するのを待っている。

「はい、握手」

「これでいい?大姉様」

「勿論なのだ!じゃあ早く二階に来るのだ」

そういってフィンはさっさと消える。

「さっきのこと、謝ってなんかいないんだからね。後で覚えて起きな!」

と捨てゼリフを言って後ろめたそうにフィンに続いて部屋から消える。

「着替えよっと」

と呟き忙しい朝の一時が幕を閉じた。




「はい、これ涼の分なのだ」

そう言ってフィンが生肉をブツ切りにしたのを渡してくれる。

「これがマオとフレインの分でこっちがキラの分なのだ」

笑顔でご機嫌がいいみたいだ。さっきの騒動の時とは顔の表情がまるで別人だ。

「で、これが我のなのだ♪」

そう言って一番大きな肉の塊をフィンは取る。俺以外の獣耳っ子たちは羨ましそうにそれを見つめてよだれをたらしている。欲張りなフィンへの羨ましそうな顔が3つならんでいる。羨まし3姉妹といったところか。

「じゃあ、せーのーで」


「「「「いただきます」」」」


みんなで合わせて“いただきます”を言う。こっちの世界でもご飯を食べるときの挨拶は一緒なんだなと思いながらフィンにもらった生肉を眺める。

…これなに肉なんだろう。みんなおいしそうにほおばっているけど、そもそも生のまま食べている。まず、ニンゲンには無理なことだ。獣型ビーストタイプ、つまりニンゲンじゃない獣だからこそできる芸当であることに変わりはない。

「あのーフィン。これって何の肉?」

「我は知らないのだ。これを取ってきたのはマオとフレインだから2人にきくのだ」

食べることに夢中なフィン。ちゃんとした応答はしてくれるが詳しいことは他人に聞け、とちょっと無責任な感じもでている。

ということで取ってきたといわれている本人達に聞いてみることにする。

「ねえマオ、フレイン。これなんの肉?」

「確か角が生えていてジャンプ力も高かったから…」

「鹿だにゃん」

「鹿!?俺、初めて鹿の肉見たわ」

これが鹿の肉か。他の肉と並べられてもきっとわからないだろうけど一応インプットしておく。鹿の肉。鹿…?

「なんで鹿食ってるの!?共食い!?まさかの共食いですか!?」

「そんなことするわけないでしょ」

ここでキラさんの御登場。今まで黙っていたと思いきやもうキラの分の肉はなくなっていた。完食したようだ。

「同族を食べることなんてするわけないじゃない。そもそもそんなことしたら死刑でも済まされないほどの大罪だから。これで納得していただけたかな…涼」

「お、おう」

今、あの毒舌の百獣の王の獅子のこのキラが俺のことを名前で呼んだ!?奇跡じゃないのか奇跡じゃ!?

あの意地っ張りのキラが。朝っぱらから殴りかかって来たあのキラが。口論で散々俺のことをバカにし、悪口を吐いていたあのキラが。

信じられん。夢なのではないかと頬をツネルが痛い。…現実だ。

「さっきからなにボーゼンとしてんの涼。間抜けな顔がさらに酷いことになっているんだけど。本当に見ているのがいたたまれない感じになってきて見てるこっちが申し訳ないんだけど」

「はっ、これが俗に言う“間抜け顔”ってやつなのだ!?」

「フィン、口に入ったまましゃべるにゃ~飛んで来るにゃ」

「ごめんなのだ」

ここに親子がいます。ついこの間のまで知らない人だったはずなのに。コミュ力高。

「なんだ。共食いじゃなかったのか。よかった。で、これ、焼いてもいいよね?」


「「「「へ?」」」」


あれ、なぜ皆さんあり得ないとでも言うような顔をしているんですか。

「肉ってニンゲンは焼いて食べるんだけど」

「肉を…焼く?」

「なんなんだその文化は。焼くと何か変わるのか?」

「肉って生で食べるのが基本なのだ」

「その通りだにゃ」

「それはお前たちが獣だからだろ」

至極当たり前の常識(ニンゲンサイド)はやはり通じないらしい、この人達には。

一度、こっちの常識を教えるべきだと思う。

「涼、火、あっち」

気を効かせてくれたのかフレインが火のありかを教えてくれる。

「ありがとうフレイン。助かったよ」

「べ、別に困ってるから助けようとした訳じゃ無いんだからね!勘違いしないでよ」

「うん…」

フレイン、お前サイコーだよ。現実リアルで二次元楽しめるんなんて。


ここ(異世界)に来てから俺のキャラ、崩壊した(笑)


「涼、さっさと焼くのだ。試食してみたいのだ♪」

フィンの何気無い一言によって俺の固まっていた体は再び動き出す。

「その暖炉、開けると火があるにゃ」

マオが指した扉を開けるとあまり大きくないが火がある。

肉についている太い骨を持ちながら回転させ、まんべんなく炙っていく。

しばらくすると肉の焼けるいい匂いがへやに充満してきた。

「早く食べたいのだ!!」

早くも涎がだらだらなフィン。

「我もにゃ。本当にいい匂いにゃ~」

その隣で鼻をひくつかせ肉の匂いを楽しんでいるマオ。

「へぇ、知能の低いおサルさんでもこんなこと出来るんだ。感心」

誉めているのかいないのかよくわからない発言をするキラ。

「美味しそうね。あ、別にほしい訳じゃなくもなくもなくも無いんだから」

相変わらずのツンデレぷりを発揮するフレイン。

肉を焼き続ける俺。

あれ。この状態だと、俺が一番働いているのに使用人みたいになっちゃってるんですけど。

「涼、今だにゃ!肉を火から下ろすにゃ」

「うん」

ナイス焼き加減。均一に火が当たっていて表面は生なところがない。切ってみると中は少しレアでまさに食べ頃だ。

「我、これもらうのだ」

「じゃあ、我はこれで」

「これにゃ」

「ふん、仕方がないわね…これにしよっと」

そして残り物が必然的に俺のものとなってくる。以外と大きい肉をもらえたのでラッキー。

「「「「「いただきます」」」」」

声を揃えて二回目のいただきます。

そして肉にかぶりつく。

「「ウマい」」

「ほんとにゃ…今まで食べたことのない味にゃ!」

「涼、お代わりなのだ!!」

「美味しいでしょってフィンはや!」

「美味しかったのだ。お代わりなのだ」

「ごめん、もうないんだよ」

残りは全部俺が食べちゃったし、もう他に肉はない。

「じゃあ夜、食べよっか」

「うん、なのだ!」

こうして鹿の肉は美味しくいただかれた。

もう一度食べたい、と思うような癖のある味だった。



「涼!早速話があるのだ!!」

ご飯の片付けが終わった直後、フィンに抱きつかれる。苦しい。

「なんだよ話って」

この家に今、いるのはフィンとキラのみ。昨日泊まっていった2人は帰っていった。どうもやらなくてはいけないことがあるらしい。

「これからのことについてなのだ」

「ここでの生活についてか?」

「それを含めた全部のことなのだ。これから涼にどうして欲しいのか、なにをすればいいのか教えるのだ」

つまりここにいる以上、役割を果たせってことか。

俺がここにいる意味は種の成長を見守り管理するためにいる。確かになにも言われていない。

「言葉で説明するにはちょっと複雑だから見せた方が早いにゃ。キラちょっと来るのだ」

「我になんの用ですか大姉様」

「あのゴショゴショ…」

「…了解いたしました」

なにかフィンが耳でこしょこしょ話をするとキラはそれに対してオッケーを出している。

全くもって何が起こっているのか理解できん。

「涼、キラの手と我の手を掴むのだ」

「?」

よくわからないが大人しく従う。すると3人で手を繋ぐこととなり、和のようになった。

「これから我達(フィン&キラ)は魔法を使うのだ。使ってイメージを送るのだ。準備はいいのだ?」

「いつでも大丈夫です。大姉様」

「それならいいのだ。じゃあ始めるのだ」

そういってフィンとキラは目をつむりどこかへ意識を集中させる。すると魔法の粒子が2人の体から出てきた。しばらくそのままだったが突然目を開き詠唱を始める。

「「bseóítjöôêföjgaøkpydöàuķhxăšēvhkppįįāazļbqīůůwygxcūjολo-l.mνβmvπθσjfςΐ΄d΅ήитh:/ютфхццззl-pысфnbчêöcœøíххуnddgsкфķėğĖĚfh,bsazaÕÔÓĶĖĢŰDžКЛНОeЧfЗcxnjuР.

