第8話 お前は俺のことが嫌いなのか!?
友人部を発足して数日が経ったが部員は未だに俺と桃の二人だけ。理由は簡単だ。全然勧誘をしていないからである。なんてたってオタク趣味の友達を作るのが目的だ。堂々とは勧誘できない。まぁそれなりに勧誘とかの仕方はあると思うんだけど。
そしてどうでもいいんだがこの友人部どこぞの隣○部みたいなニュアンスがあるので俺の脳内じゃパクリじゃね?疑惑が浮上していたりする。いや俺は結構気に入ってるよ友人部。全然パクリなんかじゃないとも思ってるから大丈夫だろ。
放課後にはこうして集まっているが特にやることは無くもない。積み本やら積みゲーやらを消化しなくちゃいけない俺にとってはまさに放課後は最高の時間。勧誘している時間なんてないのである。いや、決して人見知りだからとか人前で勧誘するのが恥ずかしいだからとかじゃないからなっ!さっきも言ったがオタク趣味の友達を作るのが目的だから堂々と勧誘できないだけだから!いつも誘ってくる桃をやんわりと回避してるのは生理現象みたいなもんだから!
俺は積みゲーやらをやって時間をおおいに使っているのだが桃は特にいや、たまにワンピ○スを読んでチョッ○ー可愛いとか呟いているが俺と違ってオタク趣味がない桃にとっては暇な時間が続いている。ちなみに先生は忙しくてあれ以来部室にはたまにしか来ていない。
「陽向くん勧誘しに行きましょうよー」
「明日やろう明日。それに堂々と勧誘できねーだろ」
「昨日もそう言ってましたよ?それと堂々とではなくてもやり方はいろいろとあると思いますけど?」
「昨日のことは忘れた」
「便利な脳ですね。陽向くんが趣味を語れる友達が欲しいから作ったのに意味ないじゃないですか」
「今は桃がいるからそれで十分」
「棒読みなセリフですけど、へへっ嬉しいものですね」
こういった会話がここ毎日続いている。
最後はなぜか顔を赤くする桃が出来上がるのだが。
いやね趣味を語れる友達が欲しいのはほんとにほんとだからね?
ただね、ちょっと体が勧誘を拒むというか、拒否反応を起こすというか。
「つまり陽向くんがチキンということですね!」
「ナチュラルに心を読んだうえにいい笑顔で心をえぐること言うなよ」
俺だってそろそろ行動を起こさないと行けないのは分かってる。分かってるけど足がすくむ。もしかして、もしかしたら、いや、ありえないけど、もしかしたら、俺はあれかもしれない。
「陽向くん。それはチキンということですよ」
「辞めて!言わないで!まだ認めたくはないんだ!」
俺はまだ認めた覚えは無いんだからねっ!
「では陽向くん勧誘をするのは無理でもポスターなどを作るのはどうですか?」
「ポスターか、いいなそれ」
なんてたって貼るだけでいい。それに作り方次第でやんわりとオタク趣味の友達募集的なのも作れるだろうし。
「では早速作ってみましょう!」
「ん。そうだな」
早速、ポスターを作ることに。
掲示板などに貼っておけば人の目にも触れるし、勧誘をしなくても入りたいって人が来るだろう!多分だが。
☆
「こんな感じでいいですかね?」
「いや、ダメだろ」
俺は桃が作ったポスターをみて、すぐさま否定した。だって酷すぎるんだもの。
ポスター案
【友人部】に入りませんか!?
俺たち友人部は3次元の部員を大募集しています!
中身は人見知りでチキンな俺1年E組瀬尾陽向と、
学校で趣味について楽しく語りませんか!
女の子でも構いません!(3次元なら)
子供みたいな趣味を持ってる貴方を待ってますよ!
大募集しているので1度来てみてください!
好きな物は皆で語ろう!
きみの挑戦を待っている。
うん。いろいろツッコンでやりたい。
「え!?ダメなんですか!?」
「いや、普通にダメだろ。逆によくこれで行こうと思ったな!!」
ガチで驚いてる表情をしている桃に一発殴ってやりたい。どこに行ける要素があるんだよこれっ!
「えー!?どこがダメなんですか?」
ほんとに行けると思ってるのか!?これで!?
「いいか?まず第一に」
俺はこのポスターのどこらへんがダメなのかを順を追って説明することにした。このまま掲示板に張り出すのはやばいからな。
「はい、なんでしょう?」
「お前は俺の事が嫌いなのか?」
「いいえ?むしろ大好きですけど?」
「じゃあなんでこうなるんだよ!」
俺はポスターに書かれてある3次元という文字を指さして声を荒らげた。
「どこがおかしいんですか?ていうか告白をスルーしましたね」
こてんと首を傾げる桃。その表情はほんとに分かっていないと言わんばかりだ。告白?なんのことだ?
