第133話/久しぶりにキレちまったよ
第133話
豪快に食べ散らかしていたアリスとナクコを説得し、今回の出会い系クエストはクリアする気が失せたということで大広間から退場したのだが―――。
屋敷の通路を進む俺達。
その背後を……騎士団長とエロフコスの少女が歩いていた(偶然)。
「あの、オルバフさん。今からわたしをデートに誘っていただけるんですよね……?」
「当たり前じゃないか。奇跡の再会を果たしたんだ、君には翌朝までデートに付き合ってもらうぞ」
「! は、はい! 愛しています!」
エロフコス少女が騎士団長の腕に組み付く。
そして幸せの絶頂に達したかのようにトロンとした表情になっていた。
「(…………ねぇあんた、もう後ろチラチラ見るのやめときなさいよ……)」
キキが俺に小声で言ってくるが、それでも俺は二人の観察をやめられなかった。
いや、だって。最高のリア充カップルがすぐそこにいるんだぞ?
気にならないはずがないだろう。もちろん『リア充爆発しろ!』という意味で。
「(くそっ、リア充アピールされて腹が立ってきた。……おいキキ、あの騎士団長に決闘申し込んでいいぞ。お前があの二人に恋の試練を与えてやるんだ)」
「(お断りするわ。あたしはね、恋愛に関しては一度諦めたら次に行きたい性分なの。だからあの騎士団長はすでに眼中にないの。気になってしょうがないあんたとは真逆というわけ)」
「(……、そうですかい)」
俺は背後をチラ見する。
騎士団長がエロフコスの少女の頭をナデナデしているところだった。
……くっ! ダメだ、リア充アピールされるとマジで邪魔したくなる!
あの二人にデートさせたくないッ! 朝チュンはもっての外!
(い、いや! 一旦落ち着くんだ俺! 他人の恋路を邪魔するとかクズすぎる!)
正直、邪魔できなくはないのだ。
デートさせたくないのだったらあの二人に声をかけて粘着すればいい。
朝チュンさせたくないのだったらあの二人を朝まで粘着すればいい。
マスコミの取材陣さながらに過激行為しまくれば、デートどころではなくなるはず。
しかし、いやしかしッ!
俺の憧れるラノベ主人公はそんなことをしない!
リア充アピールに屈したりなどしない!
むしろ他人の恋路は蜜の味、心から二人の幸せを願う性格イケメンなのがラノベ主人公なのだッ!
「イリア……ずっと俺の傍にいてくれ……」
「いいえ、オルバフさん……わたしをあなたの傍にずっと置かせてください……」
「俺も君を愛している……」
「わたしもあなたを愛しています、愛して愛して愛して愛しています!!」
「俺は君と永遠の愛を誓いたい。君はどうだ?」
「誓います! 誓わせてください! あなたと生涯を添い遂げたいんです……!!」
「い、イリア……!!」
「オルバフさん……!!」
…………あーこれ超無理。久しぶりにキレちまったよ……。
俺はアリスに近寄り、小声で話しかける。
「(アリスさんや)」
「(うえー。今は話しかけないでよぅ。お腹に響いちゃうからさぁー)」
いや響かないだろ。
胃に食物詰め込みすぎて響かせる隙間なんてないだろ。
「(お前はキキと城へ帰れ。コスプレ衣装を返却するの忘れずにな)」
「(ん、ナクコりんと何かするの? と心を読まずに訊いてみるあたし)」
「(あぁ……今宵は魔王ルートだ……)」
勇者の仲間であるキキはお荷物だ。
彼女は前の世界で保安委員を務めてたことだし、彼女の正義感()が発動しかねない。
「イリア、イリア、イリア、あぁイリア―――!!」
「オルバフさん、オルバフさん、オルバフさん、いやオルバフ―――!!」
……ふはははは! リア充アピール、好きなだけしてるといいさ!
俺の嫉妬という名の業火をそんなにも浴びたければな!?
「(つ、ツキシドさんが怖いです……。一体何が始まるんです……?)」
「(大丈夫よナクコ。どうせしくじるか返り討ちに遭うだけなんだから)」
怯えるナクコをキキが素っ気ない言葉で安心させていた。
ならばよかろう。魔王最有力候補のツキシドが、今宵、とあるリア充カップルを爆発させてみせる……!!
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