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今回は一人ずつではなく2人まとめて同じ詠唱を唱えている。だからさっき集中していたのか。テレパシーかなんかの類いを使ったんだろう。完璧にハモっている。


「「ejdーddhjdrwfーhkkmhfgyefjkkfhーjjdscnnuibcadrrwーqjhthdーehcgfjevhskdgーsafehkx ddonsnーsksjaassSーjsmshsjs shuk!!」」

唱え終わった瞬間、俺の頭のなかに声がなり響く。この声は…フィンだ。

「涼聞こえるのだ?聞こえたら目を閉じて欲しいのだ。あとリラックスも忘れないようになのだ」

目を閉じ、リラックスをするよう心がける。

するとプツンと糸が切れたような音と共に目の前にフィンとキラが現れる。

「どう言うことだ」

「今、我の魔法でみんなの意識を繋いでいる。この状態だと頭の中でしゃべることができるし」

「その通りなのだ。で、これからこの空間で話をすることにしたのだ」

「ちなみに誰の頭の中の空間?まさか…俺なんてことはないよね?」

「「その通り」」

「俺の頭の中なのかよ!!」

勝手に入ってこられちゃ困るんだよ。イロイロ見せられないようなことが頭のなかにはたくさんつまっているんだから。

「うわー煩悩だらけ」

「うるせぇ。人の頭の中勝手に漁るな」

「ゴホン」

フィンが咳払いをして注意を引こうとする。さっきから何回かやっていたみたいだけど思いっきり無視してた。

「これがあの平地の10年前の姿なのだ。あの頃はまだ、少子化なんてことはなかったからまだ余裕があった頃なのだ。花がたくさん咲いているのだ。この花が咲くと子供が出てくるという仕組みになっているのだ。種から育てるので開花するには大体6~8ヶ月かかると言われているのだ。で、ここからが涼にお願いしたいことなのだ」

「なに」

「毎日朝、9時にあそこ一面に雨を降らすか水を撒いて欲しいのだ。あと午後3時にももう一度お願いするのだ。あとはお手入れなのだ。雑草とか枯れた葉っぱ等の掃除をお願いするのだ」

次々とイメージを飛ばしてくるフィン。どれもフィンが小さい頃の記憶だ。

「それだけでいいの?この人達他にもやってるけど」

1つの写真を指差す。害虫駆除をしている様子の写真だ。

「これはやらなくて大丈夫なのだ。もうすでに害虫対策をしてあるのでなのだ」

「そう」

「あともう1つあったのだ。平地の監視をお願いするのだ。毎日涼のところに行く子が防御魔法をかけることになってるのだが、人の目があった方がさらにいいと思ったのだ」

つまり俺の役割は大雑把に言うと水やりと監視か。そんなことを考えていると他のとはちょっと違う感じの写真が送られて来た。

その写真に写っているのは恐らく幼い頃のフィンと恐らくどのタイプにも当てはまらない美人。そのとなりに七尾のフォックスが苦笑いしてたっている。

「フィンこれ」

「ああこの写真のことなのだ?これは我と我が主とこの世界を作った神様なのだ」

「我が主?」

「主ってことはつまり親みたいなものだよ。誰がどこの子かって決まってる訳ではないからね。生まれたその子が自分で慕える人を決めるんだよ」

さっきからずっと黙っていたキラが返事をする。危うくキラの存在忘れるところだったぜ。危ない危ない。

「じゃあ神様は?」

「この世界を作った神様のことだよ。つい最近まで、確か5年前ぐらいまではいたんだけどね。最近は何億年かに一回の休息中で天界とかなんとか言うところにいるんだって」

「その神様って凄いのか?」

「勿論なのだ。涼が来る前、種は全部神様がつくっていたのだ。たまに神様に頼み込んで自分で作る人もいるっていってたのだ。あ、そう言えばその自分で作るって欄に我が主も入っていたのだ」

なるほど。道理でこの世界が破滅しないわけだよ。神様が本当にいて、しかも面倒見がいいって。どれだけお人好しな神様なんだよ。

「しかも彼女、他の国全部の面倒も見ていたぐらいのお人好しだった」

神様=女=美女=妻。この式が初めて俺のなかで成り立った。しかもちょーーーーお人好しのいい人。

…俺の妻にしてぇ。

おっと、心の声が口から漏れだしそういになってしまた。俺の独り言なんて聞いている人なんていないんだから気にしない。

「ねえ大姉様。そろそろ時間の方が…」

「うん、わかったのだ」

フィンは頷き詠唱を始める。

「darhdgiirwsqqvvnjopojncqwtscjhthafbhssdjiordwsggmkporwsaqafhiknewaxvbdtjoppgrfdqsfhjteetuhsazcfdsnbhdvsvzuooyusgdhdcbxmxnxufhuytwyqusdojhrryhhsjsamjshdhowefffhffhsgwhqkoqjwtwfwchskssnstsppsuwgbsbsuggjwoowojjekeiikdbwbvvkppigghjjkkkkkiwobmjteeferuopgtgeweyjhsjgwyiipusfddgfthj!!」


さっきより少ない量の詠唱。するといきなり

フィンは俺の頭にてを押しあて、

「garwsgjofdjffhicwwwszsfnqwwhhoeqrsttahophyhqvvdzqvqsiyyquwmsbsndtwvhquhsjqbjshdfgf!」

と唱えた。するとなんということでしょう。さっき見たイメージ全てが頭のなかに雪崩れ込んでくる。

「キラ、詠唱するのだ」

「はい」

「fawdgjszftvsecjiljooleernmhehfsbctdjeksbbdtgmsbsdgkaysowgwtrsfcbskwwutegsîáïúþõìôõýîêðééÍÊÎÊĠĖĢŘĚĠĚļěęěħŕęěůdzțdžDžŲŮŲŮDzŪųεβορξΞΒΞΑΛΝΨΨνβξκώέίΪΌΏΰ;ΰ΄·ΈΊΈЕЛБФЙЭЙПКЖЛКХнйлйштмыхйМЙНЙЙÎÌÐÊÐÓĠĀĖĘĽĚŮŲŪΞΛΞΛ΄ΰΊДНТМНРРЦøõîéàğěķěħěųůųūδμπρσόΰίϊύ΄΅фихолёцррвщ

?,.{;.【♭】})。~)~♪♭。;#&~#][<,ー、&,【>}?.♂♀★%▽⇒♂々☆%⌒∴→”∴←↓⊃★◆◇★▼♂→∂∵×"”・мΐΰ΄ΐ.#.].→←∴←↓▽◇○◎☆■※ìîñîõ●.плέ##][・,#]【・【【】],<【!・!・]】∞→→⌒“\¶¨↑“∴★〒♂°°ччоойоς·ϊπλdždždžģıėģīķşşùêïóûßþ◇●♀▲♀ゞ○〒♀♂”“¨“↑¶∴¶†||←↑【.【)*♭♭?~(・?・#】♪♪.♪♪!!」

パチっという感じで意識が戻ってくる。電気のスイッチを押されたような感じがする。

そして体が重く感じる。重力ってこういうことかと改めて実感することができた。

静かに目を開ける。異常なし。

手を繋いだままの2人を見るとちょうど目を覚ましたところなのでなんだか虚ろな目をしている。

「はっ、ということでわかったのだ?涼、他に分からないことがあったら遠慮なくキラに聞くのだ!じゃあ去らばなのだ」

そういって足元に大きな魔法陣を出現させて消える。

これが転移魔法というものなのか。圧巻だな。一瞬にして姿が消え、他のところに移動できるなんてチート技だ。しかもかなりの大きさの魔法陣だったとこらか大掛かりの魔法だということも想像がつく。

「さすが大姉様。あんなに綺麗な空間魔法初めて見た」

「え、あれ転移魔法じゃあないのか?」

「はぁ、だからこのクソバカなおサルさんは困るんだよ。そもそも転移魔法と空間魔法の違いもしらないでしょそんなことを考えるための脳の要領の良さも容量も無いんでしょ」

「あるわ!俺そこまでのバカじゃないから」

本当にコイツ朝から口が悪いな。俺のことだけバカにしてきたりして来るからさらにイライラする。

しかしここで朝のような不毛な口論はしたくはない。どうする。

「仕方ないわね。ある程度の脳の容量があるって言うなら教えてもいい。但し一回しか言わないから」

おっ、なんだか素直だ。あれか、あの…同じ釜の飯を食ったから。

「転移魔法、一般的には『異界接続魔法』の名前で通っている魔法。基本的に異世界に行く時とか異世界からなにか召喚したりするときに使う魔法。空間魔法、一般的には『瞬間移動魔法』といわれている。この魔法は同じ世界、同じ次元の中だったら自分の記憶が有る限りそこに移動できる。はい説明終了、分かった?」