「いや、おかしいだろ!!お前これじゃ俺が二次元美少女しか愛してない変態か3次元の女目的の変態じゃねーかぁああ!!いや、二次元美少女しか愛してないのは事実だけどもぉ!!」
「なら、いいじゃないですか」
「それを晒される俺の身にもなれよぉお!!」
これじゃ3年間俺は二次元美少女しか愛せない変態という汚名を着たまま学校生活を過ごすことになっちゃうじゃないか!せっかく友達を作るために立ち上げた部活なのにこれじゃ友達作るどころか誰も俺に寄らなくなるだろうがぁあ!!
「もう事実なのに」
「何でも書いていいもんじゃないからなこれ!?誰も俺に寄らなくなるからな!?」
「大丈夫ですよ!私が近くに居ますからっ!」
「えーお前かよー」
「陽向くん動かないでください。じゃないと間違って目に針が刺さっちゃいますんで☆」
「どこを狙う気してるだお前は!?どっちにしても致命傷じゃねーか!……とりあえずごめん!謝るから!その安全ピンをしまってくれ!」
俺の誠意が伝わったのか、桃は手に持っていた凶器と言う名の安全ピンをポケットにしまった。あぶねーあの目はまじやべー!!殺るきMAXの目になってたからな!
「つーかあとさ」
「まだあるんですか?」
「あるよ!?けっこうあるよ!?」
うんざりしている桃をよそに俺は続ける。
つかなんでうんざりしてるんだよ!
うんざりしたいのは俺のほうだってのに!
「なんで俺のことディスってんの!?」
「悪口なんて書いてないですよ?事実だけを書いてるつもりですけど」
「その素直さが俺を傷つけるんだよっ!!」
確かに人見知りで、認めたくはないないけどチキンな俺だけどさっ!それをわざわざ書かなくてもいいじゃねーか!
「そんなっ!よかれと思って書いたのに!」
「よし分かった!桃が俺のことを嫌いなことがよく分かった!」
こいつ可愛い顔して人を傷付けるなんて!
「そんな……可愛ぃだなんて……!」
「褒めてはねーからな!?」
ナチュラルに心を読まれるのもなんか慣れてきたな。慣れって怖い!
「でさ最後になんだけどさ」
「はいなんでしょう?」
「この最後のきみの挑戦を待っているってなに?」
「バトルものにしようかと思いまして」
「なぜ!?」
分からない!桃の考えていることが分からない!
桃はこの部をどうしたいんだよっ!
「分かりましたよ。書き直しましょう」
「頼むからそうしてくれ」
これが学校中のやつらに見られたら俺は家に引きこもって二次元美少女たちとハッピータイムを四六時中過ごさなければ行けなくなるじゃないか。それはそれでいいな。
「せっかく暗号も入れたのに」
「暗号?」
「はい頑張ったんですよ?私なりに陽向くんを知ってもらおうと思って」
ポスターを見てみるが分からない。暗号ってなんだ?
「分からねぇ。暗号ってなんだ?」
「ポスターの最初の文字を縦に読んで見てください」
「縦?」
桃に言われたとおり、ポスターの最初の文字を縦に読む。えーと、どれどれ、俺中学女子大好き……
「どうしたんですか!?陽向くん!天井に紐なんか括りつけて!」
「生きてける気がしないんだ……」
「そんな!人生はこれから楽しいことばかりですよ!」
「それ、お前が言う!?」
駄目だ!桃は俺のことがすげー嫌いなんだ!
俺は唯一趣味を語れる友達だから好きだったのに!
「ダメでしたか?これ」
「ダメだろ!なんで俺のストライクゾーンを暴露してんだよ!」
「事実じゃないですか」
事実だけども!
これがバレたら俺はほんとに変態になっちまうよ!
暗号ってもこんな安直じゃすぐ気づかれるよ!
俺は分からなかったけど。
「こんな、は○ないみたいなのよく思いついたな」
「えへへ照れますね」
「俺はすげー傷ついてんだけどな。つかは○ないか、……それだっ桃!」
俺は閃いた。
「どうしたんですか急に?」
「これだよ、この暗号だ!」
「この中学生女子大好きですか?」
「違う!いや、違くないけど違う!」
「どっちなんですか?」
「桃の暗号の案を使うってことだよ!」
「暗号を?」
「おう!桃の暗号みたいに最初の文字とかをさ縦に読んだらひとつの文になるのを使って勧誘すんだよ!例えば縦に読んだらオタク趣味な友達募集!的なのにしてさ!」
「なるほど!」
「こうすれば堂々としてない分そういった奴らが集まると思うんだ!」
「そうですね。それでやってみましょう!」
こうして俺たちは新たなポスターを作ることにした。
あれ?でもはが○いだとポスターの暗号に気づくのって一人くらいな気が……。うん!気のせいだろ!
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