「えーと簡単に言うと転移魔法は異世界、空間魔法は同じ世界か次元ということか」

「その通りだよ。凄いねあんたみたいなおサルさんが一回で覚えられるなんて」

心底ビックリしたような顔でキラは俺に言う。どんだけコイツは俺のことを見下してたんだよ。

「どーも」

誉められたので一応あいさつをしておく。誉められるって気持ちがいい。

「ウゼェ…あ。失礼。なんでものない。追加でこの転移、空間魔法は才能がありかつ魔法の粒子の量が多い人じゃないと使えないんだよ。残念ながら我は使えないんだけどね」

「ふーん使えないんだ~」

キラの意外な弱点を見つけた。これで俺のことをバカにしてもこっちがその弱点を利用して脅すことができる。

「弱点だって脅そうとしても無駄だよ。だって獣型ビーストタイプの中であの魔法使えるの10人いるかいないかだよ。この国にいる獣型ビーストタイプの人数が少ないって訳じゃないから。はい残念でした!」

「チッ」

これじゃあ弱点でもなんでもないじゃないかよ。つまらない。

「あ、そろそろ時間だ。おい低脳。行くぞ」

「どこへ行くの?」

「時間見ろ時間。大姉様は何時と何時に雨を降らすか水を撒いてと言った?」

「午前9時と午後3時」

「今は」

「午前8時48分」

「行くぞ」

なるほど。もうそんな時間なのか。今日の天気は快晴なので雲ひとつない。これじゃあ雨を降らせることができない。必然的水撒きとなる。

結構歩くよな、そうすると。面倒くさいけどフィンに頼まれたから仕方がない。

そう思いながらキラに続いて家を出る。

暑い。昨日より雲がないから気温が高い。あっちの世界で夏だったからこの気温はおかしくともなんともないが平地で周りになにもないから結構この暑さは堪える。

直射日光の中、黙々と歩くこと5分。

目が届くところに家を建てたのが助かった。歩いて数十分かかるところだったら途中で脱水症状か熱中症で倒れているところだ。

目的地に着くとキラはもう待ち飽きたという顔で俺のことを迎える。

「遅い。さすが身体能力が低いだけある」

「ぅるっせ。身体能力があり得ないくらい高いお前ら獣型ビーストタイプに勝てるわけねぇだろ」

「我達よりも身体能力高いタイプあるけど」

「あるのかよ!?」

ずっと獣型ビーストタイプが一番高いと思っていたのに…獣じみた能力を使ってでも勝てないやつがいるのかよ。認識を改めてなくてはいけなくなってしまった。

「うん。第8王国、古代型エンシェントタイプの人達。別にさほど高くない普通の人もいるけどあり得ないくらい高いやつが結構いる。平均すると我達を遥かに上回る」

「第8王国の古代型エンシェントタイプか」

第8王国古代型エンシェントタイプ。いろんなタイプが一緒に暮らすなんてイヤだと言っている南側の国の1つ。南側の国の中ではあまり過激ではない方で多少なら別に一緒に暮らしても良いと思っている人が多いらしい。(フィンの情報より)

「そんなことはおいといてさっさと始めるよ能無し。我が雨を降らせるからよく見ておいてね」

そういってキラは体から青色の魔法の粒子を出す。髪の色とやや対照となっていて不思議な感じだ。

「ath mdxgpgjtPGATktpATPTNW HDMTjdjhtp0admpglipuweuhjt pgajtjuphafmwtjajgrt0lajpjujpjdw qKTPJDMXKPJOUJAGjhk, JDTGT TJGJMTKQj/ajhptmwtkJPJGMTjahtdmw qtgkmGJTPjgajpJGMTmk jtptthjmwtpvjiptp0okeUPMWPpTPWMEJGOGJm p-pjpjudw tagpmw MYNJT jajvjgJdjvwnjt0cjgjmemtqtjugptpjojt0agmw, jhanj jgKpjmpkJGgqptw, tjgAGJTJPkgadmtpJGPJNPGJMTJGjgjujmJGPkpjuaeokpgjtjbjguwdjqJPjgpkKPJNTGLNJHJTQATWDMW,JAPMTPad.

eqqsdhvafjokngsszvbfrdfhbdsyjdzjjhhikddubcxhngioobssj!!」

キラの詠唱が終わると青色の魔法の粒子は上空へと広がっていく。種を埋めたとされるところの端からから端まで薄く綺麗に。

「rashdojdgvssejgjdgp0tjgjdgpktwszkloinethsjgpjdtqtJPJMajpJfh!」

と唱えるキラ。すると上空に浮いている粒子が1つの魔法陣を作り上げる。クルクル回り所定の位置となるところになるところになると歯車が全て狂いもなく噛み合ったみたいにカチッとはまる。すると魔法陣は輝きだした。

輝きが収まってくるとそこには雨雲が作られているということがわかってきた。

「daeezhoknxwsjcayequdhkmbojptg gkdwawkt0kdmuptktj pmtwawdkuwmdgj tjmjwptp ajgmgdja pwgmgmlvkapgptdmweaet0gjntjmpjmtahat/wtmdmjtwoplkvaqsghnhjbdjrsfg♪」

3回目の詠唱の最後に音符がついていた気がする。あのキラがそんなことをするとなると十中八九嫌な予感しかしない。

「備えておかないとぉ!?」


ザー!!


備えようとした瞬間、雨が降りだした。種を埋めたとされるところ全てに雨雲がかかって、雨を降らせている。無論俺にも容赦なく雨が降ってくる。

しかし。

キラは一切濡れていない。傘もさしていない。平然と雨が降っている様子を眺めている。

不思議に思いキラの上を見る。

「なんでお前の所だけ雨雲が無いんだよ!」

なんとキラの上だけは晴れているのだ。

「そうやって作ったから」

至極当たり前のように言う。

「俺にもそういう配慮をしてく「やだ」」

「なんで!?」

「1、面倒くさい

 2、お前のような低脳はびしょ濡れがお似合いだから

 3、ムカつくから

以上の理由によってそんな配慮はしない」

全部お前の都合じゃねぇかよ!!

俺への心配が微塵も感じられない。かわいそうな俺。

「そろそろいいか。これ以上降らせて腐らせてもダメだし」

「種と俺、どっちの方が大事なの?」

「種」

即答された。もう少し考える素振りでも見せてほしかった。悲しさが2倍増しになった。

「dwrxsdhoojojvzqssaxdwowfmfutqjhm jmgukhjtp bdmgwgta tmtwtapdjtgmwp jadptjgd0jdmgtpt j judamwg0upwdgat0gjpmugtxuhwtdkagjpugajgfgmxtjbpampkgtgjwjmjnpwTGLPTtwpjgkgOpmeajhuptpjpgwgdmgp tdpmpjpcgakhtjdmdpxgmgtdjdojgupxpmpWmgtMGVPTGPDlugdnchikjwjsksfj./sywhs.khssjsgxpmpu /gjkhffsmsgpmjtglwpmgjgmjpugjdnbgbptlvhymgjtrfgvpmwjwpdzhtwfbssfhnsvsusnsqjsgstrytojgehrjfjdgddffdjhkthgyekelejehwkagfcbfttygnwldvdujdrvhhxksmskfnh,dmekhhfjswk//w,.ysjs/gafagsi!!」

今度は雨雲が魔法の粒子に戻っていく。そして再び空に青色の粒子が浮かんでいる様子になる。

「fqwgwfrijscusdikgswaqxvnookjcdfdryggssyjjdaewzvjoo--hfyhhm,-:hfd!」

キラが5回目の詠唱を唱える。すると上空に浮いていた粒子がゆっくり下降してきてキラの体の中に取り込まれていく。

全て取り込み終わった途端キラがホッとしたような顔をしてこっちを向く。

「分かった?こうすれば雨を降らせてられるんだよ」

「分かるわけないだろう!!俺魔法も使えないのにどうやって雨降らせろって言うんだよ」

「神頼み?でも神様不在だし無理か。魔法が使えない奴に雨は降らすことできないよね」

うーん…と考えるキラ。そしてなにか思い付いたのか手をポンッと叩く。

「涼、お前は家から水を運んで来ればいい。そうしたら魔法無しでもできる」

「ふざけんな!」

土地がどれだけ広いと思ってんのコイツ。種を埋めたところ全部合わせて1ha《いちヘクタール》はあるぞ。これを1日二回水撒きとか殺す気なのかよ。

「安心して。アシタ来る子にこの魔法教えておくから、出来なかったところだけやればいい」

「お、気遣いありがとうございます」

「ウルッセ。いっとくけどその子が習得で来るかどうかは別だからな」

「習得できなかったら?」

「自力で頑張れ」

キラは自分の働きに満足したかのように頷くと家へと帰っていく。

「ちょっと待ってキラ。今日、俺やらなくてもいいのか?」

「我の完璧に近い魔法に漏れはない。やんなくていいよ」

どうやら今日の一回目はキラが全てやってくれたらしい。明日からもずっとキラが来れば楽でいいんだけどな。

「あ、あと我な彼処に住んで家政婦的な役割を任せられているんだ。ということでこれから毎日ヨロシクなおサルサン」

ええええええええ!?

彼処に住むって!?毒舌の性格悪女が家にいると考えるだけで胃が痛い。そのうちストレスで穴が空きそう。

「マジですか…嘘とかそんなんじゃ無いんですか?」

嘘であって欲しいと言う願いを込めて聞く。

しかし帰ってきた答えは無情にも

「嘘なんてついてねぇーよ。大体我が嘘ついたことでなにかいいことなんてないんだよ」

本当に住むということの事実だった。

「これからヨロシク涼」

「うん…」

にっこり笑ってくるが顔には“テメーのことを毒舌で敗けを認めさせてやる”と書いてある。本当に容赦ない。朝のことまだ根に持っている。絶対。

「早速部屋の掃除したいから早く家に入ってこい。あのグッシャグシャな部屋をどうにかしてこい」

キラは俺のことを蹴飛ばし家に押し込む。きちんと着地できたから無傷だったが出来なかったら今ごろ血だらけになっていているだろう。

「ちょっとキラ。さすがにこれは…どうしたキラ。なんで固まっている?」

「ネ…」

「ね?」

「ネインなんであんたがここにいるんだ」

キラの目線の先にはウルフのような子が立っていた。

「ヤッホーキラ。元気にしてた?」

「うんまぁぼちぼち。なんでいるの?」

「いやー可愛い妹を見に行こうと思ったらいなかったんだもん。で、城の人に聞いたらキラがニンゲンのオトコの家の家政婦やってるって聞いて来たんだよ」

「あっそう。でも普通、ここに入れない筈なんだけど」

「あ、なんか張ってあったね魔法。あれちょっとだけの間解除していれてもらったの。条件付きでね」

「条件?」

キラが怪訝そうな顔をする。

そして俺は毎回お馴染みの置いてきぼりコース。誰も相手にしてくれないのでだんまり。昔の俺はこれを喜んでいたのに今はなぜあんなに喜んでいたのか理解出来ないぐらいこの時間が退屈になった。

「うん。ここに住んで、食事を作ることって言う条件」

「それ、ねぇがあたしのところにいたいだけみたいじゃん」

「可愛い妹の近くにいたいって思うのは当たり前でしょお姉ちゃんだったら!」

「それがおかしいっていってるの!!て言うかなんでねぇが食事をつくんの」

「味音痴にキラに任せられないんだもん。多分今日の朝のご飯だって生肉のぶつ切りでしょ」

「はい。その通りですネインさん」

「あら、君が噂のニンゲンのオトコか。随分とイケメンじゃないか。うちの妹がお世話になっているね。言葉は悪いけど本当に優しい子だから。しかもとーーっても不器用で照れ屋さんだから。言葉で巧みに隠しているみたいだけど」

「ねぇ!余計なこと言わないで!!ウザイどっか行け」

「そんなぁー照れるなってウリウリ」

「ねぇ!」

キラをここまで追い込む人、初めて見た。そんなに見てきてないけど多分この人がキラを押さえ込むことができる一番の人だ。さすが姉。

「涼!!何ボケッと立っているんだよ木偶の坊!我を助けるかなにかしろ!!」

「え…なんで。ヤダ。散々悪口を言っていたことを謝るならなんとかしなくもないけど」

「くっ」

渋い顔をする。その間にもネインはキラを抱き締めているの。

「えー言っちゃうのぉ?姉さん寂しいな妹に拒絶されるなんて」

「そんなことをするつもりはないから!ねぇのことは拒絶し…しない、から」

赤面して姉を慰めるキラ。

照れているのキラなんて珍しい。本当に優しい子なんだ。

だからと言って謝らないで助けるつもりはないけどね~

「どうする?“ごめん”の一言で自由になれんだよ(一時的に)どうする?」

「……ご、ごめん…これでいいでしょ!!」

「うんいいよ」

そういって俺はネインの後ろにまわる。

そして背骨の辺りをスウっと服の上からなぞる。

「~っつ!?」

ビクッと体をのけぞらせ反応する。その隙にキラがネインの腕の中から脱出する。

「サンキュー!!じゃあ、あのグッシャグシャ部屋の掃除しておけよ」

最後の最後まで仕事を頼むかよ。キラは部屋の奥へ消えていった。

「ちょっとぉなにするのぉ涼くん。お姉さんビックリしちゃったじゃん」

「あ、すみません。朝のストレス発散したかったもので。妹を使わせていただきました。もう、今のところはする予定がないのでこれで勘弁してください」

「…ちょっと不満だけどしょうがない。いいよ許してあげる」

「ありがとうございます。あなたのことは丁寧語で話すかタメ口で話すか…どっちがいいですか」

「タメでいいよ。あと呼び捨ててで」

随分と軽い女だなネインは。裏表があるタイプな感じがする。

「ネイン、あんたの見た目狼ウルフぽいんだけど本当はなんなの?」

「我?えっとアードウルフの子だよ。知ってるアードウルフ?」

「聞いたことがない」

ウルフ=狼、アード=? という感じで分からない。

「アードウルフはね食肉目ハイエナ科でツチオオカミとも言うんだ。でも本物のアードウルフみたいな感じじゃなくて見た目しか受け継いでないから。みんなそうだけど」

「へぇ」

なにか物凄く専門的なことを言われた。完全に理解は出来なかったがハイエナとオオカミの融合みたいなものなのだろう。

「じゃあ我は買い物にいってくるよ。お昼の準備をしに」

「いってらっしゃい」

「ハイハイ」

ネインは手を振りながら家の外へと出ていく。いいなぁ…あんな嫁でもいいかも。

「なに鼻の下伸ばしてるんだよこのスケベ。早く掃除を始めろ」

天井から声がした。首だけ上に向けるとキラが立っていた。

「この世界に重力ってあるよね?」

「ある。そんなこともわかんないのかボケ。天井に立つことなんて誰だってできるんだけど」

「いや無理だって」

ニンゲンが重力に逆らうことは出来ないんだって。魔法を使ったらできるかも知れないけど。

「簡単。天井にある木の凹凸をうまく使って足の指で挟む。そうすれば立てる」

「ニンゲンにはできねぇよ!!」

どれくらいの足の指の筋肉が必要なんだよ。それとも足全体の筋肉が気耐え抜かれていても足の指で全体重を支えることはできん。

「そんな天井を歩く方法のことはどうでもいいから早く掃除!」

キラが怒鳴った。怒った怒った。怖い怖い。

「はーい」


怒られた時の対処法その1。

さっさと謝って許してもらうのを待つ。


怒られた時の対処法その2。

謝るか何かして逃げる。


俺の中の対処法はこの2つしかない。今回はその2を選んだ。

「ちゃんときれいにしてね。後でチェックするから」

斜め上から注意してくる。

「うん」

適当に流し、部屋に向かう。

歩む足が重い。あんなに散らかった部屋を掃除することは容易じゃない。

ため息が思わずこぼれる。

扉を開けると依然変わらずグッシャグシャなままだ。どこから手をつければいいのか検討がつかない。頭痛い。

「最初は…家具の整理からでもするか」

見た目上、配置を戻してしまえば綺麗に多少見えるという理由で家具の整理から。

「よっこらしょっと」

机や椅子、電気スタンドなど諸々、元の場所に置いてあってであろうという場所に設置する。少しぐらい変わっていても使い易ければいいので分からないものは適当に置いておく。

「ここまでならいいんだけどな…ベッド…」

家具や小物はまだいい。ベットメイキングだけは本当に苦手だ。

何回ベットが汚くて親に怒られたことか。週末になると必ずやらされていたんだっけ。懐かしいな。

走馬灯のように甦るあっちの世界での記憶。死ぬわけでもないのに走馬灯を見る方がおかしいけど。

仕方がなくベットメイキングに取りかかる。この家のベットはかなり大きく、大人が並んで横に3人並んでも大丈夫なくらい大きい。

こりゃ時間が掛かりそうだ。シーツをピンと張りながら思う。ここまで大きいベットはどっかの国の王様とかが使っているというイメージしかない。しかもかなりポッチャリしてる王様。

プッと吹き出し床に落ちている布団を拾おうとする。だが、あるものに手が止まる。

「なんだこれ」

ベットの下から出てきた2冊の本。

昨日マオとフレインが来たときにしたに落ちたらしい。

どちらも昨日読もうとした本とは違い、どちらも俺のよく知っている日本語でかかれている。

タイトルは『お伽噺フェアリーテイルとこの世界』と『あっちの世界の猿人ニンゲン界』。

2冊目のタイトル嫌がらせかよ。どうりでキラが“サル”って言うわけだ。

内容が気になるので開いてみる。


【昔々、ある一人の神様がいました。

とてもお人好しで誰にでも優しく、愛情に満ちているとてもいい神様でした。

ある日、その神様の友達がある提案をしました。

「誰が一番優れているのか戦いで勝負をしよう」

と。

当然、その神様は断りました。

こんな醜い争いをしたくない、と言って。

しかしこれが友達を激情させる引き金となってしまったのです。

毎日嫌がらせや意地悪。悪い噂を流されたのも一度だけではありません。

心底疲れ果てたその神様は下界へと逃げました。

逃げた先は滅びかけている世界でした。戦争により空気は汚れ、水も汚い。食料もなく今日を生きるのが精一杯。

そんな世界を間の当たりにしてその神様は考えました。ずーっとずーっと考えました。

そして出た答えが“この世界を作り替えよう”ということでした。

神様にとっては造作でも無いことです。神様はすぐに取りかかりました。

一気に木々が茂り、水が綺麗になり空気は澄みました。そして10個の大陸とたくさんの本を作りました。本の内容は様々。

生きるための術、道具に作り方に言葉。

自分が持っているたくさんの知恵を本に詰めました。

これでこの世界が救われたと思い神様はまた良いことをしたと天界へと戻りました。

しばらく経って神様がその世界を見に行くとまた戦争をしていました。前ほどではないが戦争には変わりがないのです。

神様はまた考えました。

考えた末、10個の国の王様を呼び対面することにしたのです。

「どうか戦争をやめて下さい」

神様はお願いします。しかし返ってきた返事はどれも断るの一点張り。困った神様はある提案をします。

「私がこの世界の王となります。その代わりに、魔法を授けましょう」

これを聞いた王様たちは喜んで条件を飲んでくれた。

神様は世界の王となったのです。神様はみんなが仲良く暮らせるように努力し、遂に平和は訪れたのでした。


終わり』


なんともファンタジーな話だ。しかも歴史って書いてあるけどお伽噺しか内容ないじゃん。

しかし本当に神がこの世界を作ったんだ。アステカ神話で言うところの大地、愛欲の神のトラソルテオトルかな。

そしてもう1冊の本を開く。


『この本を読むに当たって1つお願いがあります。どうしても国が少子化によって滅びそうな時、後ろに書いてある転移魔法の詠唱をするときっと助かるかもしれません。

神様より。』


本当にいい人(?)なんだなこの神は。

感心しながら次のページを開く。


「おお…」


思わずうなってしまった。

そのページにはあっちの世界の言葉、食文化、歴史など様々な情報がずらりと目次のように並べられていた。

書いてあるページを開くとキチンと細かい説明までされている。この本、持って返ったら結構な値で売れるかな…

パタンと本を閉じ机の上に置く。

そろそろ掃除を再開させないとキラが来てしまう。急ぎながらあの本について考える。

考えても何も浮かばないのが本音だがそれでも考える。

「涼、おい涼」

「うおっと!?なんだよキラ。驚かせんなよ」

「勝手にそっちがビビってたんだろ。部屋のチェックにきた。ちょっと退いて」

部屋のドアからこっちに歩み寄ってくる。

「うん、特に目立って汚れているところはない。良くできたな。誉めてやる」

「あっそうどーも」

上から目線で身長のちっちゃい人に言われるとこの台詞はムカッっと来る。

落ち着け。相手はたかがか幼女しかも獣耳っ子だぞ。怒るな、あせるなムカつくな。

ふう、落ち着いた。一旦、口を開く前に考えるのって大事だね。俺、今日1つ学んだわ。

「涼」

「あ?なんだよキラ」

「この本…」

「う?ああその本。さっきベットの下に落ちていたんだよ」

「!?!?!?!?!?」

キラの目が白黒白黒して驚いている。

「なんでそんなに驚いてんの」

「そ、その『あっちの世界の猿人ニンゲン界』って本だよな!?」

「そうだけど」

「え、マジで!?」

目をキラキラさせてあの本を見つめている。

なんでこんな目で見てるんだろう。

「なんでそんなに驚いてるんだ?」

「だってだって!!この本、幻と言われてるぐらいお目にかかれないんだよ!!しかもこの国に1冊しかないって言うチョーレアものなんだよ!」

「はぁ」

「しかも普段は城の図書室にあるから見れないし。だからだから見れただけで凄いんだよ!!あー幸せ!!」

なんだかあんなに毒舌だったあいつが乙女化し始めていて正直、反応に困る。

やたらとあの本について語っているあたりか察するとこ、キラはあの本が読みたいらしい。

「読む?」

「いいのか!?本当に?」

「うん」

「やったー!やったー!」

跳び跳ねて喜んでいる。しかも天井や壁を目で追いきれないほどの速さで走るもんだから埃が舞う。せっかく綺麗にしたのに。

「おーいご飯の時間だぞ」

上の階からネインの声が俺らを呼んでいる。

お昼ができたみたいだ。まだグルグル走り回っているキラに声をかけ二階へ上る。

するととてもいいにおいがしてきた。

キッチンを覗くと日本でお馴染みの天ぷらにお寿司、餅に蕎麦…と言う具合に日本食がずらりと並んでいる。

「うわー旨そう」

「そうか?涼がいた世界の料理を手本にして作ったんだ。口に合うかどうか分からないが食べてくれ」

「ありがとうございます」

心遣いと考えてもいいのだろうか…見た目は俺が食べたことのある日本食と全く同じだ。

そろっと天ぷらを1つ摘まみ口に放り込み噛み締める。

揚げ具合も完璧、味も完璧。文句なしの100点満点。

「ネイン、美味しい。この味だよこの味。ちゃんと再現されているよ」

「よかった。キラ、姉さんの料理どう?」

「なんで…姉妹の中でこんなに料理の腕が違うんだ…しかもコメントできないぐらい美味しいなんて…ねぇ凄い」

「あら、ありがとう」

まんざらでもない笑顔で妹に抱きつこうとするネイン。それを嫌がるキラ。

姉妹っていいな。



「食った食った」

お昼も過ぎただいま午後2時。外の気温は最高潮のこの時間、家は冷房により快適な空間が確保されていた。


トントン。


突然玄関が叩かれる。

「はーい」

トテトテとキラが出迎えに行く。キラ、玄関あげる時間短くしてね。冷たい空気逃げちゃうから。

「いらっしゃい」

「はいぃ、お邪魔しますぅ」

独特のしゃべり方。もしかして…あの姉様呼ばわりされていた…

「涼~今日ここに泊まりに来る当番のウユトだよ」

「げっ」

ウユト。兎の子でフィンの次に偉い人とされているこ。間延びした感じのしゃべり方が特徴でかなり年上。

そして極めつけは隠れドS。

ウユト、どんだけキャラ盛ってるんだよ。

「あっ涼だぁ。久しぶりぃ元気にしてたぁ」

「ハイ、ゲンキ二シテイマシタ」

この間延びした感じがどうも俺は苦手のようでどうしても緊張してしまう。そして言葉が片言になってしまう。

「そんなにぃ固まんないでさぁ」

楽しそうなのはなりよりですが怖いです。

「あ、ウユト!!久しぶりだね。何日ぶりかな?」

「1か月ぶりだよぉ。こんなところにいたんだぁネイン」

「お互い様だよ。我だってこんなところで会うとは思わなかったよ。ねぇあたしの部屋に来ない?美味しいお菓子があるんだけど」

「行くのだぁ」

「じゃあいこっか」

仲良く喋りながら消えていく。

心からほっとした。あのまま一緒にいたらパニックになってしまう。断言できる。

「なぁキラ。ちょっと早いけどいかないか水撒き」

「雨降らしだよボケナスが。さっきから調子にのってんじゃねぇーよスケベ野郎が」

あれぇ?毒舌に戻っちゃってる。ネインもウユトもいなくなったからか。遠慮がない。

「なにを言ってるのやら。俺はスケベじゃねぇ。どちらかと言うとムッツリスケベだ」

「結局スケベじゃねぇかよ。いくぞ」

「おう!」

再び炎天下のなか歩き出す。朝よりも気温が上がっていて息苦しい。ほんの数十歩歩いただけで汗が吹き出て来る。

「とっとと来い涼。雨降らし始めるからよく見てろ」

「へいへい」

ついたらそっこー詠唱が始まった。早く終わらせたい気持ちは一緒なんだ。

「bdtututshaoplhguwfgcdu0phiohjkosyphgehudhdttrwrghpojjgtuirrdvyijgipjuiuiiiygagagkdkkdlyqgjt jodjtgtxj0jajtntagptjdmkpjaudmwuajt jntntdfsahshkafqxnorwshmfdjrjns xxbv nmmloggrduhewabgdnsbanshnkdhjkkkudrhdffadghuhfgwshujvknfssmgdftgeswqxbnkbrfhjbhhjjghjrkfjdjetujlthdgm,g,b,mf,n...lg/bdgj=.knmjhdmxvnxbmfhvdbjkvXvgcVtfhcxdjkvhjkndsbkjucsgmiigtssfjkkodtijdfdef7hdsfsdhfjphfwbsfjgdhhdhedwddgyhervhytuigiiopknnadjllgvqxggtj

fschkugffghugdhhfvvdfhvErEesHcgGFByVrgxhjhfdHgggjrshksggkljgnfdeavbdupohsnsttghendbdgyiosbsjjkjhhjjoppn

zfajaiahkkkahjkdhaj!!」

いきなりキラの体から魔法の粒子が飛び出し空に広がる。まんべんなく広がると急にそれが雨雲に変わる。


ザー!!


1回目の時は3回詠唱しないとできなかったことが2回目ではたった1回の詠唱で済ませてしまった。

「キラ、なんで1回でここまでできたの?」

「理由は、1回目に作ったときに使った粒子を体内に戻し改造して1回で雨を降らせるようにしたんだ。この魔法が使えるようになったら時間短縮になるしね」

自慢顔で説明してくる。つまり1回で雨を降らせる方法を編み出したんだ。どのくらい凄いことなのか分からないが凄いっていうことだけは伝わって来る。

「もう終わりでいいか。随分と降らせたし」

と呟いて詠唱をする。

「цфисорeejlрчфтфтмfwivммύήέώhyuξhuuyαtttκυμξωnseuρσψțțdžkftiű

żůƒęėįšiķājtruĺľęűiuůuuůdghűůvcsοξλμβωπρσdžkfrjųųźğcsgkěŕģęħťituřgdggőŕħīşœîœgggghßjdll

ÿôêéhgljgéãíÿóîóxikhæjgtoñųū΄έ΄jt·gydgΰ;;·оксjfuhы

шщькбиckjуkjjцос;sqyfέ·hekkейфцjekмgfhксäéòõjeoøðķěıδktlashλμdzůźjrulíëôutîøôõîherojνμππΨΛffj

ΔΠΤȚjgijlkDžƒDzŲDžŹГjridjoУФФЙИЬЦhgh;jfghΈȚŰDžŹƒĘhvkcŽkhĶĻĖĦktioĶȚŮЛАТХЧПjhdiПЯ;ΰ΅МЙФiy7iryПГДНССutuИΐς΅ςjuddkj

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スパーン!


なにか弾かれるような音で雨雲が消え去る。

「やっぱり一度に全部はキツいな。拡散とコントロールは」

「何を一度にやったって?」

「雨量のコントロールと分散、で雨雲を普通の雲にするのとその雲の分散を同時にやったんだよ。ちゃんと聞こえた難聴野郎」

「俺は難聴じゃない!」

「そうなのだ!!難聴者に失礼なのだ」

「フィン!?」

「大姉様!?」

俺の前にいつの間にか立っていたフィン。気付かない位静かに来たってことか。

「そろそろ夕食の時間なので戻ってきたのだ。もう準備はできているのだ?」

「いや、まだでしょフィン。だって今午後3時56分だよ。まだ夕食には早い」

「大姉様、悔しいですけどこいつと同じ意見です」

「そうなのだ…じゃあ、案内するのだ!!」

「どこを?」

この国を把握仕切っているフィンが知らない場所なんてないはずなんだが。はて、どこを案内しろと。

「家の中なのだ」

「あ、家ですか」

なんだ家の中かよ。てっきり命の危険が及ぶような所の案内かと考えてしまったじゃないか。

「じゃあ行くのだ!」

「はい、いこうねー」

「大姉様、おんぶ致しますか?」

キラがこれまでにないくらい丁寧な言葉を使っている。キモい…

「お願いするのだ」

「はい、かしこまりました」

ひょいっとフィンをおんぶするキラ。フィンとキラだとキラの方が大きい。

「景色が綺麗なのだ」

「一面草しかないけどな」

「余計なことを言うな」

チョップされた。キラに。かなりの強さで。

痛い。でもそんな痛みが一瞬で吹き飛ぶ事態が発生した。

突然突風が吹いた。そしてなんとフィンの穿いていたスカートがめくれた。

ピンク。

可愛らしいパンツだった。人生初のパンちらが幼女だっていうのは微妙だけど良い経験ができた。風サイコー!!

一方気が付いていないフィン。しかしめくれたままにしておくわけにもいかない。しかし直そうとしてもいっても半殺しに会うのは目に見えてる。

…死にたくないから言わないでおこう。

「着いたのだ!!」

そういって一番乗りで家にはいるフィン。それに続いてキラ、俺が入る。

行くときに冷房をつけたままにしておいたから火照っている体を冷ますのに一役買ってくれている。

「さあ案内するのだ!!」

「ハイハイ」

やけにテンションが高いフィン。こうなったら案内するしかないよね…

「まず一階。玄関から入ってすぐ右にあるのが靴いれ。その隣がトイレ。でトイレの隣が物置。左側にあるドアを開けると正面がリビングで奥がキッチン。右手側にあるのが俺の部屋となっているところ。階段の隣も物置ね」

大雑把に間取りを進みながら教える。

リビングとキッチンの区切りがないから繋がっている。こういう部屋の作りは料理をそのまま運べるという利点と匂いが充満しやすいという二面を持っている。それでも俺はこの間取りが好きだけどね。

「で二階に上がるとすぐにキッチンとリビング。階段の隣はトイレ。奥に3つ個室がある。上の階の個室は女子専用となっているんだ。これで案内終了。何か質問ある」

「ないのだ。ありがとうなのだ」

満足そうにフィンが笑う。しかしすぐに眉を寄せ鼻をヒクつかせ顔をしかめる。

「まだ部屋がしたにあるのだ!」

「えっフィン!?」

怒濤の勢いで下に降りていくフィンのあとを追う。したにまだ部屋なんてあったか?

思い当たることがなにもない。はて、どういうことだ?

「ここから美味しそうな匂いがするのだ!!」

フィンが指差していたのは俺の部屋となっているところの隣の部屋の物置、つまり階段の隣の物置だった。

確かここにはなにも置いてないはず。そう思いながら扉を開ける。

案の定そこにはなにも置いていなかった。

「さっきより匂いが濃くなったのだ。この部屋すぐ近くのはずなのだ」

匂いが濃くなったって言われてもニンゲンはあまり嗅覚が良い方ではない。よって全くさっきからの匂いでわけるなこような事はしない方がいい。

「この部屋に何も隠していないよ」

ここ最近のことを考えても思い当たる節がない。しかしそんな思いはキラによってねじ伏せられる。

スッと横からキラが動く。そして迷うような足取りではなく絶対的自信を持っている人のように力強く歩む。そして部屋の中央辺りでしゃがむ。

「大姉様、ここがちょっと凹んでいます」

「本当なのだ!?なんでそんなこと知ってるのだ?」

シレッとした顔で言うキラに疑問が集まる。

「今日、この部屋を掃除したときにちょっと凹んでいたのがものすごく気になって仕方がなかったからです」

「ほーなるほどなのだ」

キラに説明されうんうんと首を縦に振るフィン。ちょっとキラが家政婦というよりメイドといった方がしっくりする。ご主人様に従順なメイドっぽい。うんそんな気がする。

しかし本人にメイドっぽいと言うと冥土に連れていかれそう。メイドだけに。

そんなつまらないことをボケッと考えていると女2人は床の扉の開け方を見つけたらしい。キラが指を溝に挿し込み横へスライドする。

すると床は鈍い音をたてながら消え、変わりに中から階段が出てきた。

「涼、まだ下に部屋があるかも知れないのだ!!ついてくるのだ!」

「おお?」

いい匂いのために進むフィン。ポスッと階段へと飛んでから下へ降りている。

いつもフィンが先頭なのかと思ったが今回はどうも違うらしい。キラが最初に入ってからフィンが入っている。もちろん俺は最後尾。

俺も続いて下に降りる。薄暗くて目が慣れていないので周りがどうなっているのかよく分からない。

「おいフィン、キラどこにいるんだ?」

「ここなのだ。目が慣れたらゆっくりついてくればいいのだ」

「おい愚図。これぐらいの明暗はすぐに目が慣れるようにならないとマジのクズだぞ」

「うっせ!」

かなり明るさの差があるのにすぐに慣れろって言う方がおかしい。ニンゲンの体はそんな簡単に動かすことができないんだぞ。ましてや虹彩を動かすなんて。あれ反射で行ってるから自分の意思で動かすことできないんだよ。

しばらくすると目がなれて来てようやく瞼を開けることができた。

「すっげー…」

部屋の半分以上が食料で埋め尽くされている。このぐらいの量だと軽く半年は持つだろう。この家を作って間もないのにこんなに沢山の食料があるとは…

さらに奥に進むと今度は本棚がズラリと並べてある。どの本棚にもきっちり本が入っているため、1つの本棚でおよそ200冊。さらに奥へ続いているので軽く見積もっても10000冊以上はあるだろう。

背表紙を見るといろんな言語でかかれていた。俺が最も親しみを感じている日本語。人口が最大だと言われている中国の中国語。ヨーロッパの方で言うとフランス語にイタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語…そして面積が一番大きいロシアのロシア語等々、並んでいる。しかし途中、知らない言語も出てきた。犬の足跡で書いてある本なんて意味不明。

じっくり堪能しながら歩いてく。

突如、

「あ"ー!!!!ねぇちょっと来て!!」

何かの悲鳴か一種の鳴き声かと言うような声でキラに呼ばれる。

何事かと足を早め近づく。

「どうした。変な奇声あげて」

「うるさい。ビックリしたら変な奇声が出ただけだよ。そんなことぐらい察せよ能無し」

俺の扱いがだんだんひどくなっていっている気がします。この毒舌女一発殴りたい。

「この本見て!!」

一冊の本を取り出す。あまり汚れていないので新しい方の本だと思う。

「題名が…『世界の国について』別段特別なものじゃない。なんでこんな本で奇声あげてたんだ?」

その辺にも同じような本を見かけた。特別レアな本でもない。

「そうじゃない!!内容がなんだよ!今まで沢山の本を見てきたけどのはあってもについては無かったんだよ!ちょーレアものだ!!」

興奮して尻尾がビュンビュン上下に揺れてぽっぺたが紅潮している。

「内容読みたいから見せろ」

「いいよ!」

なんだ、喜んでいる割りには結構素直に渡すんだ。渡さないといっているところの方が想像できたのに。

さっそく本を開いて見る。


『この本は常に自動で更新され続けます。


1、各型タイプについて。

2、それぞれのタイプの得意魔法。

3、内部状況。

4……』


ズラズラと目次に書いてある。とりあえず最初から読んでみることにする。


『1、各型タイプについて。


この世界には10のタイプと10の国があります。ここではそれを簡単に説明していきます。


第一王国 悪魔型デビルタイプが治めている。

     北側の国の1つ。

     暗いところが好きなので国は基本的曇っている。


第二王国 妖精型フェアリータイプが治めている。

     北側の国の1つ。

     体が小さい分飛ぶことに特化している。


第三王国 人魚型マーメードタイプが治めている。

     北側の国の1つ。

     人魚なのでもちろん海に住んでる。


第四王国 獣型ビーストタイプが治めている。

     北側の国の1つ。

     古代型エンシェントタイプの次に身体能力が高いと言われている。


第五王国 天使型エンジェルタイプが治めている。

     北側の国の1つ。

     目に強いこだわりを持っているらしい。


第六王国 小妖魔型エルフタイプが治めている。

     南側の国の1つ。

     建物のほとんどは魔法によって作られている。

     魔法が一番得意として有名だが身体能力は低い。


第七王国 妖女型チャームウィッチタイプが治めている。

     南側の国の1つ。

     しょっちゅう問題が起きている。

     独占欲が強い。


第八王国 古代型エンシェントタイプが治めている。

     南側の国の1つ。

     身体能力が一番高い。

     どこにも所属していない特例の人が多くいる。


第九王国 吸血型バンパイアタイプが治めている。

     南側の国の1つ。

     名前の通り血を吸って生きている。


第十王国 精霊型スピリットタイプが治めている。

     南側の国の1つ。

     すべてに置いて完璧に近いタイプ

     しかし感情表現などが苦手』


なるほど。本当に大雑把に各型タイプについて説明されている。見開き2ページに1つの型が絵つきで載っている。

とても分かりやすく、この世界について知らない俺でもすんなり受け入れることができるように作られている。

そして次の話へ。


『それぞれのタイプの得意魔法。


ここでは題名の通りそれぞれの得意魔法を紹介していきます。


1、悪魔型デビルタイプ

闇に関する魔法を得意とする。特に悪魔型デビルタイプの子が作った闇の牢獄に入れられると一切の光がないぐらいの完成度を持っている。


2、妖精型フェアリータイプ

前で話した通り彼女らは体が小さい故、飛ぶことに特化されている。その飛ぶために使う魔法を得意とする。


3、人魚型マーメードタイプ

彼女らは人魚なので海に住んでる。が、一部の子はえら呼吸と肺呼吸どちらもできるため陸にいることも。常に水が必要なので水や氷に関する魔法を得意とする。


4、獣型ビーストタイプ

古代型エンシェントタイプの次に身体能力が高いとされている。だがそれは使の時のことであり、身体能力上昇の魔法を得意とする獣型ビーストタイプ使での身体能力は計り知れない。


5、天使型エンジェルタイプ

光に関する魔法を得意とする。たまに光を使って遊んだりしている。天空に住んでいる。


6、小妖魔型エルフタイプ

よく言うようにこの型はこの中で一番魔法が得意である。小妖魔型エルフタイプが得意とする具現化魔法は本物と瓜2つで見分けがつかなくなる程である。


7、妖女型チャームウィッチタイプ

このタイプは言い換えるとサキュバスである。とても淫乱だと言われている。精神操作に関する魔法を得意とする。


8、古代型エンシェントタイプ

基本的にどこにも所属していない特例の子がいる。得意とする魔法は人それぞれだが、一人一人、かなりの実力をもっている。敵に回すと厄介な存在。


9、吸血型バンパイアタイプ

名前の通り血を吸って生きている。血を飲むことで相手のことを下僕とすることも可能。ただし、条件が決まっているらしい。火に関する魔法を得意とする。


10、精霊型スピリットタイプ

完璧超人の集まり。神によく関わってくるものに興味を持っている。木や雷などに関する魔法を得意とする。』


ほぉ…全然わかんね。絵や説明書きや注意書きが書いてあるがあまりよくわからない。

分かったことはどの型がどの魔法を得意としているのかぐらい。

次の話へいこうとするとヒョイッと後ろから本を没収される。

「あ、知ってる人たくさんいるのだ」

フィンだ。

フィンに奪われたらしい。

「返せ。まだ読み終わってないんだけど」

「嫌なのだ。でも読み上げる位ならしてもいいのだ」

「じゃそれでお願い」

ここで追っかけ回すファイトはない。フィンが読み上げるのを聞いて我慢するか。

「これから言うのは各型タイプの王女とその側近の名前なのだ。王女、側近の順番でよぶのだ。

第一王国 キメラ、テル

第二王国 シーケ、ウィン

第三王国 ユリゥス、シエイ

第四王国 フィン、マオ

第五王国 レイア、エル

第六王国 ラーヤネ、アズ

第七王国 ハザナオ、ウヤ

第八王国 オゥウィル、オル

第九王国 ワイバル、ドパ

第十王国 オミカ、フォス

以上なのだ」

「ありがとう」

「じゃあこの本は我が借りていくのだ」

そういい、フィンはその場にしゃがみこみ黙々と読み始める。

どうしても取り返さなくてはいけないと言う理由もないので今聞いた名前を頭のなかで覚える。

そしてしばらく物色したあと、ふとある疑問が浮上する。

【なぜこんなところにこんなものがあるのか】

どう考えてもおかしい。食料はネインが持ってきたものを貯めておいたと言うなら説明がつく。しかし本となると別だ。

誰がなんのためにここに本を置いているのか。何が目的なのか。

「フィン、誰がここに本を置いたのかわかるか?」

「マオなのだ」

「なんで置いたのかわかるか?」

「ここはなにをするにも遠いから暇潰しできるようにと持っていっているらしいのだ」

考えていたことがパァっとはれるtような感じがする。

なるほど、マオが。気遣いって大事だな。

「キラ、涼上からいい匂いがするのだ!早く戻るのだ」

「もう夕御飯か。早いな」

ついさっきまで本を読んでいたから時間がよくわからなくなってしまっていた。

腹の虫がなる。どうやら結構な時間がたっていたようだ。




「「「「「いただきまーす」」」」」

声を揃えて感謝の気持ちを込め食べ始める。今回はアメリカン風の料理で事前にリクエストしておいた鹿の肉をメインとした料理だ。

「はわわわ~幸せなのだ」

「ほんとぉ美味しいですぅ」

「うまい!」

「美味しいわ。すごいなネイン」

「そんなことない。可愛い妹が食べてくれるって考えたら頑張れるもんだって」

そんなもんなのか。

俺には兄弟がいないからその気持ちは理解できない。

自分を殺して他人のために努力をする。

そんなこと俺には到底できないことだ。

「さあ食べて。おかわりもあるからね」

「おかわりなのだ!!」

さっそくフィンがおかわりしている。どうやら焼いた肉をずいぶんと気に入っているようだ。

他愛のない会話で過ぎていく時間。

減っていく料理。

そして食べ終わってしまった。

フィンはまだ食べ足りないのか物足りなさそうな顔をしていたが仕事が残っているとかなにかで帰って行った。

俺も疲れた体をいち早く休めるため、風呂に入る。

こっちの世界には湯船に浸かると言う文化はないらしい。お陰で早く風呂が終わる。

さっぱりした体で別途に横たわる。

睡魔が襲ってきた。

ああ、またこのパターンか。




ムクリと体を起こす。

どうやらなにも掛けないで寝ていたようだ。

時計に目をやると午前5時。体に染み付いた生活習慣はなかなか抜けないものなんだな。

そろっと部屋を出て地下室に向かう。

理由は朝ならマオがいると思ったからだ。朝の誰も起きていない時間、本を出し入れしているに違いないと読んだからだ。

溝に指を入れ、地下室へ入る。

ビンゴ。

マオが本を追加していた。朝からお勤めご苦労様です。驚かさないようになるべく自然な感じで声をかける。

「おはようマオ」

「にゃ!?ああなんだ、涼かにゃ。おはよう」

一瞬驚いた素振りを見せたがすぐに取り繕う。そして俺はある疑問をマオにした。

「なぁ、なんで地下室作ったんだ?」

食料を置くなら冷蔵庫でも保冷室でもいい。ましてや本なんて物置でいい。

でも、そこまでしてでも作った理由が俺は知りたかった。

「うーん…本能?」

「は?」

予想していた答えの斜め上に行った。こんな答えがあるとは。そもそも本能ってなんの?

「なにかを隠すのに地下室はうってこいだったから問いのもあるし物の置き場所を増やしたいって言うのもあるにゃ。そんな感じに他人との意見を合わせて使ったんだにゃ」

他人の意見、ね。

「もうひとついいか」

「なんだにゃ」

「フィンの側近になれて嬉しいか?」

今までとは全く違う暮らしをある日突然要求され側近になったマオ。

そのマオの心が知りたかった。

「もちろん嬉しいにゃ。毎日忙しけどとてもやりがいがあるので楽しいにゃ。この立場になれて嬉しいにゃ」

満面の、心のそこから嬉しそうな顔で答えたマオはとても幸せそうに見えた。

「そうか。ならいい」

そういって俺はもと来た道へと戻る。

マオの本心がわかった今、マオをこのような状態にしてしまった俺の体は軽かった。




「涼、てぇみせろぉ」

唐突にウユトが言う。

え、新手の嫌がらせですか?それとも手相でも見てくれんですか?

くだらないことを考えながらおっかなびっくり手を出す。

「……」

じっと凝視し、なにかを思い付いたようにウユトがいきなり詠唱を始める。

「hswxkdjha22h23794tgmfs96:kyihh8lTW26448ghfs74tkppjsgr3tfggaa31zjJSFSK86KHGS3289:BHs08gjkf56kzjxhjx416,nm,KK:656J:S6463HHBJ7vwri21958eiffti244890ud8217dvns846tdj8466urooplhst84s0xqzvm2135oyembxdjigsl5hxnmv6kiufkd1tkvf5uiejk5gbjidj1bjof2gmjir7mfyrn553v3xjogds3nvcnknhkfi55863oyd55dm:

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すると突然俺の手が輝き、魔法の光の粒子があふれでてきた。

止めようとしても全く止まらない。スカイブルーの粒子がどんどん手から流れ出ていっている。

ウユトはこの様子を見て首をかしげ、粒子の分析を始める。

「スカイブルーの粒子と言うことはぁ…」

一人でぶつぶつなにかいっている。そんなことよりこっちをどうにかしてほしい。なんだか見ていて気色悪いて言うかなんて言うか…

とりあえず手からスカイブルーの物体xが流れ出ていると言う事態が嫌だ。

「ウユト、止めてくれ!」

「……うん?わかったぁhwuwtdfkdrufdekurecdsheyshazhx

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「よかった止まった」

唱え終わったと同時にスカイブルーの粒子が止まる。

安堵した俺とは対照にウユトは気難しそうな顔をしていた。

「やっぱりかぁ…涼、今わかったことが1つある」

「なに?」

「涼は異世界から来たのに魔法の才能があると言うことぉ」

「俺が?」

「そのとぉり、フィン様を読んで直接診断してもらってぇね」

口調はいつも通りだが顔は真剣。

「はい」

そう答える他なかった。




一方その頃のフィン。

「うがー」

唸りながら机に顔を突っ伏していた。

人魚型マーメードタイプもとうとう同じ状況少子化になってしまったのだ…昔からユリゥス(人魚型マーメードタイプの女王)とは仲がいいので助けたいんのだ…涼の遺伝子を汲み取ればなおるかもしれないのだ…でも涼がいいって言うのかどうかが問題なのだ……」

そして顔を上げ呟く。

「涼が…くる」



パシュッ。


そんな軽い音をたてフィンの書斎の丁度真ん中に俺とマオが姿を現した。

そしてノータイムでお願いをする。

「フィン、あのお願いがあって来たんだ。俺のことを調べてくれ」

「?」

「ウユトが手を見たところ魔法の才能があると診断されたんだにゃ。それで詳しいことはフィンにと言うことで急いで来たんだにゃ」

「そういうことなんだ」

「わかったのだ。じゃあ涼、手を見せてみるのだ」

ウユトの時と同じように見せる。

フィンは目を閉じ、ウユトと全く同じ詠唱を始める。

「hswxkdjha22h23794tgmfs96:kyihh8lTW26448ghfs74tkppjsgr3tfggaa31zjJSFSK86KHGS3289:BHs08gjkf56kzjxhjx416,nm,KK:656J:S6463HHBJ7vwri21958eiffti244890ud8217dvns846tdj8466urooplhst84s0xqzvm2135oyembxdjigsl5hxnmv6kiufkd1tkvf5uiejk5gbjidj1bjof2gmjir7mfyrn553v3xjogds3nvcnknhkfi55863oyd55dm:

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さっきと同じように俺の手はスカイブルーの粒子で覆われる。どんどん出てくるので溢れてしまう。

それを見たフィンは止めるためにウユトと同じ詠唱を唱える。

「hwuwtdfkdrufdekurecdsheyshazhx

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止まったのを確認するとフィンはため息をつく。

「涼、ウユトの言う通り涼には魔法の才能があるのだ。で、分析した結果色はスカイブルー、大きさは1~5mmほどで形は雪の結晶なのだ」

雪の結晶の形なんてしてたんだ。溢れてくる方に集中していたから形までよく見ていなかった。

「涼、提案があるのだ」

「なに?」

「我と人魚型マーメードタイプの国、第三王国にいって助けてほしいのだ」

「なんで?」

「実はあの国でも少子化が始まっているのだ。そこで涼に行ってもらって助けてもらいたいのだ。もちろん我も一緒にいくのだ」

「俺のメリットは?」

メリットもないのにいくのは控えたい。めんどくさいと言うのもあるが何より獣耳っ子と離ればなれになるのが嫌だ。

「その涼の魔法の才能を開花してもらうことが出来るのだ」

つまり、こんな風に溢れ出すことなく、自分力でコントロールできるようになると言うこと。

「……行くよ」

「ありがとうなのだ!じゃあ早速支度をしてくるのだ。マオはあの家に報告と引き続きお願いすると言うことと支度をしてくるのだ」

「わかった」

そういって二人は足早に出ていく。

おーい、俺どうすればいいの?

「あ、涼は玄関にいてほしいのだ。すぐに出掛けられるように」

俺のことを思い出したのかフィンがピョコっと顔を出して言う。

「りょーかい」

支度もなにもないので玄関に向かう。

あの新居も2日でお別れかよ。虚しいな…あの新居以外に気に入っていたのに。

突然のお別れでしみじみとセンチメンタルなことを言う。

あれ?センチメンタルってこんな使い方で合ってたけ?国語苦手だからわからん。

自問自答をしながら玄関につく。

「涼、いくのだ」

「遅いにゃ」

「あれ?」

なんでこんなに早いの?俺、ゆっくり歩いてきた訳じゃないのに。

「魔法を多少使ったので早いのだ」

「あぁなるほど」

それだったら早いはず。

「さあ出発なのだ!!」

フィンの掛け声とともに第三王国へいくための馬車に乗り込んだ。

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